その日のうちに家を出ることになった私は、荷物を纏めるとトランク一つを片手に、屋敷から外へ出た。
──西園寺家は呪われている。
それはパーティーなどで、まことしやかに流れる噂だった――緊張して向かった西園寺家の呼び鈴を鳴らすと、屋敷の中から穏やかな笑顔の男性が現れた。
目の前に現れた男性は、私を応接室へ案内した。穏やかな笑顔を見て、執事か使用人だと思った私は、西園寺リュウの居場所を聞いた。
「あの、西園寺様はいらっしゃいますでしょうか?」
「申し遅れました。私が西園寺リュウでございます」
「し、失礼しました。釣書は見なかったものですから……」
爽やかな笑顔の青年を見て、この人はモテるのではないかと思った。なぜ私が嫁ぐ事になったのか話が見えない。
気になった事と言えば、顔は笑っているのに目が笑っていないということだった。
※※※※※
結婚してからも、彼は私に優しかった。衣服は足りてるか、嫌いな食べ物はないか、部屋の温度はちょうどいいか──いたれり尽くせりである。
気になったのは、夫の目がいつも笑っていないということだけ。
私は彼を愛していたし、彼の役に立ちたいと思っていた。
それなのに、何でこんなことになってしまったのか、訳が分からなかった。