「あんたを絵の中へ連れて行けば、俺の兄さんを返してもらえるかもしれない」
オリバーはぼそぼそと何かを呟いていて、その部分だけ聞き取れたが、話の内容はさっぱり分からなかった。
かなり強く頭を打ったジョージは、物事をうまく考えられなかった。
起き上がるどころか、声を出すこともできないし、反撃するために持っていた斧は転げ落ちるときに手から放してしまった。
(俺を連れていくと、オリバーのお兄さんが戻ってくるって……、どういうこと??)
「大丈夫か、ジョージ!!!」
血相を変えたアーサーが走って戻ってきた。
「旦那、どうして邪魔をするんですか!!!」
オリバーは泣きそうな声で叫んだ。
「旦那、金なら俺が払う!!! コイツよりずっと多く出すよ!!! 兄さんならどんな大金でも用意できるぞ!!! だから邪魔をしないでくれ!!!!」
アーサーはそれを無視して、オリバーを睨みつけた。
「……ジョージを連れていくなら、俺を倒してからしな」
「こ、このヤロー!!」
ついにぶちぎれたオリバーは、斧を振り上げてアーサーに襲い掛かった。一撃目を右に躱したアーサーは、そのままあの剣の鎧がある部屋へと駆け出した。オリバーは床に刺さった斧を引き抜くと、ジョージのほうを見る。
「このままあんたを背負って行っても、旦那がすぐに追いかけてくるもんな。旦那を先に片づけるしかないか……」
オリバーはそう呟くと、アーサーのほうに走り出した。
ジョージは腹ばいになって、あの剣のある部屋まで進んだ。
そこではアーサーが、あの鎧の剣を構えて、オリバーと対峙していた。ジョージは力の限り叫んだ。
「アーサー!! 俺を置いて逃げろ!! 君はここで死んではいけない!!!」
しかしアーサーは聞く耳を持たなかった。それどころかオリバーを、手に入れた剣を使って挑発しているようだった。逆上したオリバーは猪のごとく突っ込むと、アーサーはひらりと躱し、近くにある本棚を思いっきり倒した。
ガタタンッと大きな音が玄関ホールに響く。
本棚の下敷きになったオリバーは、なんとか起き上がろうと足掻いていたが、足を痛めたらしく、うまく這い出てこられないようだった。アーサーはオリバーが下敷きになっている本棚を踏みつけて、すぐにジョージの元へやってきた。
「行くぞ」
「……」
「どうした? 変な顔して」
「俺、本で読んだことがあるぞ。その剣はきっとエクスカリバーだ」
「うるせぇ、馬鹿。行くぞ!!!」
アーサーは持っていた剣を床に放り投げると、ジョージを担ぎ走り出した。二人はそのまま正面玄関から外の世界へ飛び出たのだった。