「事故だったと、僕も電話で聞かされました。大晦日でしたから、よく覚えています。でも、それはあくまで警察の判断です。やっぱり僕には、自分が美穂を殺してしまったように感じられてなりません……」
圭介が泣いている。あふれた涙が、床に小さな水たまりをつくり、少しずつ面積を広げていった。
「……初めてできた彼女でした」
嗚咽しながら、圭介が言葉を絞り出す。
「ひと目見た瞬間に、この子を好きだと感じました。笑われそうですが、正直に言います。美穂は、僕が賞をもらった小説のヒロインのイメージそのままなんです。小説なんて、ほとんど妄想です。願望の投影です。絶対に存在しないと分かっていながら書きました。でもそのヒロインとそっくりな女の子が、目の前にいたんです」
そこでようやく、ハンカチで目元をぬぐった。
「……きっかけは、確かに見た目でした。だけど同じクラスになり、部活でも一緒に過ごすうち、さらに美穂に惹かれていきました。運動が苦手で、思ったことをなかなか口にできないところも共通でした。コンプレックスというか、人としての弱点みたいなものまで似ている。こんなに分かりあえる誰かがいるんだと、震えるような思いでした」
美穂は圭介に愛されていた。
高校で彼と出会い、つきあえたのは、彼女の短い人生の宝物だったに違いない。