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「馬は、いろんなしぐさで感情表現をしてくれるの、それを読み取るのも楽しい。うまくコミュニケーションが取れたときはとても嬉しいわよ?! 今日は機嫌がいいなとか、甘えているなとか、もう、なんでも分かっちゃうんだから!」
舞羽は幼いころからそう言っていた。まだ碌に馬に乗れていなかったくせに……。思い出して舞香は笑う。そして『へぇ~舞羽、すごいね!』って目を輝かしていた自分を思い浮かべると、余計に可笑しくなった。
でも……舞香も今なら分かる。
馬場馬術も障害馬術も共通しているのは、馬と乗り手の信頼関係が大切だということ。はっきり言って馬術の面白さはそこに尽きる。
馬場馬術は、いかに優雅に馬を動かせるか、その技術や芸術性が問われる競技。選手と馬とがぴったり呼吸を合わせ、騎手は見ている人にはわからないように指示を与える。
馬に細かいステップを踏ませたり、後ろ肢を軸にして一回転させたり……それがすごく難しく、醍醐味である。騎手と馬との信頼関係とコミュニケーションが、ぴったりマッチしたとき、馬が自らスキップしているように見えたり、曲に合わせて馬が楽しくダンスしているようにも見えたりする。
馬場馬術は、そこが一番魅力的で、観客たちを、その美しさにうっとりさせることができる。
「コンビを長く組んでいるうちに、お互い心を許せるようになるわ」
舞羽は馬術を始めてウラヌスとコンビを組むと、あっという間に彼女らはコンビネーションを覚えていく……舞羽にはウラヌスの意思が聞こえていた。
駿吾が、舞香が、外から見ても分かる程に。
あのときまでは……。