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地獄の二択。

ー/ー



カルトの者は言った。

「必ず救いは皆さんに訪れますよ。
ただその時期が貴方がたに今まで訪れていなかっただけなのです。
神様はそんな貴方を情に思って、我々を派遣させたんです。
貴方がたはそんな神様に感謝の祈りを捧げるべきです。
その場を我々がご提供するのでその見返りとして組織の一員としていらっしゃるだけでよいのです。」

胡散臭い笑顔とやけに白くて気持ち悪く思える教団の服を体に貼り付けたまま
僕達を見下ろす値踏みの目。
果たしてこいつらは使えるのだろうかと語っている。

でも、生きていくためにはこいつの見え据えた罠にかかるしかない。
僕達9人は孤児だ。
親に捨てられたもの、戦争で逃げてきたもの、
それぞれの事情でここースラムに集って協力して暮らしている。

信じられるのは自分たちの力のみ。
普段ならこんなあやしいカルトの人がわざわざひどい匂いが漂っているスラムに来ることはなかった。
何やら数日前から近くの村が騒がしかったことと関係があるのだろうか。

というのも風の噂でちらっと聞いた程度だったが
この国のスラム街にいる子供の中に神聖なる力を持つものがいるーという神託が告げられたらしい。
政府は国にいくつかあるスラム街で子どもたちを境なしに集めているらしい。
該当しなかったものはその後どうなっただろうか。
今更国のピンチだからといって子供にすがるなんてー。
いくつものスラム街をほっぽりだしたままだったのはお前らじゃないか。

対策も救いもないさ。
僕の心に静かな怒りが湧いた。
まあ、こんなこと思っても信じられるのは己と仲間だけだ。
今まで助けてくれなかった大人になんて頼ってられるか。

一方でカルトは政府に聖なる力の子をとられると権力を持てないと考え、
先に回収したいと行動に移しているのが現在。

こいつらカルトは正直嫌だけど政府に捕まるのだけは嫌だ。
カルトのやつらは武力を持っていない。
だから、少なくとも政府につかまるよりはましだ。
それに同じ地獄ならある程度僕達が自由に動ける隙がある地獄のほうがいい。
こいつの話しぶりだと該当しなくても仕事はもらえるみたいだしな。

「おやおや、そんなに睨まないでください。返事は明日で結構です。
 だけど、なるべく急いでください。神様は貴方がたを待っているのです。
 たとえ、卑しい身分の生まれとしても。
 では、返事が決まったら近くの村の郊外にある大きな白い洋館にいらしてください。
 では失礼しますね。こほ、こほっ。」

引きつった笑顔で一方的に告げ、
僕達に背中を見せそそくさと足早にスラムをでていく。

ーああ、やっぱり外の人間だなと感じる。

この汚れた空気に慣れていないからー。
スラムで育った人間は簡単に背中なんて見せたりしないからー。

襲われる可能性なんて頭の中にないんだろうな。
誰かに捧げて満ち足りる感覚ってどんなのかな。
僕には到底理解できないし、分かりたくないな。
じゃないと、こんな暮らしをしている意味なんてないから。       
その日の夜ー。
俺達はそれぞれ現状、どうしていくのか話し合った。
話し合うって言ってもただ円になってあぐらをかき言葉をかわすだけだ。

この場にいるのは9人全員じゃなくてある程度考えが成熟しているやつだけだけど。
ある意味リーダーの5人。
あとの4人はまだ3〜5歳以下だからもう寝ている。

「まず、俺はさっきのやつに付いていくのは賛成だ。
 理由として、最近噂で政府が俺達みたいな子供を無差別に集めているってことが大きい。
 政府に集められた子どもたちがどうなっているのかもわからないしな。」

俺は他のリリアン、クルシュ、ココリナ、カルランを見ながら告げた

「えー。でもさっきの人ちょー胡散臭かったし、
 うちたちのこと利用する気まんまんだったしょ?大丈夫なんかな?」
自慢のピンク髪をクルクルしながらリリアンが言った。

「でも、リリアンよりリュカの意見に賛成。政府怖い。今まで助けなかった。
 まだあのおじさんは仕事くれる。すこし、まし。」

「わ、私はどっ、どっちでもいいです。どうせ、どっちにいっても地獄には変わらないですから。
 ですので、わ、私はリーダーであるリュカさんの意見を尊重します。」
遠慮がちに俯いてココリナが言う。

「…。カルランはどうだ?元貴族だったお前ならどう考える?」

「⋯。政府とカルト、どちらをとってもココリナの言ったように地獄になることは変わりないだろう。
 だが、政府はいままで均等を取るためとはいえ、スラムのことを放置してきた。
 そいつらが聖なる子ではない子供をどう扱うかは想像がつくだろう。」

「ああ。そうだな。」

「そういったことに関してはクルシュが言ってたみたいに、聖なる子供に関して触れずに勧誘してきて働く場所を与えてくれたカルトの方がいいだろう。衣食住に関して触れてはいなかったが、カルトが子供を迎えたことはただの信者が噂を勝手に広めるから疎かにできないだろう。」

「そう、かも。カルト熱心多い。美談、盛る。」

「ふーん。一理あるかもね。
今回はうちはリュカたちの意見に乗るわ。あんまこういったことで揉めるのは体力の無駄だし。
うちはあくまでの可能性しか提案できないし、それも込みで決めてんなら文句はないわ。」

「あ、あの、リリアンさんの意見はとっても大切だと思います。いつもありがとうございます。」

「えー?急に?(笑)照れるからやめてよー。もー、ココリナのそういうとこうち好きだわー。」

「え、あっ。わ、私もリリアンさんのこと大好きです。
みんなのこと考えてくれてー。」

ほんとに仲が良いなこの二人は、ハハハ。いつもこんな感じになるのは嬉しいが、なんだろう。
少しこっちが照れくさい。

そんな二人がやり取りしている間にむっ、とクルシュが間に入る。

「そろそろ、いい?リュカが困ってる。」

「え、あーごめん。」
「ご、ごめんなさい。」

「全然大丈夫だ。仲間同士で仲が良いのは嬉しいからな。クルシュもありがとな。」
よしよしとクルシュの頭を撫でてやる。
クルシュはなぜか俺にだけ懐いていてなんだかかわいい小動物みたいだ。
普段は寝ているのにいろんなことに気づいてくれるしな。

「とりあえず、今回はカルトの方に着いてくってことでいいか?」
みんなを見ると各々肯定の表現を見せている。
「よし、今回の話は終わりだ。明日に備えて各自ちゃんと休息をとるように。」

「はーい。」
「わ、わかりました。」
「了解した。」
「うん、おやすみ、リュカ。」



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カルトの者は言った。
「必ず救いは皆さんに訪れますよ。
ただその時期が貴方がたに今まで訪れていなかっただけなのです。
神様はそんな貴方を情に思って、我々を派遣させたんです。
貴方がたはそんな神様に感謝の祈りを捧げるべきです。
その場を我々がご提供するのでその見返りとして組織の一員としていらっしゃるだけでよいのです。」
胡散臭い笑顔とやけに白くて気持ち悪く思える教団の服を体に貼り付けたまま
僕達を見下ろす値踏みの目。
果たしてこいつらは使えるのだろうかと語っている。
でも、生きていくためにはこいつの見え据えた罠にかかるしかない。
僕達9人は孤児だ。
親に捨てられたもの、戦争で逃げてきたもの、
それぞれの事情でここースラムに集って協力して暮らしている。
信じられるのは自分たちの力のみ。
普段ならこんなあやしいカルトの人がわざわざひどい匂いが漂っているスラムに来ることはなかった。
何やら数日前から近くの村が騒がしかったことと関係があるのだろうか。
というのも風の噂でちらっと聞いた程度だったが
この国のスラム街にいる子供の中に神聖なる力を持つものがいるーという神託が告げられたらしい。
政府は国にいくつかあるスラム街で子どもたちを境なしに集めているらしい。
該当しなかったものはその後どうなっただろうか。
今更国のピンチだからといって子供にすがるなんてー。
いくつものスラム街をほっぽりだしたままだったのはお前らじゃないか。
対策も救いもないさ。
僕の心に静かな怒りが湧いた。
まあ、こんなこと思っても信じられるのは己と仲間だけだ。
今まで助けてくれなかった大人になんて頼ってられるか。
一方でカルトは政府に聖なる力の子をとられると権力を持てないと考え、
先に回収したいと行動に移しているのが現在。
こいつらカルトは正直嫌だけど政府に捕まるのだけは嫌だ。
カルトのやつらは武力を持っていない。
だから、少なくとも政府につかまるよりはましだ。
それに同じ地獄ならある程度僕達が自由に動ける隙がある地獄のほうがいい。
こいつの話しぶりだと該当しなくても仕事はもらえるみたいだしな。
「おやおや、そんなに睨まないでください。返事は明日で結構です。
 だけど、なるべく急いでください。神様は貴方がたを待っているのです。
 たとえ、卑しい身分の生まれとしても。
 では、返事が決まったら近くの村の郊外にある大きな白い洋館にいらしてください。
 では失礼しますね。こほ、こほっ。」
引きつった笑顔で一方的に告げ、
僕達に背中を見せそそくさと足早にスラムをでていく。
ーああ、やっぱり外の人間だなと感じる。
この汚れた空気に慣れていないからー。
スラムで育った人間は簡単に背中なんて見せたりしないからー。
襲われる可能性なんて頭の中にないんだろうな。
誰かに捧げて満ち足りる感覚ってどんなのかな。
僕には到底理解できないし、分かりたくないな。
じゃないと、こんな暮らしをしている意味なんてないから。       
その日の夜ー。
俺達はそれぞれ現状、どうしていくのか話し合った。
話し合うって言ってもただ円になってあぐらをかき言葉をかわすだけだ。
この場にいるのは9人全員じゃなくてある程度考えが成熟しているやつだけだけど。
ある意味リーダーの5人。
あとの4人はまだ3〜5歳以下だからもう寝ている。
「まず、俺はさっきのやつに付いていくのは賛成だ。
 理由として、最近噂で政府が俺達みたいな子供を無差別に集めているってことが大きい。
 政府に集められた子どもたちがどうなっているのかもわからないしな。」
俺は他のリリアン、クルシュ、ココリナ、カルランを見ながら告げた
「えー。でもさっきの人ちょー胡散臭かったし、
 うちたちのこと利用する気まんまんだったしょ?大丈夫なんかな?」
自慢のピンク髪をクルクルしながらリリアンが言った。
「でも、リリアンよりリュカの意見に賛成。政府怖い。今まで助けなかった。
 まだあのおじさんは仕事くれる。すこし、まし。」
「わ、私はどっ、どっちでもいいです。どうせ、どっちにいっても地獄には変わらないですから。
 ですので、わ、私はリーダーであるリュカさんの意見を尊重します。」
遠慮がちに俯いてココリナが言う。
「…。カルランはどうだ?元貴族だったお前ならどう考える?」
「⋯。政府とカルト、どちらをとってもココリナの言ったように地獄になることは変わりないだろう。
 だが、政府はいままで均等を取るためとはいえ、スラムのことを放置してきた。
 そいつらが聖なる子ではない子供をどう扱うかは想像がつくだろう。」
「ああ。そうだな。」
「そういったことに関してはクルシュが言ってたみたいに、聖なる子供に関して触れずに勧誘してきて働く場所を与えてくれたカルトの方がいいだろう。衣食住に関して触れてはいなかったが、カルトが子供を迎えたことはただの信者が噂を勝手に広めるから疎かにできないだろう。」
「そう、かも。カルト熱心多い。美談、盛る。」
「ふーん。一理あるかもね。
今回はうちはリュカたちの意見に乗るわ。あんまこういったことで揉めるのは体力の無駄だし。
うちはあくまでの可能性しか提案できないし、それも込みで決めてんなら文句はないわ。」
「あ、あの、リリアンさんの意見はとっても大切だと思います。いつもありがとうございます。」
「えー?急に?(笑)照れるからやめてよー。もー、ココリナのそういうとこうち好きだわー。」
「え、あっ。わ、私もリリアンさんのこと大好きです。
みんなのこと考えてくれてー。」
ほんとに仲が良いなこの二人は、ハハハ。いつもこんな感じになるのは嬉しいが、なんだろう。
少しこっちが照れくさい。
そんな二人がやり取りしている間にむっ、とクルシュが間に入る。
「そろそろ、いい?リュカが困ってる。」
「え、あーごめん。」
「ご、ごめんなさい。」
「全然大丈夫だ。仲間同士で仲が良いのは嬉しいからな。クルシュもありがとな。」
よしよしとクルシュの頭を撫でてやる。
クルシュはなぜか俺にだけ懐いていてなんだかかわいい小動物みたいだ。
普段は寝ているのにいろんなことに気づいてくれるしな。
「とりあえず、今回はカルトの方に着いてくってことでいいか?」
みんなを見ると各々肯定の表現を見せている。
「よし、今回の話は終わりだ。明日に備えて各自ちゃんと休息をとるように。」
「はーい。」
「わ、わかりました。」
「了解した。」
「うん、おやすみ、リュカ。」