表示設定
表示設定
目次 目次




@10話 出会い

ー/ー





 音色はそう言ってハウスを出たものの、大きく息を吐いた。『死のう』なんて気持ちはなくなったが、このまま甘えておじさんのハウスに泊まるわけにもいかない。そうなればどうすれば良いのか? 音色は途方に暮れた。


 


 ハウスに戻ればきっとあのおじさんのことだ、『好きなだけ泊ってけ、遠慮なんか要らない』と言ってくれるだろう。そうしたのなら、おじさんはなけなしの食料も音色に分けてくれるだろう。


 それに音色も一応女だ。どれほど地味で飾りっ気のない簡素な女でも恥ずかしさもあれば、寝顔を見せるにはそれなりの勇気がいる。


 


 夜風が気持ちいい……酒のせいも手伝って、このまま朝日が見えるまで黄昏ていてもいい気がする。


 このままおじさんに黙っていなくなるのは気が引けたが、戻るわけにもいかない。音色はポシェットからメモとペンを出すと、癖のあるペンの持ち方でおじさんに手紙を書いた。書いているとまた、感情がこみ上げてきて泣きたくなってくる。ポシェットの中のありったけの小銭を手紙でくるむと、おじさんのハウスの入口に置いた。


 中からはまだ、源さんとの話に花が咲いているおじさんの陽気な声が聞こえてきて、音色は涙を拭った。


 


 暫くおじさんのハウスから離れるように歩くと、川を見ながらベンチに腰を下ろした。深夜の覚束ない明かりが川に反射して揺らめいたのなら、催眠術のように音色はベンチに横たわった。




スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む @11話


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 音色はそう言ってハウスを出たものの、大きく息を吐いた。『死のう』なんて気持ちはなくなったが、このまま甘えておじさんのハウスに泊まるわけにもいかない。そうなればどうすれば良いのか? 音色は途方に暮れた。
 ハウスに戻ればきっとあのおじさんのことだ、『好きなだけ泊ってけ、遠慮なんか要らない』と言ってくれるだろう。そうしたのなら、おじさんはなけなしの食料も音色に分けてくれるだろう。
 それに音色も一応女だ。どれほど地味で飾りっ気のない簡素な女でも恥ずかしさもあれば、寝顔を見せるにはそれなりの勇気がいる。
 夜風が気持ちいい……酒のせいも手伝って、このまま朝日が見えるまで黄昏ていてもいい気がする。
 このままおじさんに黙っていなくなるのは気が引けたが、戻るわけにもいかない。音色はポシェットからメモとペンを出すと、癖のあるペンの持ち方でおじさんに手紙を書いた。書いているとまた、感情がこみ上げてきて泣きたくなってくる。ポシェットの中のありったけの小銭を手紙でくるむと、おじさんのハウスの入口に置いた。
 中からはまだ、源さんとの話に花が咲いているおじさんの陽気な声が聞こえてきて、音色は涙を拭った。
 暫くおじさんのハウスから離れるように歩くと、川を見ながらベンチに腰を下ろした。深夜の覚束ない明かりが川に反射して揺らめいたのなら、催眠術のように音色はベンチに横たわった。