再度、俺はギラギラと黒光りするアスファルトを歩き出した。進行方向……前にいるのは、何だ?
ヨレヨレのスーツを着たおっさんが、背中に哀愁を漂わせてトボトボと歩いていた。それを見た俺は、思わず深く溜息を吐いた。
「ああ、何と、情けない……」
おっさんの足は止まる。
「生涯、何の目的もなくただ通っていただけの会社にはリストラされ、妻子には逃げられたおっさんが、トボトボと首を吊る場所を探している。こんなおっさんがこの秩序なき世界に溢れているから、この世界には腐れ果てた『さとり世代』がはびこるのだ。こんなおっさんは、ゴミだ。いいや、排泄物だ。だから、水洗トイレにでも入って水に流されるべきだ」
俺は声を張り上げる。
すると、そのおっさんは眉間に皺を寄せて振り向いた。
「一体、誰なんだ!? どうして、お前にそこまでボロカスに言われなくてはならない……ひっ!」
おっさんは俺を見て、口を押さえた。
ふふふ、そうだ……この俺を見て、恐れ敬え!
俺こそは、この秩序なき世界の王。『裸の王様』なのだから。
俺はさらに声を張り上げた。
「おまいも俺を見習い、この世の全ての人間が裸となりお互いと向き合っていたかの時代を思い出さなければならんのだ。そう……この秩序なき世界のリバイバルのために!」
「は? 秩序なき世界のリバイバル?」
「そのとほり。さぁ、見よ。この俺の、聖なる踊りを!」
俺は踊る……力の限り!
よれっよれのこのおっさんをリバイバルするために。
見よ、このしなやかな腰と手の動き……それでいて、キレッキレに踊るという、この離れ業を!
オールヌードな俺の体を、清々しい風が吹き抜ける……。
「お……おまわりしゃぁん!」
まだ踊りの最中だというのに、その無礼なおっさんは一目散に駆け出した。