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第二百五十八話

ー/ー



 百喰は、ここが死ぬタイミングなのか、ここで敵の養分に成り果てるのが運命だったのか、と半ば諦めていた。
 だが、血肉が倒れ伏す『彼女』に降りかかろうとしたそのタイミングで、彼は悟った。ここでもし自分が倒れたら、傷つけられる謂れの無い彼女が死んでしまう。
 長らく、こんなことを考えるだなんてことはなかった。元々英雄学園の三年次として学んできた中でも、ここまで誰かのために戦っている思考は芽生えなかった。ある意味、独善的かつ独りよがりな英雄の卵だったのかもしれない。その点では、現在一年次の礼安にすら気高き精神性において及ばない、ただ歳を食っているだけの未熟者(ルーキー)であったのかもしれない。
 世の中には、そんな存在ごまんと居る。自分の権威に溺れた結果、成長する余地すらかなぐり捨て、目先の欲望に溺れ落ちぶれた存在が。百喰の周りにも、因子元が有名な存在だから、と努力を怠った結果下の組へ落ちていく大馬鹿者が何人も存在した。往々にして、そういった存在は自分を顧みる傾向はなく、ただ周りのせいにし続けるばかりであった。
 百喰は、そういった存在を見下していた。歯牙にもかけなかった。しかし、本当のところは自分も同じ穴の狢であったのだ。未熟者であったのは、自分も同じであったはずなのに、「自分は他の者とは違う」と思い込んだ結果、誰かを思いやることすらしない英雄の卵が出来上がっていたのだから。
 自分の力のためだけに、教会へ潜入した結果、今がある。本当の意味で誰かを思いやれるような英雄であるのならば、工作員としての動きはしなかったはずなのだ。武者修行などせずとも、周りの仲間たちと研鑽するか、課外活動等で自分を高めるかなど、選択肢は無数に存在した。一択に絞ったのは自分の精だったのだ。
 視野が狭いというものは、よく言えば一つの物事に没頭できる集中力の高いタイプ、と言えるだろう。しかし、悪く言うならば横で支えている存在にすら気付けない、愚か者の証である。

(――助けなければ)

 初めて抱いた、英雄的(ヒロイック)思考。瞳や肉体には、底知れぬ闇を抱えながらも、眼前の存在を打倒しなければならない、確固たる覚悟を宿していたのだ。その相手が因縁の相手だろうが何だろうが、ここで倒れた瞬間に全てが瓦解する。自分はこの少女を、命を賭してでも救わなければならない。

(何故だか知らんが――加賀美には……罪を清算しなければならない、そんな気がする)

 それ以上の深追いはしない。それ以上の深堀はしない。ただ、その内に眠る『因子』が、百喰と深く共鳴する。因縁に近いものかもしれないが、あるいは血縁に近い何かなのかもしれないが――それでも、『そう』しなければ……騎士ではない。その確信があった。
 歯を食いしばれ。
 痛みに耐えろ。
 覚悟を決め、前を見据えろ。
 眼前の絶望に屈するな。
 あれは『ガレス』ではない。
 だから、剣を振るう。
 外道であるならば、無辜の人々を狙うのならば、容赦なく切り捨てる。


「――ッ……それがッ、百喰正明であり、『ランスロット』だァァァァァッ!!」

 痛みを堪えながら、声を上げ自分の血肉の塊を宙で掴み取り、思い切り敵の顔面に投げつける。
 視界を一瞬奪われた『ガレス』は、予想外の行動に狼狽えるも、自分の血肉ごと百喰は右ストレートで容赦なく顔面をぶち抜く。頭蓋骨と装甲が複雑に砕ける、不快音が伝わってくるも、そこに容赦など一切ない。
 因縁の存在の名を騙る、不届き者を成敗する。ただそれだけのことであった。
 いわば、思考の転換。完全適応。内部の英雄の、あらゆる戦況に適応する大局眼が、百喰に宿ったのだ。
(――驚いた。自分の内に宿る、英雄に深く刻まれたトラウマを乗り越えるとは。それに完全なる超高揚(オーバーフロウ)状態にまで至った……これは、我々の負けかな)
 善吉がそう悟ったように、鎧をまとった『ガレス』は、突如として覚醒した眼前の脅威に、震え上がっていたのだ。そこに居たのは、高尚な名うての存在などではなく、ただの一般人から上がった構成員だけである。特効もクソもない、肥大化した怒りをぶつけられる脆弱なサンドバッグでしかなかったのだ。
 ブースター機構を用いながら、三次元的空中殺法にて構成員を追い詰めていく。
 直線的に攻撃を仕掛けていくのではなく、複数の残像と共に多角的に追い詰めていく。
 相手の獲物は馬上槍、前方に関しては剣よりもある程度アドバンテージがある武器。さらに片手剣よりも長さ(リーチ)があるために、手練れが扱う場合至近距離にすら潜り込めない。
 だが、往々にして弱点が存在する。それこそが、それ以外の角度である。馬という『機動力』を持っているからこそ、ある程度成り立つ武器であるのにも拘らず、現在の主戦場は空中である。百喰に引っ張り出された、というのもあるのだが、これまでにないほどの不利的盤面であった。
 さらに。相手は――強化されていたのだ。
 雄叫びをあげながら、何度もぶった斬る。何度も殴り倒す。
 ドライバーすら使わない存在だからといって、一切の容赦はしない。裏の世界に足を突っ込んだ存在だから、などではない。関係者の名を騙り、自分を陥れようとした誅罰である。
 そこら中に叩きつけながらも、何とか善吉の傍に降り立つ構成員(ガレス)麻薬(ヤク)も切れたようで、これまで押さえつけていた格上への圧倒的恐怖心が、倍以上に膨れ上がって彼を襲う。
「『総帥!! アレは……あの(おとこ)は、我々ではどうしようもありません!! あんなものに俺は立ち向かえません!!』」
 もはや、戦意は完全に喪失し、何故か起こった『経年劣化』と過ぎた暴力によって、全身の装甲がぼろぼろに朽ち果てる中で、構成員の泣き腫らしたかのような表情が覗く。しかし、善吉はそんな構成員の顔面を容赦なく蹴り飛ばし、主戦場に無理やり戻したのだ。
「『まさか……約束を破ろうだなんて思ってないよな? 最初に杯を交わした際に……お前は言った。「総帥のために命を張る」、と。俺は約束を何より重んじる。それはビジネスの場だけじゃあない、日常生活においてもだ。その中で……もう一度言おうか。絶対不変たる約束を、破るつもりか? 俺の顔に……泥を塗るつもりか??』」
 どう足掻いても、進む先で死が待っている。進めば怒り狂う百喰に叩きのめされ、退けば約束を重んじる善吉に容赦なく殺される。自分の命の軽さを、扱いやすさを、この時初めて心で理解したのだった。
 成す術がなくなった構成員は、思いつく限りのFワードを、濁流の如く二人にぶつけていたが、次第に猛烈な痛みが彼を襲う。
 ただ、アロンダイトや拳によって傷つけられただけではない、それ以上の痛みを感じたのだ。痛覚が、脳に危険信号として伝えることを拒否するほどに、傷が『劣化』していくのだ。
「――俺の能力は、『羅刹の極み(イラ・イグニッション)』。内に響く攻撃……それこそ、剣で切り付けた場合とかになるが、その周辺、あるいは対象の時間を一定時間削るか巻き戻す。もし傷がつけられた場合……持続して傷の経過時間を削っていく。適切な対処すらされないままな」
 誰もが経験しただろう、転んだあとの消毒液(オキシドール)による処置。それをしなかった場合、傷は膿んでいく。転んだ程度では人間の自浄作用によって『膿み』程度で止まるだろうが、これが完全なる凶器である片手剣で傷つけられたのなら……その先に待っている未来は分かりやすいだろう。
 傷の劣化により、生半可な治療では太刀打ちできないほどに膿み、とめどなく溢れる鮮血によって、失血死の可能性すら孕むほどの重傷を負う。さらには、痛みはずっとその傷に走り続けるために、冷静な判断力すら失わせるほどの脅威であるのだ。
 さらには、これは無機物にも効果量こそ落ちるものの適応され、守り続けた鎧は劣化によって防御力が完全に低下。信玄や丙良に斬撃を飛ばし、別場所へ吹き飛ばした絡繰りは、時間の巻き戻しを起こしたからこそ。しかも、現実時間を巻き戻したわけではなく、本人が辿った道のりを逆再生しただけである。
「お前は……『ガレス』という騎士を愚弄した!! ただ俺を害するためだけに……麻薬すら使った上で俺を殺そうとした!! そんなお前に……かける情けがあると思うか!!」
 痛みと心からの恐怖によって大絶叫する構成員。それに輪をかけるように、決別の一撃を叩き込むべく、持てる全ての魔力を片手剣に注ぎ込む。
「お前は俺を怒らせた……その意味を、痛みを以って理解しろ!!」
 トリガーを三度引くと、刃部分が三倍以上に膨れ上がり、あらゆるものを一刀両断する紫の魔力の刃が生成される。
『超必殺承認!! 湖の騎士よ、宵闇を斬り裂け(ブラックウィドウ・アロンダイト)!!』
 全身全霊で、絶大な紫刃を振り回し、何度も何度も両断していく。これでもかと言わんばかりに、鎧の下に潜む肉体が、圧倒的痛覚によって機能を停止していく。
 これまでのやり返しと言わんばかりに、何度も巨大な刃を振り回し、息の根を止めにかかるのだ。
「ッああああああッ!!」
 最後の一振り、胴体を真っ二つにするように横薙ぎに。全身の筋肉をフル稼働させフルスイングしたのだ。血管が数か所切れる程のフルパワーであったために、技を放った後思わず剣を取り落してしまうほど。
 留めと言わんばかりに、魔力による爆発が構成員を襲い、アリーナ内での戦いは終結した。
 これまでの怒りが、この振るってきた剣に宿っていたがために、そしてそれが自分を奮い立たせてきたがために、遂に堪えきれず血を勢いよく喀血した。頭部装甲を霧散させ、何とか更なる血を吐き出すも、負った傷が大きすぎたのだ。
 それでも、こう言い放つべきだと、百喰は悟った。

「――俺の、勝ちだ……クソ野郎」



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 百喰は、ここが死ぬタイミングなのか、ここで敵の養分に成り果てるのが運命だったのか、と半ば諦めていた。
 だが、血肉が倒れ伏す『彼女』に降りかかろうとしたそのタイミングで、彼は悟った。ここでもし自分が倒れたら、傷つけられる謂れの無い彼女が死んでしまう。
 長らく、こんなことを考えるだなんてことはなかった。元々英雄学園の三年次として学んできた中でも、ここまで誰かのために戦っている思考は芽生えなかった。ある意味、独善的かつ独りよがりな英雄の卵だったのかもしれない。その点では、現在一年次の礼安にすら気高き精神性において及ばない、ただ歳を食っているだけの|未熟者《ルーキー》であったのかもしれない。
 世の中には、そんな存在ごまんと居る。自分の権威に溺れた結果、成長する余地すらかなぐり捨て、目先の欲望に溺れ落ちぶれた存在が。百喰の周りにも、因子元が有名な存在だから、と努力を怠った結果下の組へ落ちていく大馬鹿者が何人も存在した。往々にして、そういった存在は自分を顧みる傾向はなく、ただ周りのせいにし続けるばかりであった。
 百喰は、そういった存在を見下していた。歯牙にもかけなかった。しかし、本当のところは自分も同じ穴の狢であったのだ。未熟者であったのは、自分も同じであったはずなのに、「自分は他の者とは違う」と思い込んだ結果、誰かを思いやることすらしない英雄の卵が出来上がっていたのだから。
 自分の力のためだけに、教会へ潜入した結果、今がある。本当の意味で誰かを思いやれるような英雄であるのならば、工作員としての動きはしなかったはずなのだ。武者修行などせずとも、周りの仲間たちと研鑽するか、課外活動等で自分を高めるかなど、選択肢は無数に存在した。一択に絞ったのは自分の精だったのだ。
 視野が狭いというものは、よく言えば一つの物事に没頭できる集中力の高いタイプ、と言えるだろう。しかし、悪く言うならば横で支えている存在にすら気付けない、愚か者の証である。
(――助けなければ)
 初めて抱いた、|英雄的《ヒロイック》思考。瞳や肉体には、底知れぬ闇を抱えながらも、眼前の存在を打倒しなければならない、確固たる覚悟を宿していたのだ。その相手が因縁の相手だろうが何だろうが、ここで倒れた瞬間に全てが瓦解する。自分はこの少女を、命を賭してでも救わなければならない。
(何故だか知らんが――加賀美には……罪を清算しなければならない、そんな気がする)
 それ以上の深追いはしない。それ以上の深堀はしない。ただ、その内に眠る『因子』が、百喰と深く共鳴する。因縁に近いものかもしれないが、あるいは血縁に近い何かなのかもしれないが――それでも、『そう』しなければ……騎士ではない。その確信があった。
 歯を食いしばれ。
 痛みに耐えろ。
 覚悟を決め、前を見据えろ。
 眼前の絶望に屈するな。
 あれは『ガレス』ではない。
 だから、剣を振るう。
 外道であるならば、無辜の人々を狙うのならば、容赦なく切り捨てる。
「――ッ……それがッ、百喰正明であり、『ランスロット』だァァァァァッ!!」
 痛みを堪えながら、声を上げ自分の血肉の塊を宙で掴み取り、思い切り敵の顔面に投げつける。
 視界を一瞬奪われた『ガレス』は、予想外の行動に狼狽えるも、自分の血肉ごと百喰は右ストレートで容赦なく顔面をぶち抜く。頭蓋骨と装甲が複雑に砕ける、不快音が伝わってくるも、そこに容赦など一切ない。
 因縁の存在の名を騙る、不届き者を成敗する。ただそれだけのことであった。
 いわば、思考の転換。完全適応。内部の英雄の、あらゆる戦況に適応する大局眼が、百喰に宿ったのだ。
(――驚いた。自分の内に宿る、英雄に深く刻まれたトラウマを乗り越えるとは。それに完全なる|超高揚《オーバーフロウ》状態にまで至った……これは、我々の負けかな)
 善吉がそう悟ったように、鎧をまとった『ガレス』は、突如として覚醒した眼前の脅威に、震え上がっていたのだ。そこに居たのは、高尚な名うての存在などではなく、ただの一般人から上がった構成員だけである。特効もクソもない、肥大化した怒りをぶつけられる脆弱なサンドバッグでしかなかったのだ。
 ブースター機構を用いながら、三次元的空中殺法にて構成員を追い詰めていく。
 直線的に攻撃を仕掛けていくのではなく、複数の残像と共に多角的に追い詰めていく。
 相手の獲物は馬上槍、前方に関しては剣よりもある程度アドバンテージがある武器。さらに片手剣よりも|長さ《リーチ》があるために、手練れが扱う場合至近距離にすら潜り込めない。
 だが、往々にして弱点が存在する。それこそが、それ以外の角度である。馬という『機動力』を持っているからこそ、ある程度成り立つ武器であるのにも拘らず、現在の主戦場は空中である。百喰に引っ張り出された、というのもあるのだが、これまでにないほどの不利的盤面であった。
 さらに。相手は――強化されていたのだ。
 雄叫びをあげながら、何度もぶった斬る。何度も殴り倒す。
 ドライバーすら使わない存在だからといって、一切の容赦はしない。裏の世界に足を突っ込んだ存在だから、などではない。関係者の名を騙り、自分を陥れようとした誅罰である。
 そこら中に叩きつけながらも、何とか善吉の傍に降り立つ|構成員《ガレス》。|麻薬《ヤク》も切れたようで、これまで押さえつけていた格上への圧倒的恐怖心が、倍以上に膨れ上がって彼を襲う。
「『総帥!! アレは……あの|獣《おとこ》は、我々ではどうしようもありません!! あんなものに俺は立ち向かえません!!』」
 もはや、戦意は完全に喪失し、何故か起こった『経年劣化』と過ぎた暴力によって、全身の装甲がぼろぼろに朽ち果てる中で、構成員の泣き腫らしたかのような表情が覗く。しかし、善吉はそんな構成員の顔面を容赦なく蹴り飛ばし、主戦場に無理やり戻したのだ。
「『まさか……約束を破ろうだなんて思ってないよな? 最初に杯を交わした際に……お前は言った。「総帥のために命を張る」、と。俺は約束を何より重んじる。それはビジネスの場だけじゃあない、日常生活においてもだ。その中で……もう一度言おうか。絶対不変たる約束を、破るつもりか? 俺の顔に……泥を塗るつもりか??』」
 どう足掻いても、進む先で死が待っている。進めば怒り狂う百喰に叩きのめされ、退けば約束を重んじる善吉に容赦なく殺される。自分の命の軽さを、扱いやすさを、この時初めて心で理解したのだった。
 成す術がなくなった構成員は、思いつく限りのFワードを、濁流の如く二人にぶつけていたが、次第に猛烈な痛みが彼を襲う。
 ただ、アロンダイトや拳によって傷つけられただけではない、それ以上の痛みを感じたのだ。痛覚が、脳に危険信号として伝えることを拒否するほどに、傷が『劣化』していくのだ。
「――俺の能力は、『|羅刹の極み《イラ・イグニッション》』。内に響く攻撃……それこそ、剣で切り付けた場合とかになるが、その周辺、あるいは対象の時間を一定時間削るか巻き戻す。もし傷がつけられた場合……持続して傷の経過時間を削っていく。適切な対処すらされないままな」
 誰もが経験しただろう、転んだあとの|消毒液《オキシドール》による処置。それをしなかった場合、傷は膿んでいく。転んだ程度では人間の自浄作用によって『膿み』程度で止まるだろうが、これが完全なる凶器である片手剣で傷つけられたのなら……その先に待っている未来は分かりやすいだろう。
 傷の劣化により、生半可な治療では太刀打ちできないほどに膿み、とめどなく溢れる鮮血によって、失血死の可能性すら孕むほどの重傷を負う。さらには、痛みはずっとその傷に走り続けるために、冷静な判断力すら失わせるほどの脅威であるのだ。
 さらには、これは無機物にも効果量こそ落ちるものの適応され、守り続けた鎧は劣化によって防御力が完全に低下。信玄や丙良に斬撃を飛ばし、別場所へ吹き飛ばした絡繰りは、時間の巻き戻しを起こしたからこそ。しかも、現実時間を巻き戻したわけではなく、本人が辿った道のりを逆再生しただけである。
「お前は……『ガレス』という騎士を愚弄した!! ただ俺を害するためだけに……麻薬すら使った上で俺を殺そうとした!! そんなお前に……かける情けがあると思うか!!」
 痛みと心からの恐怖によって大絶叫する構成員。それに輪をかけるように、決別の一撃を叩き込むべく、持てる全ての魔力を片手剣に注ぎ込む。
「お前は俺を怒らせた……その意味を、痛みを以って理解しろ!!」
 トリガーを三度引くと、刃部分が三倍以上に膨れ上がり、あらゆるものを一刀両断する紫の魔力の刃が生成される。
『超必殺承認!! |湖の騎士よ、宵闇を斬り裂け《ブラックウィドウ・アロンダイト》!!』
 全身全霊で、絶大な紫刃を振り回し、何度も何度も両断していく。これでもかと言わんばかりに、鎧の下に潜む肉体が、圧倒的痛覚によって機能を停止していく。
 これまでのやり返しと言わんばかりに、何度も巨大な刃を振り回し、息の根を止めにかかるのだ。
「ッああああああッ!!」
 最後の一振り、胴体を真っ二つにするように横薙ぎに。全身の筋肉をフル稼働させフルスイングしたのだ。血管が数か所切れる程のフルパワーであったために、技を放った後思わず剣を取り落してしまうほど。
 留めと言わんばかりに、魔力による爆発が構成員を襲い、アリーナ内での戦いは終結した。
 これまでの怒りが、この振るってきた剣に宿っていたがために、そしてそれが自分を奮い立たせてきたがために、遂に堪えきれず血を勢いよく喀血した。頭部装甲を霧散させ、何とか更なる血を吐き出すも、負った傷が大きすぎたのだ。
 それでも、こう言い放つべきだと、百喰は悟った。
「――俺の、勝ちだ……クソ野郎」