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@30話

ー/ー





「そうですね、どれも素敵でしたよ」


 


 満足いく答えではないけれど、まぁ仕方がない……とりあえずのコミュニケーションとしてお礼を述べると、この後のことを踏まえて音色は続ける言葉に口籠る。


 


「これ……」


「あぁ……今着たもの全部お願いします」


 


 瑞稀は音色への答えをコンシェルジェへの意思表示をもって行う。瞬間、音色の心は跳ね上がるほどに喜んだ。しかしそれは一瞬だけのことであって、今までの人生でこんなにもエレガントな出来事は無かったにも拘らず、気持ちは少し萎えてしまう。


 


 まるでシンデレラのような気分にもなったけど、たくさん、たくさんある中で悩んで、悩んで一着を選び出す。


『全部欲しい』気持ちはあるけれども、全部買えないからこそあっちの店にも寄ってみたいし、あそこの品ぞろえも見てみたい。


『今着たもの全部買う』なんて夢のような話だけれども、ここ一ヶ所しか見ないで決めてしまうなんて、女としては雅情がない。


 しかし意見できる立場にいない。


 


 不完全燃焼とも言える心持でラウンジを後にせざるを得なかった。


 


 瑞稀は14時までに会社に届けておいてほしい旨を伝えると、音色を連れて店を出る。次はヘアサロンである。


 ボサボサパサパサな髪の毛をプロの美容師が行う『サロントリートメント』により、見違えるほど艶が出る。高い技術とそれでいてそのスタイルを自宅でも持ち帰れる再現性の高さが評判の美容院。


 メイクも施されて鏡の前でどんどん見違えていく自分を見て音色は、魔法を感じる。


 そしてこの魔法は、第三者からの『言葉』によって完成する。それは『似合ってるね』『可愛いね』『綺麗になったね』『素敵だね』と言った自分を肯定してくれる言葉……。


 それを楽しみに振り返る。瑞稀は何というであろうか? 音色は自信に満ちていた。




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「そうですね、どれも素敵でしたよ」
 満足いく答えではないけれど、まぁ仕方がない……とりあえずのコミュニケーションとしてお礼を述べると、この後のことを踏まえて音色は続ける言葉に口籠る。
「これ……」
「あぁ……今着たもの全部お願いします」
 瑞稀は音色への答えをコンシェルジェへの意思表示をもって行う。瞬間、音色の心は跳ね上がるほどに喜んだ。しかしそれは一瞬だけのことであって、今までの人生でこんなにもエレガントな出来事は無かったにも拘らず、気持ちは少し萎えてしまう。
 まるでシンデレラのような気分にもなったけど、たくさん、たくさんある中で悩んで、悩んで一着を選び出す。
『全部欲しい』気持ちはあるけれども、全部買えないからこそあっちの店にも寄ってみたいし、あそこの品ぞろえも見てみたい。
『今着たもの全部買う』なんて夢のような話だけれども、ここ一ヶ所しか見ないで決めてしまうなんて、女としては雅情がない。
 しかし意見できる立場にいない。
 不完全燃焼とも言える心持でラウンジを後にせざるを得なかった。
 瑞稀は14時までに会社に届けておいてほしい旨を伝えると、音色を連れて店を出る。次はヘアサロンである。
 ボサボサパサパサな髪の毛をプロの美容師が行う『サロントリートメント』により、見違えるほど艶が出る。高い技術とそれでいてそのスタイルを自宅でも持ち帰れる再現性の高さが評判の美容院。
 メイクも施されて鏡の前でどんどん見違えていく自分を見て音色は、魔法を感じる。
 そしてこの魔法は、第三者からの『言葉』によって完成する。それは『似合ってるね』『可愛いね』『綺麗になったね』『素敵だね』と言った自分を肯定してくれる言葉……。
 それを楽しみに振り返る。瑞稀は何というであろうか? 音色は自信に満ちていた。