表示設定
表示設定
目次 目次




なんてことないサプライズ

ー/ー



 今日はゆっくり過ごしてきていいからね、と言われたから、久しぶりに友人たちと遊びに行ってきた。もちろん、その間に家事やら何やらをやってくれるそうだ。普段はやらないくせに、こういう時だけ張り切っていいところを見せようとする。

 少し心配だったので、日が暮れる前にお土産を買って、早めに切り上げてきたのは正解だった。案の定、アパートの玄関を開けると、焦げ臭いにおいが漂ってくる。軽くため息をつきながら靴とコートを脱ぎ、キッチンへと向かう。
「あぁー……ぐちゃぐちゃ」
 そこには、目を覆いたくなるような光景が広がっていた。黒いカタマリがこびりついたフライパンに、まだ生地が残っているであろうボウル、周りには液体のようなものが飛び散っていた。
「ゴメン……」
 リビングに目を向けると、上下ともスエット姿で膝を抱えている姿が視界に入る。朝とおなじ格好、寒いのは分かるのだが、また着替えをしなかったのか。今にも泣きそうな様子である。
「いいからさ、片づけるの手伝ってよ」
「……わかった」
 お土産をテーブルに置くと、二人並んでキッチンをきれいにする。本当はもっとテキパキとやってほしいが、自他ともに家事が苦手であることは重々承知している。今に始まったことではない。

「びっくり、させようと思って」
 そう言いながら、ぎこちなく食器を拭く様子を見て、なんとなく申し訳ない気持ちになる。
「いいよ。せっかくだし、今日は外で食べようよ」
 友人に教えてもらった、隠れ家的な洋食店が近くにあるらしい。これから準備を整えて向かえば、ちょうどいい時間だ。頑張って作ったであろう料理らしきものを、とりあえず冷蔵庫に入れ着替えを促す。
「ちょっと待ってて。あ、シャワー浴びる」
 寝ぐせが残る頭をかきながら、脱衣室へ入っていく。またか、とため息をつく。
「着替えは? あと、下着!」
「あー! ごめん」
 適当に棚から取ってきて、カゴに置いておく。まったく、世話がやける。でも、何故かキライにはなれない。

 そうこうしているうちに、お互いの準備が整った。
「お待たせ! それでさ、どこにあるの?」
「ここから歩いて15分くらいらしいよ。車で行く?」
「ううん。コレ、使ってほしいから」
 どこから出てきたのか、それとも隠していたのか、見覚えのない紙袋を手渡される。不思議に思って中を開けると、白を基調としたふわふわの手袋が目に入る。
「え?」
 きょとんとしていると、照れくさそうな表情を見せる。
「来週さ、誕生日じゃん。ちょっと早いけど」
 きっと、こういう所なのだ。何かと不器用なくせに、結局は人のことをちゃんと考えてくれている。キライになれないのじゃなくて、どこかほっとけないのかもしれない。
「ありがとう」
 そう言って、左手だけ手袋をつける。一緒に外に出て、右手を差し出す。
「じゃあ、行こうか」
「うん!」

 彼女の手の温もりを感じながら、僕たちは見慣れた道を歩いて行った。


スタンプを贈って作者を応援しよう!



みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 今日はゆっくり過ごしてきていいからね、と言われたから、久しぶりに友人たちと遊びに行ってきた。もちろん、その間に家事やら何やらをやってくれるそうだ。普段はやらないくせに、こういう時だけ張り切っていいところを見せようとする。
 少し心配だったので、日が暮れる前にお土産を買って、早めに切り上げてきたのは正解だった。案の定、アパートの玄関を開けると、焦げ臭いにおいが漂ってくる。軽くため息をつきながら靴とコートを脱ぎ、キッチンへと向かう。
「あぁー……ぐちゃぐちゃ」
 そこには、目を覆いたくなるような光景が広がっていた。黒いカタマリがこびりついたフライパンに、まだ生地が残っているであろうボウル、周りには液体のようなものが飛び散っていた。
「ゴメン……」
 リビングに目を向けると、上下ともスエット姿で膝を抱えている姿が視界に入る。朝とおなじ格好、寒いのは分かるのだが、また着替えをしなかったのか。今にも泣きそうな様子である。
「いいからさ、片づけるの手伝ってよ」
「……わかった」
 お土産をテーブルに置くと、二人並んでキッチンをきれいにする。本当はもっとテキパキとやってほしいが、自他ともに家事が苦手であることは重々承知している。今に始まったことではない。
「びっくり、させようと思って」
 そう言いながら、ぎこちなく食器を拭く様子を見て、なんとなく申し訳ない気持ちになる。
「いいよ。せっかくだし、今日は外で食べようよ」
 友人に教えてもらった、隠れ家的な洋食店が近くにあるらしい。これから準備を整えて向かえば、ちょうどいい時間だ。頑張って作ったであろう料理らしきものを、とりあえず冷蔵庫に入れ着替えを促す。
「ちょっと待ってて。あ、シャワー浴びる」
 寝ぐせが残る頭をかきながら、脱衣室へ入っていく。またか、とため息をつく。
「着替えは? あと、下着!」
「あー! ごめん」
 適当に棚から取ってきて、カゴに置いておく。まったく、世話がやける。でも、何故かキライにはなれない。
 そうこうしているうちに、お互いの準備が整った。
「お待たせ! それでさ、どこにあるの?」
「ここから歩いて15分くらいらしいよ。車で行く?」
「ううん。コレ、使ってほしいから」
 どこから出てきたのか、それとも隠していたのか、見覚えのない紙袋を手渡される。不思議に思って中を開けると、白を基調としたふわふわの手袋が目に入る。
「え?」
 きょとんとしていると、照れくさそうな表情を見せる。
「来週さ、誕生日じゃん。ちょっと早いけど」
 きっと、こういう所なのだ。何かと不器用なくせに、結局は人のことをちゃんと考えてくれている。キライになれないのじゃなくて、どこかほっとけないのかもしれない。
「ありがとう」
 そう言って、左手だけ手袋をつける。一緒に外に出て、右手を差し出す。
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
 彼女の手の温もりを感じながら、僕たちは見慣れた道を歩いて行った。