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@11話

ー/ー





「今日は、楽しいぃー、今日は、楽しいぃー、ハァーイキングゥー」


 


 男が一人、歌詞と違ってちっとも楽しそうもなく、不機嫌な歌声で歌いながら歩いている。上品なブランド物のスーツに身を包んだ男の胸ポケットからは携帯電話の着信がなっているのにも拘らず、一向に気にしていない。


 


「おろ?」


 


 男はベンチに横たわる女に気付いた。フラフラと近寄って見ると、若い女だ。男はゴクリッと生唾を呑み込む。


 


 


 


「おい、姉ぇーちゃん、こんなところで寝てると、襲われちゃうぞ~」


 


 男の歳は30を過ぎているだろう、オオカミのように大きく口を開け、諸手を上げて覆いかぶさるようなジェスチャーをしてみせるも、女は起きない。


 ペチペチと頬を軽く叩いてみる。しかし女は『う~ん』と唸るばかりで目を開かない。


 男は少しムラムラしてきた。ちょっとくらいなら触っても大丈夫だろうか? 辺りを見回しても、誰もいない。ただ闇夜が静かに続いているだけだ。


 月明かりもない。


 


「月が出てれば、狼男のせいにできるのだが……はて」


 


 誰かに言い訳でもするように独り言ちる。


 


 


 このご時世、いやどのご時世であっても若い女が深夜に独り無防備な姿でいたのなら、ただでは済まない。男はムラムラする気持ちを押さえて、女の身体を起こそうと試みる。酒臭い……。脇の下から抱えるように起こそうとすると、手が胸に当たった。


 


「いや、こ、これはわざとではないから!」


 


 男は鼻息を荒くして叫んでしまう。すると、女の目がパチリと開いた。


 


「あ、いや、これは……とりあえずこんばんは」


 


 訳も分からず挨拶をした。女は瞼が重い。半開きの眼で男をじっと見つめる。


 


「はい、こんばんは。ねぇ少し寒くないかしら? お布団掛けてくださらない?」


 


 完全に寝ぼけているようだ。再び横になろうとする。




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「今日は、楽しいぃー、今日は、楽しいぃー、ハァーイキングゥー」
 男が一人、歌詞と違ってちっとも楽しそうもなく、不機嫌な歌声で歌いながら歩いている。上品なブランド物のスーツに身を包んだ男の胸ポケットからは携帯電話の着信がなっているのにも拘らず、一向に気にしていない。
「おろ?」
 男はベンチに横たわる女に気付いた。フラフラと近寄って見ると、若い女だ。男はゴクリッと生唾を呑み込む。
「おい、姉ぇーちゃん、こんなところで寝てると、襲われちゃうぞ~」
 男の歳は30を過ぎているだろう、オオカミのように大きく口を開け、諸手を上げて覆いかぶさるようなジェスチャーをしてみせるも、女は起きない。
 ペチペチと頬を軽く叩いてみる。しかし女は『う~ん』と唸るばかりで目を開かない。
 男は少しムラムラしてきた。ちょっとくらいなら触っても大丈夫だろうか? 辺りを見回しても、誰もいない。ただ闇夜が静かに続いているだけだ。
 月明かりもない。
「月が出てれば、狼男のせいにできるのだが……はて」
 誰かに言い訳でもするように独り言ちる。
 このご時世、いやどのご時世であっても若い女が深夜に独り無防備な姿でいたのなら、ただでは済まない。男はムラムラする気持ちを押さえて、女の身体を起こそうと試みる。酒臭い……。脇の下から抱えるように起こそうとすると、手が胸に当たった。
「いや、こ、これはわざとではないから!」
 男は鼻息を荒くして叫んでしまう。すると、女の目がパチリと開いた。
「あ、いや、これは……とりあえずこんばんは」
 訳も分からず挨拶をした。女は瞼が重い。半開きの眼で男をじっと見つめる。
「はい、こんばんは。ねぇ少し寒くないかしら? お布団掛けてくださらない?」
 完全に寝ぼけているようだ。再び横になろうとする。