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夢にも見た、夢にも思わなかった

ー/ー



『回復頼む』

 そう言われて、私はメニューから範囲効果のある『ヒール』を使用する。
 割かしギリギリのところだったHPバーがグイグイと伸び、間一髪、モンスターからの強烈な一撃を耐えることができた。

 そうしたらこちらの番だ。反撃とばかりに協力プレイで連撃をかます。見事良い具合にコンボがハマったようで、モンスターは撃沈。勝利の演出が画面内に流れる。

『サンキュ』

 無精ひげの筋肉もりもりなオッサンキャラがアピールアクションを見せてくれた。カッコよすぎて、渋すぎて、憧れる、理想のおじさまだ。

 彼の名はプレイヤーネーム的にいえばロベリアさんだ。本名ではないだろう。日本人だろうし。
 今やっているネットゲームではよくパーティを組んでいる。

 前々は色んな人とフレンド登録してとっかえひっかえだったけれども、このゲームも過疎化が進んでか、ロベリアさんと一緒にいることが多くなった。
 この手のゲームがド素人だった私をエスコートしてくれたイケメンミドル。今では私も廃人プレイヤーの仲間入りだ。彼には感謝をしてもしたりないくらい。

『じゃあヒマワリさん 今度はリアルで』

 画面内にメッセージが表示される。すかさず私はチャット画面に打ち込んだ。

『楽しみにしてます』

 リアルで、というのは本当に現実で、という意味だ。
 そう。今度、私はロベリアさんとオフ会をする約束を取り付けた。ゲーム内とはいえ長いこと付き合っていたし、最近はこのゲームのマンネリ具合に鬱憤も溜まってきている頃合い。

 ボイチャでもよかったのだけれど、折角なら会って話し合おうってことになった。週末には語り合いたいだけ語り合える。そう思うと私の心は天にも昇る気持ちだ。

 どんな人なのかは知らないし、分からない。ネット上の印象がそのままリアルと一致することなんて早々ないだろうし。
 本当にナイスミドルなおじさまだったらいいな、なんて思ってたりはするけど。

 ひょっとすると本人もヒゲぼっさぼさのガチなオタクかもしれない。
 コミュ障マックスでボソボソ喋りだったりして。それはそれでいいかもなんて思っている自分がいる。

 少なくとも、男性とリアルなお付き合いをしたことのない私にとっては、今度のオフ会ほど楽しみなことはない。オタクトークで盛り上がりたい一心だ。

 期待を胸に、ゲームを閉じて、私はオフ会のことで頭をいっぱいにしつつも、ベッドに飛び込んで眠りに就いた。

 ※ ※ ※

 待ちに待ったオフ会の日。私はこの日のためにと気合いを入れて奮発した洋服を身に纏い、もはやデートする気まんまん。いっそオフパコさえも受け入れてやるくらいの勢いで、待ち合わせ場所に着いていた。

 そこはおしゃれな運動公園だった。
 大きな噴水の前。ここで合流することになっている。

 決して近場とは言えないところではあったものの、予定よりも一時間弱、早めに到着してしまったので、そこはかとなく浮いている気分だ。

 これでこなかったらどうしよう。こんな小綺麗な恰好してそのままとんぼ返りとか情けなさすぎる。不安はよぎったものの、時計をふと見ればもうそろそろ待ち合わせの時間だ。

 案外人気はそんなでもない。ジョギングしている人や、犬の散歩している人はチラホラ見かけるけれども、辺りに誰かを待っている感じの人は見当たらない。
 ロベリアさんと会ったらまずどんな話をしよう。お付き合いから発展して将来的には結婚にまで進んじゃったりするのでは、なんて妄想が先走ってしまう。

 まあ、オフ会から結婚って話は聞いたことあるけれども、そうじゃなくとも今よりもずっといい関係にはなる確信はある。
 なんてったってゲーム内では本当に紳士的な人だったし、内面的にはいい人のはず。例えブサイクだったとしても心はイケメンなのは間違いない。

 ああ、早く会いたいなぁ。
 ヒゲ面の長身の男性に抱きつく妄想が膨らんで弾けんばかり。

「あのー、ヒマワリさんですか?」

 不意に、びっくりして声をかけられ振り向く。

「初めまして、ロベリアです」

 もう一度びっくりした。
 だって。
 だって、そこに立っていたのは、長身で、顔立ちもよくて、めちゃくちゃキレイな人だったから。

「あ、初めまして、ヒマワリ、です」

 ガチガチになって、私は自己紹介する。
 心臓が物凄い勢いでバクバクするのを感じる。何処からか、キューピッドの矢が私の胸を貫いた、そんな確信がするほどに、一目惚れを自覚した。

 ただ。
 ただ、想像とも、妄想とも違う、現実がそこにあった。

 何って、それが何って、ロベリアさんは、誰がどう見たって見間違いようがない。
 流れるような髪、くびれた腰、スラッと伸びた足、露出度が抑えめなのにそれでもこぼれそうなくらいの豊満なソレ。美人という形容詞を束にしてきたかのような、正真正銘の女性だった。

「それじゃ、ヒマワリさん行きましょうか」
「は、はひぃ……」

 手を握られた瞬間、私は顔が弾けるほど熱くなるのを感じたのだった。




みんなのリアクション

『回復頼む』
 そう言われて、私はメニューから範囲効果のある『ヒール』を使用する。
 割かしギリギリのところだったHPバーがグイグイと伸び、間一髪、モンスターからの強烈な一撃を耐えることができた。
 そうしたらこちらの番だ。反撃とばかりに協力プレイで連撃をかます。見事良い具合にコンボがハマったようで、モンスターは撃沈。勝利の演出が画面内に流れる。
『サンキュ』
 無精ひげの筋肉もりもりなオッサンキャラがアピールアクションを見せてくれた。カッコよすぎて、渋すぎて、憧れる、理想のおじさまだ。
 彼の名はプレイヤーネーム的にいえばロベリアさんだ。本名ではないだろう。日本人だろうし。
 今やっているネットゲームではよくパーティを組んでいる。
 前々は色んな人とフレンド登録してとっかえひっかえだったけれども、このゲームも過疎化が進んでか、ロベリアさんと一緒にいることが多くなった。
 この手のゲームがド素人だった私をエスコートしてくれたイケメンミドル。今では私も廃人プレイヤーの仲間入りだ。彼には感謝をしてもしたりないくらい。
『じゃあヒマワリさん 今度はリアルで』
 画面内にメッセージが表示される。すかさず私はチャット画面に打ち込んだ。
『楽しみにしてます』
 リアルで、というのは本当に現実で、という意味だ。
 そう。今度、私はロベリアさんとオフ会をする約束を取り付けた。ゲーム内とはいえ長いこと付き合っていたし、最近はこのゲームのマンネリ具合に鬱憤も溜まってきている頃合い。
 ボイチャでもよかったのだけれど、折角なら会って話し合おうってことになった。週末には語り合いたいだけ語り合える。そう思うと私の心は天にも昇る気持ちだ。
 どんな人なのかは知らないし、分からない。ネット上の印象がそのままリアルと一致することなんて早々ないだろうし。
 本当にナイスミドルなおじさまだったらいいな、なんて思ってたりはするけど。
 ひょっとすると本人もヒゲぼっさぼさのガチなオタクかもしれない。
 コミュ障マックスでボソボソ喋りだったりして。それはそれでいいかもなんて思っている自分がいる。
 少なくとも、男性とリアルなお付き合いをしたことのない私にとっては、今度のオフ会ほど楽しみなことはない。オタクトークで盛り上がりたい一心だ。
 期待を胸に、ゲームを閉じて、私はオフ会のことで頭をいっぱいにしつつも、ベッドに飛び込んで眠りに就いた。
 ※ ※ ※
 待ちに待ったオフ会の日。私はこの日のためにと気合いを入れて奮発した洋服を身に纏い、もはやデートする気まんまん。いっそオフパコさえも受け入れてやるくらいの勢いで、待ち合わせ場所に着いていた。
 そこはおしゃれな運動公園だった。
 大きな噴水の前。ここで合流することになっている。
 決して近場とは言えないところではあったものの、予定よりも一時間弱、早めに到着してしまったので、そこはかとなく浮いている気分だ。
 これでこなかったらどうしよう。こんな小綺麗な恰好してそのままとんぼ返りとか情けなさすぎる。不安はよぎったものの、時計をふと見ればもうそろそろ待ち合わせの時間だ。
 案外人気はそんなでもない。ジョギングしている人や、犬の散歩している人はチラホラ見かけるけれども、辺りに誰かを待っている感じの人は見当たらない。
 ロベリアさんと会ったらまずどんな話をしよう。お付き合いから発展して将来的には結婚にまで進んじゃったりするのでは、なんて妄想が先走ってしまう。
 まあ、オフ会から結婚って話は聞いたことあるけれども、そうじゃなくとも今よりもずっといい関係にはなる確信はある。
 なんてったってゲーム内では本当に紳士的な人だったし、内面的にはいい人のはず。例えブサイクだったとしても心はイケメンなのは間違いない。
 ああ、早く会いたいなぁ。
 ヒゲ面の長身の男性に抱きつく妄想が膨らんで弾けんばかり。
「あのー、ヒマワリさんですか?」
 不意に、びっくりして声をかけられ振り向く。
「初めまして、ロベリアです」
 もう一度びっくりした。
 だって。
 だって、そこに立っていたのは、長身で、顔立ちもよくて、めちゃくちゃキレイな人だったから。
「あ、初めまして、ヒマワリ、です」
 ガチガチになって、私は自己紹介する。
 心臓が物凄い勢いでバクバクするのを感じる。何処からか、キューピッドの矢が私の胸を貫いた、そんな確信がするほどに、一目惚れを自覚した。
 ただ。
 ただ、想像とも、妄想とも違う、現実がそこにあった。
 何って、それが何って、ロベリアさんは、誰がどう見たって見間違いようがない。
 流れるような髪、くびれた腰、スラッと伸びた足、露出度が抑えめなのにそれでもこぼれそうなくらいの豊満なソレ。美人という形容詞を束にしてきたかのような、正真正銘の女性だった。
「それじゃ、ヒマワリさん行きましょうか」
「は、はひぃ……」
 手を握られた瞬間、私は顔が弾けるほど熱くなるのを感じたのだった。


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