(運が巡って来たわ! 私は追い出されるか、されないかに勝った。後は騙してお金を頂いたらドロンね)
音色は再び毒気を湧きあげた。
「音色には瑞稀を教育係として付ける。色々学んで欲しい」
「かしこまりっ!」
「あと、生活に必要な着替えとか、そういった物は明日の休日にでも買い揃えてください、瑞稀を連れて行けばお金も心配ないでしょう」
一颯がそう言うと、音色は
(瑞稀さんの方が気は楽だけど、お金を騙し取るには一颯と仲良くなっておかないと……)
悪魔が囁く。
「一颯さんは明日もお仕事?」
「予定は何も入っておりません。休日です」
間髪入れずに瑞稀が答える。
「じゃあ、一颯さん一緒に買い物に付き合ってくれません?」
地味ながらも毎日鏡で見ていた中で、最高の笑顔の角度を思い出して迫ってみる。そして今はあのときとは違う、最高のメイクが施されている。
「音色さん、社長の手を煩わせてはいけません、俺が行くのでは何か不都合が? それに『一颯さん』なんて呼んではいけません」
「いや、いいよ。瑞稀……たまにはそういうのもした方がいい。それに自宅でも『社長』だと息苦しい、それでいいよ」
一颯も気さくに微笑んだ。音色の目がキランと光ったのには気付けていない。