『どうかしら?』そんな野暮なセリフは吐かない。腰に手を当てて、惜しみない自分を見せつける。こちらから聞くまでもなく、思わず零れ出る言葉を待つ。
しかし音色のその野望は脆くも崩れ去る。
「終わりましたね、さ、では社に戻りましょう。社長が待っています」
瑞稀は一瞥をくれただけで、至って事務的である。音色の自尊心は音を立てて崩れた。見栄を捨てて問う、未だ魔法は完成しない。
「ね、どうかしら? なんか一言くらい言ってよ」
そう言うと、瑞稀は振り返ってもう一度まじまじと見る。フゥーっと長く息を吐き出す。それはどういう意味なのだろうか? 音色は考えてみたけれども分からない。
「とてもお似合いです。見違えるほどお綺麗になられました」
その言葉を聞いて音色は花が咲いたように表情を明るくさせる。子供のように素直な喜びが見て取れる。多少なりとも『言わせた感』があるけれども、そんなのどうだっていい、褒められることでまた一つ綺麗になる。
「うん!」
そう大きく頷くと、音色は満足したように瑞稀に続いて店を後にした。
(社長さん、私を見て何か言ってくれるかな?)
次の期待に夢を膨らませていた。