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3話 禁忌の森

ー/ー



爺さんの家で話し合った日の翌日の朝。
この村への感謝を込め、
最後のお手伝いをした。
明るく振る舞って入るが
俺の気持ちは希望と不安の間で大きく揺れていた。

―――――
―――

怪しげなスズランの少女の”招待”を受けるために
俺たちはこの村をあとにした。

「元気でな!またいつでも帰ってきて良いぞ。」
と言って爺さんは送り出してくれた。

◇◆◇

少女がくれた古びた地図を頼りに森の奥に進んでいく。

深度が増すごとに

足元の土はぬかるみ、靴が重くなった。
息を吸い込むたびに、喉に鉛のような重さが絡みつく。

俺は息をするので精一杯だった。

あと一歩、もう一歩。
それだけで首を、喉を、なにかわからない黒い塊が抑えてくるようで
この苦しさが、声が、全部押し込められたみたいだ。

だけど、俺より歳が幼いみんなはもっとキツイはずだ。
後ろを振り向くと、
ドルカは険しい顔のまま無言で歩き、
ファイとルチナは肩で息をしながら必死についてきていた。
涙だけは流せない。
ここに来る選択は”正しかった”のだろうか。
俺たちに…安心できる場所は…ないのかもしれない―。
そんなモヤモヤが浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返していく。

そんなこと思ってもどうにもならないのにな。

「ネロン、森は何も無いね?おじいさんの言うとおりだね?」

「うん。でも、リンネ、この道で合ってる。」

リンネとネロンが重い沈黙を破るように静かに告げた。
この二人は、こんな状況でも…平然としているんだな…。

だけど―、俺は何も言えなかったんだ。




 ――ようやくたどり着いた場所は、ぽっかりと空が開けて見えた。

ここだけ、異様なほど静かだ。
風に揺れる木々の声だけが、シャン、シャン……とまるで泣いているように響いていた。

誰も口を開かない。いや、開けられない。
……どこかで見られている気がする。
じっと静かに、それに加えて品定めのような鋭い視線が俺たちに刺さった。

(……誰か、いる。)

ざわめきがピタリと止まり、完全な静寂が訪れた。
音を立てることも、息をすることも許されない。

そして――

少女が、そこに立っていた。

「ふふっ。来たんだ。じゃあ、さっそく“招待”してあげる。」

妖艶で不気味なスズランの香りが、広がる。
食虫植物が甘い匂いで獲物を誘うように……抗えないほど、甘美だった。

―もう、戻れないんだ。










_____________________________________

導入まで長くてごめんなさい💦




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爺さんの家で話し合った日の翌日の朝。
この村への感謝を込め、
最後のお手伝いをした。
明るく振る舞って入るが
俺の気持ちは希望と不安の間で大きく揺れていた。
―――――
―――
怪しげなスズランの少女の”招待”を受けるために
俺たちはこの村をあとにした。
「元気でな!またいつでも帰ってきて良いぞ。」
と言って爺さんは送り出してくれた。
◇◆◇
少女がくれた古びた地図を頼りに森の奥に進んでいく。
深度が増すごとに
足元の土はぬかるみ、靴が重くなった。
息を吸い込むたびに、喉に鉛のような重さが絡みつく。
俺は息をするので精一杯だった。
あと一歩、もう一歩。
それだけで首を、喉を、なにかわからない黒い塊が抑えてくるようで
この苦しさが、声が、全部押し込められたみたいだ。
だけど、俺より歳が幼いみんなはもっとキツイはずだ。
後ろを振り向くと、
ドルカは険しい顔のまま無言で歩き、
ファイとルチナは肩で息をしながら必死についてきていた。
涙だけは流せない。
ここに来る選択は”正しかった”のだろうか。
俺たちに…安心できる場所は…ないのかもしれない―。
そんなモヤモヤが浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返していく。
そんなこと思ってもどうにもならないのにな。
「ネロン、森は何も無いね?おじいさんの言うとおりだね?」
「うん。でも、リンネ、この道で合ってる。」
リンネとネロンが重い沈黙を破るように静かに告げた。
この二人は、こんな状況でも…平然としているんだな…。
だけど―、俺は何も言えなかったんだ。
 ――ようやくたどり着いた場所は、ぽっかりと空が開けて見えた。
ここだけ、異様なほど静かだ。
風に揺れる木々の声だけが、シャン、シャン……とまるで泣いているように響いていた。
誰も口を開かない。いや、開けられない。
……どこかで見られている気がする。
じっと静かに、それに加えて品定めのような鋭い視線が俺たちに刺さった。
(……誰か、いる。)
ざわめきがピタリと止まり、完全な静寂が訪れた。
音を立てることも、息をすることも許されない。
そして――
少女が、そこに立っていた。
「ふふっ。来たんだ。じゃあ、さっそく“招待”してあげる。」
妖艶で不気味なスズランの香りが、広がる。
食虫植物が甘い匂いで獲物を誘うように……抗えないほど、甘美だった。
―もう、戻れないんだ。
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導入まで長くてごめんなさい💦