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いまさら謝罪など

ー/ー



 おやおや、牢獄までおいでとは、殿下もお優しい。
 そんな大きな声を出さずとも聞こえていますよ。お優しい皆様。

 それにしても、小鳥を殺したくらいで大げさな。あれは見すぎでした。
 謝罪する気になったかって? もう、今更でしょう?

 なぜ?

 私としては、なぜ、私を信用したのかがわからないのですよ。
 だって、あなた、私のことなんて、嫌いだったでしょう? いえ、それ以上に、遊び道具か、眼の前にあるなにか。
 人なんて、思ったことないでしょう? ペンでも投げるみたいに、本を破るみたいに、好きにしていいと。
 まあ、それも高貴な人のできる高貴な遊びでしょうけど。

 そんなことない。
 そうやって、大仰に喚くのが嫌いなんですよ。ええ、嫌いなんです。私が可哀想という顔をするから。

 やったことを全部忘れちゃったけど、ちゃんと誠心誠意、謝罪して、優しくして、そんな私のこと好きになるよね? という態度が反吐が出る。
 記憶がないからわからない、そう平然と言えるその顔が、本当に……。
 すべてなくなり、何もなかったことにして許せと。
 あんなことして、好きになるわけないじゃないですか。許すわけ無いですよ。

 あなたが、忘れてしまったことを私は覚えています。あなたに会うたびに思い出す。
 どうせなら、人のいない場所に追いやってくださればよかったのに。
 もう忘れたと思いますが、私の弟は病気で薬が必要でした。許可を得て、庭の一角の薬草を摘んでいたのにあなたはそれを踏みにじった。
 皇家のものを持ち出すなど許しがたいと。
 二度とするなと言われ、薬は得られなくなりました。

 弟のために必要と訴えても、部屋に閉じ込めて反省しろ。
 そうしている間に弟は苦しんで死にました。

 それを許せというのは、皇女様の特権でしょうね。

 そんなあなたが、人の命は大事と、笑っちゃいますね。本当にいつもあなたは大事な人と誰かにいうたびに笑いを噛み殺すのに苦労しました。
 あれはあなたにとって大事な、利用価値のある、ですよね。
 お優しい皇女様。

 わがままも言わず、誰にも優しく、賢い皇女様。
 王家の至宝なのですから、過去のことをとやかく言うようなものは制裁されるだけです。

 いいですか。
 あなたは権力者なので、配慮するのです。死にたくないので。
 それだけではなく、背後のお優しい人たちが、私の大事なものを壊してしまわないように。まあ、私は誰もいなくなってしまったのでこうなっているのですけど。

 そんなつもりもなくとも、権力というのはそういうものです。あなたの機嫌が一番。それ以外はゴミ以下。
 だって、普通はこんな牢屋にいれませんもの。解雇しておしまい。それも紹介状も書かずに出されたら次に働くこともままならず、野垂れ死ね。あるいは娼婦にでも身を落とせというところでしょう。

 ……あなたを毒殺しようとした? 嫌ですよ。
 長々と生き残って、死ぬまで、生きていただきたいので。死ぬわけにはいかないとか、断罪回避とか、推しが、溺愛されてるとか、うるさかった。

 それが気に入らなくて死ねと? あなた、嫌いなら死ね、という考えなのですね。可哀想に。

 私は死ぬまで苦しめ、です。趣味が違います。それを鑑賞できないのは大変、辛いですが。
 では、私はお暇させていただきます。
 長く仕えましたが、最後の、ご奉公ですね。

 皇女殿下の毒殺を企てた侍女は獄中で毒を煽って死んだ。
 皇女様、お可哀想にとまた言われますね。本当に、どうぞ、お幸せに。

 やめさせて?
 ああ、この毒は、そこのお優しい方がご用意してくれました。この毒を盛ったのかとわざわざ残していて。
 本当に、愛されているんですか?
 ただ、美しいだけの牢獄にいるのではなく?

 余計なさえずりはいりませんね。
 これで、やっと、弟に会えます。
 随分と待たせてしまいました。

 それでは……。


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 おやおや、牢獄までおいでとは、殿下もお優しい。
 そんな大きな声を出さずとも聞こえていますよ。お優しい皆様。
 それにしても、小鳥を殺したくらいで大げさな。あれは見すぎでした。
 謝罪する気になったかって? もう、今更でしょう?
 なぜ?
 私としては、なぜ、私を信用したのかがわからないのですよ。
 だって、あなた、私のことなんて、嫌いだったでしょう? いえ、それ以上に、遊び道具か、眼の前にあるなにか。
 人なんて、思ったことないでしょう? ペンでも投げるみたいに、本を破るみたいに、好きにしていいと。
 まあ、それも高貴な人のできる高貴な遊びでしょうけど。
 そんなことない。
 そうやって、大仰に喚くのが嫌いなんですよ。ええ、嫌いなんです。私が可哀想という顔をするから。
 やったことを全部忘れちゃったけど、ちゃんと誠心誠意、謝罪して、優しくして、そんな私のこと好きになるよね? という態度が反吐が出る。
 記憶がないからわからない、そう平然と言えるその顔が、本当に……。
 すべてなくなり、何もなかったことにして許せと。
 あんなことして、好きになるわけないじゃないですか。許すわけ無いですよ。
 あなたが、忘れてしまったことを私は覚えています。あなたに会うたびに思い出す。
 どうせなら、人のいない場所に追いやってくださればよかったのに。
 もう忘れたと思いますが、私の弟は病気で薬が必要でした。許可を得て、庭の一角の薬草を摘んでいたのにあなたはそれを踏みにじった。
 皇家のものを持ち出すなど許しがたいと。
 二度とするなと言われ、薬は得られなくなりました。
 弟のために必要と訴えても、部屋に閉じ込めて反省しろ。
 そうしている間に弟は苦しんで死にました。
 それを許せというのは、皇女様の特権でしょうね。
 そんなあなたが、人の命は大事と、笑っちゃいますね。本当にいつもあなたは大事な人と誰かにいうたびに笑いを噛み殺すのに苦労しました。
 あれはあなたにとって大事な、利用価値のある、ですよね。
 お優しい皇女様。
 わがままも言わず、誰にも優しく、賢い皇女様。
 王家の至宝なのですから、過去のことをとやかく言うようなものは制裁されるだけです。
 いいですか。
 あなたは権力者なので、配慮するのです。死にたくないので。
 それだけではなく、背後のお優しい人たちが、私の大事なものを壊してしまわないように。まあ、私は誰もいなくなってしまったのでこうなっているのですけど。
 そんなつもりもなくとも、権力というのはそういうものです。あなたの機嫌が一番。それ以外はゴミ以下。
 だって、普通はこんな牢屋にいれませんもの。解雇しておしまい。それも紹介状も書かずに出されたら次に働くこともままならず、野垂れ死ね。あるいは娼婦にでも身を落とせというところでしょう。
 ……あなたを毒殺しようとした? 嫌ですよ。
 長々と生き残って、死ぬまで、生きていただきたいので。死ぬわけにはいかないとか、断罪回避とか、推しが、溺愛されてるとか、うるさかった。
 それが気に入らなくて死ねと? あなた、嫌いなら死ね、という考えなのですね。可哀想に。
 私は死ぬまで苦しめ、です。趣味が違います。それを鑑賞できないのは大変、辛いですが。
 では、私はお暇させていただきます。
 長く仕えましたが、最後の、ご奉公ですね。
 皇女殿下の毒殺を企てた侍女は獄中で毒を煽って死んだ。
 皇女様、お可哀想にとまた言われますね。本当に、どうぞ、お幸せに。
 やめさせて?
 ああ、この毒は、そこのお優しい方がご用意してくれました。この毒を盛ったのかとわざわざ残していて。
 本当に、愛されているんですか?
 ただ、美しいだけの牢獄にいるのではなく?
 余計なさえずりはいりませんね。
 これで、やっと、弟に会えます。
 随分と待たせてしまいました。
 それでは……。