「こちらです、お願いします」
「なるほど。かつて飲料用茶として栽培されていた樹木ですかな」
ネオはミッテに、私のパートナーは最高だよ、とささやいた。ところが鑑定士は、あっさりと発言を撤回した。
「いや、やはりこれは、偽物です」
「えっ!?」
「ただの類似品ですよ。しかしまぁ、お客様はまだ新人のハンターとお見受けしますから、色を付けて買い取って差し上げましょう」
その刹那、ミッテが繰り出した電光石火の拳が炸裂した。鑑定士は店の奥まで軽々と吹っ飛び、その場で伸びてしまった。
事態を察した人々のざわめきが店内を覆う。そこでようやくネオは我に返った。
「に、逃げなきゃ……」
ヒューマノイドロボットの管理者として罪を償うという選択肢はなかった。なぜならミッテは正規ルートで手に入れたものではないから。親代わりだったマゴ爺がロボット工場の廃棄場から拾ってきて手直しした違法ロボットなのだ。
ネオはふたたびミッテを小脇に抱えて走り出す。追手を恐れ、あちこちをジグザグに寄り道し、最終的には倉庫街に逃げ込んだ。その頃にはすっかり夜を演出する人口月が天空に架かる時刻になっていた。
持ち合わせていた食料で空腹を満たす。その間ネオは、いったいどうすればミッテの機嫌を損ねないか考えていた。結果、単刀直入に訊ねることにした。
「どうして殴ったの?」
「気に入らないから」
「はっ!? それだけ!?」
まだ日頃のうっ憤を晴らしたかったと訴えられたほうが納得できる。ネオは責めたい気持ちをグッと抑えて続けた。
「ミッテはマゴ爺の最高傑作なんだよ。いきなり暴走するような悪い子じゃない。指名手配なんてことになったらどうするの? ほんとのこと教えてよ」
「交換条件だ」
「交換条件?」
ミッテはネオが首から提げている水晶のネックレスを見ている。ネックレスは母のアリシアからのプレゼントで、その日にあった出来事を毎日報告するくらい大切なものだ。ネオはあわてて手のひらで隠した。
「これは駄目」
「欲しいわけじゃない。夜な夜な眺めてはブツブツ唱えている理由が知りたい」
「な、なんで知ってるの?」
「だてに三年一ヶ月三時間一緒にいるわけじゃないからな」
「ごめん、今、細か過ぎて引いた」
細かいと言えば、マゴ爺もそうだったという回想から始まり、昔話に花が咲く。どっちみち、ネックレスにまつわる真実を打ち明けるのは恥ずかしいので、ネオは必死でごまかした。やがてどちらからともなく眠りについた。