第二百五十六話
ー/ー 紫と黒を基調とした、ザ・西洋騎士と言えるような鎧に、百喰の想像力の賜物と言えるような、近代的兵装を肩に備えた、英雄的装甲というよりは機械的装甲に近い。
頭部装甲は、バイザーのついた西洋鎧をリスペクトしながら、バイザー同然である目元の透明部分には敵一人一人の戦力値、位置、行動予測が大雑把に理解できる超高度機能が備わっており、肩部装甲は盛大に改造された高出力キャノン砲が二基備わっている。敵を感知すると、自動で照準を合わせ射撃する、オートファイア機能も備わっている。
視線を下げると、胸部装甲部分や腕部装甲部分は、少々薄型装甲になっているのだが、その分動きやすいようしなやかさはかなりのもので、守りを捨て攻めを重視した騎士としての、そして本人の在り方が反映されている。
脚部装甲は上半身と異なり、力を込めた斬撃を放てるよう、踏ん張りが効きやすい重装甲となっている。しかも、重装甲の弱点である小回りの利きにくさを、足裏や踵部に備えられたブースター機能によって解消。剣だけでなく、徒手空拳もこなしやすい、攻防一体の騎士の誕生であった。
身の程知らずの構成員数人が、雄叫びを上げつつただの短刀≪ドス≫を振りかざし特攻。
しかし、それを容赦なく蹴り飛ばし、壁へと叩きつけ無力化していく。
「オラァどうした、流浪の獣ってのもこの程度か!!」
「『馬鹿言え、行くぞお前等!!』」
構成員といっても、さまざまであった。ふくよかで重火器を持つ存在も居れば、身軽な格好で爆弾を持ち投げ込む輩もいる。
しかし、それらが装甲を身に纏った英雄に、『ただ人の命を危ぶめるだけ』の武器が敵うだろうか。
答えは不正解。アロンダイトを乱暴に振るうだけで、有象無象が蜘蛛の子を散らすように弾き飛ばされていく。
組の方針だから、とたった一人の強者に立ち向かっていく姿は、無謀そのものであった。
(――ふむ。やはりだめか。違法麻薬の混ぜ合わせで恐怖心を消していようと、結局は人間。特効兵装を持たせるべきだな)
善吉は近くに控えていた一人の構成員に、中国語で耳打ちをすると、すぐさまアリーナ外へ飛び出す。
その間にも、痛覚すら消した構成員が、腕がどれだけ捻じ曲がろうが脚が圧し折れようが、まるで屍生人のように駆けていく。
その姿を憐れみながらも、一切の情け容赦を捨て全てを用い、傍で倒れ伏す加賀美を守る。
衝撃で起きてしまうかもしれない。自らの呻き声で起きてしまうかもしれない。だから、痛みを感じるだなんてこと、あってはならない。苦悶の声を、少しでも上げてはならない。これまでにないほどの、耐え忍ぶ戦いであったのだ。
しかし、庇うような戦いをしている中で、百喰の中で言い知れない不安感が肥大化してきたのだ。あの来栖善吉が、ここまで勝ち目のない戦いの元に馳せ参じるか。それに、先ほどどこかに消えた構成員の一人が、どうも違和感でしかなかったのだ。
(――さっきから、構成員が振るう短刀による攻撃が……なぜここまで『張り合える』? 麻薬云々の強化くらいで、英雄の装甲にここまで食らいつける訳が無いだろ……?)
百喰の、その緩い想像は、最悪の形で現実となる。
外に出ていた構成員の一人が持ち出したある『兵装』。その中に、百喰とその内に眠る英雄が震え上がったのだ。
「嘘、だろ」
手にしているのは、頭部装甲の一部分……というより、一点がぼろぼろになり、内の鎖帷子が見えてしまっている、実に実用性に欠けた西洋鎧一式であった。傍には、立派な馬上槍が備えられている。ご丁寧に――『古い血痕』すら再現されている。
「おや、この鎧に見覚えがあるとでも? では……ボロボロで見窄らしいこの鎧……誰かに着せましょうか」
本物が、ここにあるはずはない。何故なら、『アーサー王伝説』事態が、創作の物語であるからこそ、実物が存在するはずは無いのだ。だから礼安も百喰も、仮想武器として所詮贋作止まりだろうが、その精巧さは本物と見紛うほどのもの。
善吉が手元にて遊ばせるは、ある『因子』が込められた注射器。先の戦いである山梨事変より少し前に、善吉が千葉支部侵攻をそう遠くない未来に起こすため、当時自分よりも強かった百喰の対抗策として……因子持ちを殺害し取り寄せた代物である。
「――止めろ」
「止めろと言われて止まる存在がどこに居ますか? 特に、自分に何かしら不都合でもない限り……止まる理由なんて無いでしょう??」
最高にまで口角を吊り上げる善吉は、まさに鬼畜そのもの。数か月前から立案、実行してきた作戦が、遂に花開く瞬間が訪れる。これで殺せなくとも……心身共に深い傷を負わせる。
「じゃあ……眼前の邪魔者を消せ、『ガレス』」
「止めろ!!」
理性を失った獣同然と言える構成員が、百喰と内の英雄に完全なる特効が掛かる最悪の相手になったのだ。当人にその因子は無いだろうが、そう認識してしまったら最後――善吉の用意した、最悪のプレゼントであったのだ。
手元に握られているのは、ガレスが用いていたとされる馬上槍――のレプリカ。しかし、麻薬等で凶化された構成員が、自身の持てる全力で百喰に振るわれる。
(これは――あの時の……再現……いや、あの時の竹箆返しが――今来たんだ)
「……ッ、ッあああああああああああッ!!」
片方は狂い猛る雄叫び。もう片方は哭き叫ぶ雄叫び。それを上げ、アリーナ内での最悪の再現が始まったのだった。
頭部装甲は、バイザーのついた西洋鎧をリスペクトしながら、バイザー同然である目元の透明部分には敵一人一人の戦力値、位置、行動予測が大雑把に理解できる超高度機能が備わっており、肩部装甲は盛大に改造された高出力キャノン砲が二基備わっている。敵を感知すると、自動で照準を合わせ射撃する、オートファイア機能も備わっている。
視線を下げると、胸部装甲部分や腕部装甲部分は、少々薄型装甲になっているのだが、その分動きやすいようしなやかさはかなりのもので、守りを捨て攻めを重視した騎士としての、そして本人の在り方が反映されている。
脚部装甲は上半身と異なり、力を込めた斬撃を放てるよう、踏ん張りが効きやすい重装甲となっている。しかも、重装甲の弱点である小回りの利きにくさを、足裏や踵部に備えられたブースター機能によって解消。剣だけでなく、徒手空拳もこなしやすい、攻防一体の騎士の誕生であった。
身の程知らずの構成員数人が、雄叫びを上げつつただの短刀≪ドス≫を振りかざし特攻。
しかし、それを容赦なく蹴り飛ばし、壁へと叩きつけ無力化していく。
「オラァどうした、流浪の獣ってのもこの程度か!!」
「『馬鹿言え、行くぞお前等!!』」
構成員といっても、さまざまであった。ふくよかで重火器を持つ存在も居れば、身軽な格好で爆弾を持ち投げ込む輩もいる。
しかし、それらが装甲を身に纏った英雄に、『ただ人の命を危ぶめるだけ』の武器が敵うだろうか。
答えは不正解。アロンダイトを乱暴に振るうだけで、有象無象が蜘蛛の子を散らすように弾き飛ばされていく。
組の方針だから、とたった一人の強者に立ち向かっていく姿は、無謀そのものであった。
(――ふむ。やはりだめか。違法麻薬の混ぜ合わせで恐怖心を消していようと、結局は人間。特効兵装を持たせるべきだな)
善吉は近くに控えていた一人の構成員に、中国語で耳打ちをすると、すぐさまアリーナ外へ飛び出す。
その間にも、痛覚すら消した構成員が、腕がどれだけ捻じ曲がろうが脚が圧し折れようが、まるで屍生人のように駆けていく。
その姿を憐れみながらも、一切の情け容赦を捨て全てを用い、傍で倒れ伏す加賀美を守る。
衝撃で起きてしまうかもしれない。自らの呻き声で起きてしまうかもしれない。だから、痛みを感じるだなんてこと、あってはならない。苦悶の声を、少しでも上げてはならない。これまでにないほどの、耐え忍ぶ戦いであったのだ。
しかし、庇うような戦いをしている中で、百喰の中で言い知れない不安感が肥大化してきたのだ。あの来栖善吉が、ここまで勝ち目のない戦いの元に馳せ参じるか。それに、先ほどどこかに消えた構成員の一人が、どうも違和感でしかなかったのだ。
(――さっきから、構成員が振るう短刀による攻撃が……なぜここまで『張り合える』? 麻薬云々の強化くらいで、英雄の装甲にここまで食らいつける訳が無いだろ……?)
百喰の、その緩い想像は、最悪の形で現実となる。
外に出ていた構成員の一人が持ち出したある『兵装』。その中に、百喰とその内に眠る英雄が震え上がったのだ。
「嘘、だろ」
手にしているのは、頭部装甲の一部分……というより、一点がぼろぼろになり、内の鎖帷子が見えてしまっている、実に実用性に欠けた西洋鎧一式であった。傍には、立派な馬上槍が備えられている。ご丁寧に――『古い血痕』すら再現されている。
「おや、この鎧に見覚えがあるとでも? では……ボロボロで見窄らしいこの鎧……誰かに着せましょうか」
本物が、ここにあるはずはない。何故なら、『アーサー王伝説』事態が、創作の物語であるからこそ、実物が存在するはずは無いのだ。だから礼安も百喰も、仮想武器として所詮贋作止まりだろうが、その精巧さは本物と見紛うほどのもの。
善吉が手元にて遊ばせるは、ある『因子』が込められた注射器。先の戦いである山梨事変より少し前に、善吉が千葉支部侵攻をそう遠くない未来に起こすため、当時自分よりも強かった百喰の対抗策として……因子持ちを殺害し取り寄せた代物である。
「――止めろ」
「止めろと言われて止まる存在がどこに居ますか? 特に、自分に何かしら不都合でもない限り……止まる理由なんて無いでしょう??」
最高にまで口角を吊り上げる善吉は、まさに鬼畜そのもの。数か月前から立案、実行してきた作戦が、遂に花開く瞬間が訪れる。これで殺せなくとも……心身共に深い傷を負わせる。
「じゃあ……眼前の邪魔者を消せ、『ガレス』」
「止めろ!!」
理性を失った獣同然と言える構成員が、百喰と内の英雄に完全なる特効が掛かる最悪の相手になったのだ。当人にその因子は無いだろうが、そう認識してしまったら最後――善吉の用意した、最悪のプレゼントであったのだ。
手元に握られているのは、ガレスが用いていたとされる馬上槍――のレプリカ。しかし、麻薬等で凶化された構成員が、自身の持てる全力で百喰に振るわれる。
(これは――あの時の……再現……いや、あの時の竹箆返しが――今来たんだ)
「……ッ、ッあああああああああああッ!!」
片方は狂い猛る雄叫び。もう片方は哭き叫ぶ雄叫び。それを上げ、アリーナ内での最悪の再現が始まったのだった。
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