秘密の装置 ~公開での君
ー/ー◼️ 秘密の装置
翌朝早く、装置を設置した。
いぶき学園の近くにある「善光公園」。
草木が覆い、人の目が届かない静かな一角。
ここなら安全は確保できる。
経験済みだ。問題はない。
私は一日数回、ここを訪れることにした。
数日のうちに"孵卵器"を完成させる予定だ。
卵を人工的に温める装置――温度と湿度の維持が最も重要となる。
現在使用しているUVAライトは、太陽光の代替として紫外線を照射するが、
照射範囲も温度も不十分である可能性が高い。
さらに転卵――
卵内部の温度を均等に保つために、定期的に向きを変える作業も必要だ。
これは自然界では、親鳥が体温とくちばしで行う動き。
それを機械で再現するには、繊細な工夫がいる。
……なかなかの作業量になりそうだ。
だが、時間を惜しむわけにはいかない。
あれは――何の卵なのだろう。
色、形、大きさ。
観察結果から推測するに、爬虫類、または鳥類。
もし鳥なら小型の鳥類、小鳥の部類に入るだろう。
結翔は、なんと言うだろうか。
――「かわいい」
きっと、そう言うに違いない。
その場合、手元での飼育が必要になる。
だが、それには申請手続きが不可欠だ。
ここ《いぶき学園》での飼育が許可される可能性は、低い。
学園長は、何とおっしゃるだろうか。
そして、もし雛が巣立ったなら――
結翔が悲しむ確率は、87.956792355872パーセント。
……高すぎる。
やはり、このことは結翔には知らせない方がいい。
命の管理は、人間のそれと同じく、慎重であるべきだ。
けれど私は医療用AI。
対象が“卵”であることに、
果たして――異議はあるのだろうか。
◼️ 公園での君
その日、子犬を連れた友達と公園にいた。
ふと、視線の先に見慣れた人影を見つける。
――M-513……?
彼女は茂みの奥へと歩いていった。
何かを隠すように。
心がざわつく。
ここ数日、ずっとこんな気持ちだった。
――僕には友達がいる。もう、ひとりぼっちじゃない。
そう思おうとするのに、
胸の奥が、ひどく寂しい。
――友達がいるじゃないか!
子犬をもらってくれた、達也くん。それに子犬を一緒に可愛がってくれる仲間達。
豊くん、忠司くん、啓子ちゃんに幸子ちゃん。こんなに沢山できたんだ!
家族が居なくなってからできた、初めての友達。だけど…
――僕の帰る場所は、どこだろう。
その答えを探しても、見つからない。
ただ、こらえきれない涙が滲むだけだった。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
◼️ 秘密の装置
翌朝早く、装置を設置した。
いぶき学園の近くにある「善光公園」。
草木が覆い、人の目が届かない静かな一角。
ここなら安全は確保できる。
経験済みだ。問題はない。
私は一日数回、ここを訪れることにした。
数日のうちに"孵卵器《ふらんき》"を完成させる予定だ。
卵を人工的に温める装置――温度と湿度の維持が最も重要となる。
現在使用しているUVAライトは、太陽光の代替として紫外線を照射するが、
照射範囲も温度も不十分である可能性が高い。
さらに転卵《てんらん》――
卵内部の温度を均等に保つために、定期的に向きを変える作業も必要だ。
これは自然界では、親鳥が体温とくちばしで行う動き。
それを機械で再現するには、繊細な工夫がいる。
……なかなかの作業量になりそうだ。
だが、時間を惜しむわけにはいかない。
あれは――何の卵なのだろう。
色、形、大きさ。
観察結果から推測するに、爬虫類、または鳥類。
もし鳥なら小型の鳥類、小鳥の部類に入るだろう。
結翔は、なんと言うだろうか。
――「かわいい」
きっと、そう言うに違いない。
その場合、手元での飼育が必要になる。
だが、それには申請手続きが不可欠だ。
ここ《いぶき学園》での飼育が許可される可能性は、低い。
学園長は、何とおっしゃるだろうか。
そして、もし雛が巣立ったなら――
結翔が悲しむ確率は、87.956792355872パーセント。
……高すぎる。
やはり、このことは結翔には知らせない方がいい。
命の管理は、人間のそれと同じく、慎重であるべきだ。
けれど私は医療用AI。
対象が“卵”であることに、
果たして――異議はあるのだろうか。
◼️ 公園での君
その日、子犬を連れた友達と公園にいた。
ふと、視線の先に見慣れた人影を見つける。
――M-513……?
彼女は茂みの奥へと歩いていった。
何かを隠すように。
心がざわつく。
ここ数日、ずっとこんな気持ちだった。
――僕には友達がいる。もう、ひとりぼっちじゃない。
そう思おうとするのに、
胸の奥が、ひどく寂しい。
――友達がいるじゃないか!
子犬をもらってくれた、達也くん。それに子犬を一緒に可愛がってくれる仲間達。
豊くん、忠司くん、啓子ちゃんに幸子ちゃん。こんなに沢山できたんだ!
家族が居なくなってからできた、初めての友達。だけど…
――僕の帰る場所は、どこだろう。
その答えを探しても、見つからない。
ただ、こらえきれない涙が滲むだけだった。