翌日。
「『仮性ペスト』の予防接種を受けなさい」
研究室の教授から言われた。
「予防接種?」
「そう。『仮性ペスト』は人間にも感染する。もし事故で感染し発症してしまったら、倦怠感、高熱、発咳に悩まされる。それに、一度発症してしまうと、今のところ有効な治療法はないんだ」
「予防接種を受けたら、発症は防げるんですか?」
僕が尋ねると、教授は頷いた。
「病原性のない仮性ペスト菌のワクチン株を体内に接種することで、菌の情報を体内で記憶し、次に仮性ペスト菌が入った時には菌を破壊する抗体を大量に産生するんだ」
僕は大学の医務室で仮性ペストの予防接種を受けた。
*
僕は研究室で、モルモットに仮性ペスト菌を注射した。
注射されたモルモットは数時間程度で発症、発咳や鼻水、下痢といった症状が起こり、元気が消失する。
そして、10匹中7~9匹は死亡する。
しかし、1~3匹は生き残るのだ。
その生き残ったモルモットの頸静脈から採血をして血清を分離し、抗体価を測定する。
死亡したモルモットの処理をしようとした、その時だった。
「ゴホッ、ゴホッ」
咳が出た。
季節の変わり目の風邪でも引いたのかなぁ……。
あまり気に留めず、死体の処理を続けた。
◇
午後のニュースです。
アリフカを中心に猛威を振るうボラエ熱は、どんどん感染範囲を拡大しています。
患者の主な症状は、急な高熱、天然孔からの流出血、吐き気、嘔吐、消化器症状です。
患者の血液、便、吐物が感染源となりますので、充分に御注意の程、よろしくお願いします。
現在のところ、有効な治療法はありません。
万が一、疑わしい症状を確認した場合、直ちに最寄りの保健所へご連絡いただきますよう、よろしくお願いいたします。
◇
「ゲホッ、ガホッ、ゲホッ……」
帰宅後、ますます咳がひどくなった。
それに、何だか熱っぽくて体がだるい。
風邪をこじらせたかなぁ……。
僕は冷んやりシートをおデコにはり、野菜ジュースを飲んだ。
明日、病院へ行こう。
その日は、なるべく早く寝た。