家でぼんやりと大学の研究室での今年のカリキュラムを眺めていると、テレビから正午のニュースが流れた。
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正午のニュースです。
高い致死率を示す『ボラエ熱ウイルス』による感染症は、アリフカを中心に急激にその猛威を振るっています。
海外渡航する方は、流行地域へは近付かぬよう、くれぐれも警戒して下さい。
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僕はリモコンの電源ボタンを押し、その辛気臭いニュースを流すテレビを消した。
海外渡航なんてする予定なんてない僕には関係のないことだ。
それより、カリキュラムに目を走らせた。
僕は実験動物を扱う研究室に配属された。
モルモットに感受性の高い『仮性ペスト』を感染させる。
感染した個体の80パーセントは死亡するが、残りの20パーセントは生き残る。
その生き残った個体の血液中には、仮性ペスト菌を破壊する抗体が高濃度に誘導される。
その血液から血清を分離して『仮性ペスト』の特効薬となる抗血清を作製する研究を行うのだ。
さらさらっとカリキュラムに目を通す僕の目に、『防災訓練』という文字が映った。
防災訓練?
何だろう……?
地震などの災害に備えた訓練をそう言うのかも知れない。
でも、わざわざ研究室のカリキュラムに加えるようなことだろうか?
少し変に思ったが、気に留めないことにした。