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思考の先に

ー/ー



 万物は、上から下へ落ちていくのが世の道理。水は天よりもたらされ、大地に降り注ぐ。
 それを渇望していた嶺上の草木は、開花することで喜びを露わにする。そして山々をすり抜けて河川へ注ぐ。
 河底の魚を()る為、漁師は(てこ)で追い詰め槍で刺す。これは古今東西、古の情景だ。
 大海へ注いだ水は放浪し、やがて海底へ辿り着くのだ。そこは月の光さえ届かない、人智の至らぬ暗黒の世界である。
 一説によると、海底は富士を飲み込む程の深淵だと言われる。為政者の語った『山よりも高く海よりも深い恩』とは言い得て妙である。
 国家は『陸・海・空』を三大防衛戦線として掲げているが、海はなんと地球の七割を占めているという。世界の大半を占めている海を占有し、防衛するというのは何とも烏滸がましい話ではなかろうか。
 そして、地球の僅か三割程しかない陸地をアフリカ・ユーラシア・南北アメリカ・オセアニアと区分して人間は領地争いを繰り広げている。限られたパイの取り合いは実に醜いものだ。
 領有権の存在しない南極大陸でさえ、奪い合いになるのは時間の問題だろう。何せ、人口は増加の一途を辿っているのだから。
 領有権、そんなものは白紙にしてもいいかもしれない。だが、その言葉を發すれば世界中の為政者が黙っていないのだろうな。
 そんな空想をしている間にも、世界は確実に終末へ向かっていくことだろう。世界が一から始まり九で終わるのだとしたら、現代はおそらく八の辺りまで来ているに違いない。環境問題や世界平和、食糧危機。考えているだけでも眩暈がする。
 混沌とした世界なんて、いっそのこと滅びてしまえばいいのだ。清らかな世界は、死と再生の先にあるのだから。
 この際、俺が恐怖の大王に成り代わってもいいかも知れないな。ノストラダムスも、結局はペテン師だったのだから。
 皆は、俺が何を語っているか見当もつかないだろう。人は見かけによらず思考を巡らせ、行動するその時を虎視眈々と待っている。カンを頼りにポンと行動できる者もいるが、俺は長考の挙句チーっと後悔することが常だ。
 だが、そんな俺には千載一遇の機会が巡ってきている。男は鳴かず、黙って待つのみ。
 感じるぞ、指先に天啓を……。神は俺に微笑んだ……!
「ハイテイツモ!」
 まさか俺が雀卓に向かっているとは、誰もが思うまい。思考の果てで、俺はこの瞬間を待っていたんだ!!!
『あーーーっ!!!』
 他家は阿鼻叫喚。ついでに言うと、俺の面子は国士無双十三面待ちだった。
 リーチも掛けられずに焼き鳥寸前だった俺、奇跡の逆転勝ち!!!


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 万物は、上から下へ落ちていくのが世の道理。水は天よりもたらされ、大地に降り注ぐ。
 それを渇望していた嶺上の草木は、開花することで喜びを露わにする。そして山々をすり抜けて河川へ注ぐ。
 河底の魚を|撈《と》る為、漁師は|槓《てこ》で追い詰め槍で刺す。これは古今東西、古の情景だ。
 大海へ注いだ水は放浪し、やがて海底へ辿り着くのだ。そこは月の光さえ届かない、人智の至らぬ暗黒の世界である。
 一説によると、海底は富士を飲み込む程の深淵だと言われる。為政者の語った『山よりも高く海よりも深い恩』とは言い得て妙である。
 国家は『陸・海・空』を三大防衛戦線として掲げているが、海はなんと地球の七割を占めているという。世界の大半を占めている海を占有し、防衛するというのは何とも烏滸がましい話ではなかろうか。
 そして、地球の僅か三割程しかない陸地をアフリカ・ユーラシア・南北アメリカ・オセアニアと区分して人間は領地争いを繰り広げている。限られたパイの取り合いは実に醜いものだ。
 領有権の存在しない南極大陸でさえ、奪い合いになるのは時間の問題だろう。何せ、人口は増加の一途を辿っているのだから。
 領有権、そんなものは白紙にしてもいいかもしれない。だが、その言葉を發すれば世界中の為政者が黙っていないのだろうな。
 そんな空想をしている間にも、世界は確実に終末へ向かっていくことだろう。世界が一から始まり九で終わるのだとしたら、現代はおそらく八の辺りまで来ているに違いない。環境問題や世界平和、食糧危機。考えているだけでも眩暈がする。
 混沌とした世界なんて、いっそのこと滅びてしまえばいいのだ。清らかな世界は、死と再生の先にあるのだから。
 この際、俺が恐怖の大王に成り代わってもいいかも知れないな。ノストラダムスも、結局はペテン師だったのだから。
 皆は、俺が何を語っているか見当もつかないだろう。人は見かけによらず思考を巡らせ、行動するその時を虎視眈々と待っている。カンを頼りにポンと行動できる者もいるが、俺は長考の挙句チーっと後悔することが常だ。
 だが、そんな俺には千載一遇の機会が巡ってきている。男は鳴かず、黙って待つのみ。
 感じるぞ、指先に天啓を……。神は俺に微笑んだ……!
「ハイテイツモ!」
 まさか俺が雀卓に向かっているとは、誰もが思うまい。思考の果てで、俺はこの瞬間を待っていたんだ!!!
『あーーーっ!!!』
 他家は阿鼻叫喚。ついでに言うと、俺の面子は国士無双十三面待ちだった。
 リーチも掛けられずに焼き鳥寸前だった俺、奇跡の逆転勝ち!!!