数日後、異例の裁判が行われた結果、エヴァは正当防衛法が通り無罪に。しかし両親は殺され、頼る
縁が無くなっていたために、孤児院に入らざるを得なかった。そして、その時遂に、彼女の中に眠っていた因子が明らかになった。
だが、普通なら喜ばしいことであるのに、エヴァは喜ぶ気になれなかった。
なぜなら、あまりにもショッキングなことがあったために、そのトラウマを解消するために、孤児院内の精神病棟にかかりっきりになっていたからこそ。
かかりつけの医者に因子の詳細を告げられたものの、その時には既にかかりつけ医にすら恐怖心を抱く始末であった。あまりにも拒否された結果、何回も医者の交代が行われた結果、医者は同性のものに変わった。
(――エヴァちゃん。君は……『男性恐怖症』でありながら『銃恐怖症』にもなったんだ。よりにもよって……銃社会のアメリカで、ね)
(……私、本当に……生きられるのかな)
(……大丈夫。私たちお医者さんに任せて。きっと……エヴァちゃんの将来を明るく彩れるよう、全力でサポートするからさ)
だが、道のりはそう甘いものではなかった。結局、どれほど時間をかけようと男性恐怖症が治ることは無かった上に、銃恐怖症も治ることは無かった。どれだけ配慮をしてもらおうと、エヴァは深刻な状態のままであった。両親を喪った痛みは、それ相当のものであると医者は認識していたものの、自分にはどうしようもできないと匙を投げ、エヴァの元を去って行った。
そこに追い打ちをかけたのは、アメリカの因子持ちに対する法整備が整っていない現状であった。ただ自分が望んでそうなったわけでもないのに、まるで腫れ物を見るかのように接する。自分以上の化け物である、少なくとも同じ人間には見られなかったのだ。
しかも、それが孤児院の中でも同様の扱いであったため、次第にエヴァは心を病んでいった。
結果、腫れ物扱い同然の扱いに心を痛めたエヴァは、医者からの勧めで……と言うよりは、医者から多額の金を渡されて追い出される形で、日本に渡った。マイナスの要因で来日したものの、より英雄の因子を持った者に対する施策が行われている東京にこそ、両親の死んだ後の居場所は存在するのだと、確信していたのだ。
だが、事態はそう簡単に収まらない。当てのないエヴァにとって、右も左も分からない状況は格好のカモになりやすい。ゆえに、東京駅丸の内駅舎の前にある大きな広場にて、ただ地図に対し厳めしい表情をしたまま、気難しい人物を演じる以外になかったのだ。
「『――ねえ、そこのお嬢さん。何かしら、御悩み事かな』」
「『ごめんなさい、私軟派な男だけじゃあなくて、男その者が心から嫌いなんだけれど――』」
そう言いくるめようとしたエヴァであったが、エヴァの肩を叩いた存在は……男性的な雰囲気を漂わせて入るが、骨格からして明らかな女子であった。
金青色のセミロングに華奢な体躯、薄手のパーカーを羽織りながら、実にボーイッシュな格好で上下の衣服を整えていた。
「『あ、貴女は……? アメリカ人なの?』」
「『無論だ。私はレイジー。レイジー・アルゴノーツ。君と一緒、だが私は使い手としての『
武器の匠』さ』」
それが、新たな『大切』である、レイジーとの出会い。齢にして、十二歳の時であった。
二人とも、因子に恵まれた存在。レイジーに関しては日本にある程度のツテがあるために、その
縁を頼りに来日し、これからの十数年を日本で学び、過ごそうとしていたのだ。
無論、当時アメリカ国内の話題を掻っ攫っていた、エヴァについての
禁句は知っていた。男に関することと、家族を失ったこと。でも、だからと言って病人扱いをしてほしいわけではないことは、何となく理解していた。精神病を患おうと、前に進もうと努力していることは、いくらテレビ越しの彼女の表情を見るだけでも、把握していた。
元から日本に渡り、自分の中に眠る英雄の因子を覚醒させるための予定はあった。きっと、エヴァも今のアメリカに居場所はないと、英雄関連の
話題に関して秀でている方へ流れていく。それに、同じ『武器の匠』である以上、そこに明確な意思が無くとも確証無き運命のようなもので惹かれ合う。それを見越した上での行動であったのだ。
「『――もしかしてさ、泊まる場所も何も決まってないでしょ。もし良かったら……ウチに付いてきなよ。同じ女の子同士だし……気が合うかもしれないよ?』」
それを拒否しようにも、それが出来るだけの論拠はない。出会ったばかりの存在ゆえ少々信じがたかったが、その言葉に甘えることにした。