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第二十一話 絵の中①

ー/ー



アーサーは気づくと雑踏の中を歩いていた。
(ここはどこだ……?? 記憶が曖昧だ。ジョージと山の奥の別荘に行ったことは覚えているんだが……)
 曇り空の下、すれ違う人の顔がひどく澱んで見えた。
 あの貧民街でも、通りを歩く人々は、皆疲れ切った顔をしていた。
 訳も分からず歩いていると、アーサーは前から来た老人とぶつかってしまった。その老人はふらりとよろめいて、地面に倒れこんでしまったので、アーサーは慌てて声をかけた。
「す、すまねぇ。大丈夫か??」
 しかし、何の反応もなかった。
(まずい、打ちどころが悪かったのか……??)
 アーサーはヒヤリとした。
 しかし、その老人は何も言わずに立ち上がると、まるで機械のように歩き出し、人込みの中へと去ってしまった。
「……心配無用ってことか?」
 アーサーは老人に罵倒されると思って身構えていたので、拍子抜けした。
(……ここは、いったいどこなんだ? 記憶が全くない。ジョージはどこに行った?)
 アーサーは最初の疑問に立ち返った。
 どうやってあの別荘からこの街に来たのか、記憶が全くなかった。
(ジョージは自分の屋敷に戻ったのか???)
 ぐるりと大通りを見渡すと、軒を連ねる店のほとんどが閉まっていた。一番手前にある店の中をガラス窓から覗いてみると、掃除や手入れがされていないのが一目瞭然だった。
(こんなに人がいる昼間なのに、ほとんどの店が営業していないなんて……。ここは一体どこなんだ)
 すると突然、アーサーの右肩がヒリヒリと痛みだした。驚いて袖をまくり、痛む個所を見る。そこには手形がついていた。何者かにかなり強い力で押さえつけられたような跡で、真っ赤に腫れ上がっている。
(そ、そうだ。……)
 そこでようやくアーサーは思い出した。
 自分が絵の中に入り込んでしまったという事実を。ここは現実の世界でなく、絵の中なのだ。
 
 もう一度周りをぐるりと見渡すと、さっきは気づかなかったことが段々と明らかになってきた。
 まず、大通りを歩く通行人に、顔が描かれている人物とそうではない人物がいる。のっぺらぼうの者は、顔の陰影はあるものの、目や口がない。
 大通りに面する大半の店は、閉店しているのではなく、店内を細かく描かれていない、ということなのだろう。
(さっきのジジィが何も言わず去ったのは、本物の人間じゃないからだ)
 アーサーは徐々に頭の中にかかっていたモヤが晴れてくるのを感じた。
(さっきまで気にしていなかったが、この空気、かなり絵具臭いぞ)
 アーサーは試しに道に咲いていた小さな花を触ってみたが、その花びらは固まった絵の具のようにポロポロと崩れ落ちてしまった。


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アーサーは気づくと雑踏の中を歩いていた。
(ここはどこだ……?? 記憶が曖昧だ。ジョージと山の奥の別荘に行ったことは覚えているんだが……)
 曇り空の下、すれ違う人の顔がひどく澱んで見えた。
 あの貧民街でも、通りを歩く人々は、皆疲れ切った顔をしていた。
 訳も分からず歩いていると、アーサーは前から来た老人とぶつかってしまった。その老人はふらりとよろめいて、地面に倒れこんでしまったので、アーサーは慌てて声をかけた。
「す、すまねぇ。大丈夫か??」
 しかし、何の反応もなかった。
(まずい、打ちどころが悪かったのか……??)
 アーサーはヒヤリとした。
 しかし、その老人は何も言わずに立ち上がると、まるで機械のように歩き出し、人込みの中へと去ってしまった。
「……心配無用ってことか?」
 アーサーは老人に罵倒されると思って身構えていたので、拍子抜けした。
(……ここは、いったいどこなんだ? 記憶が全くない。ジョージはどこに行った?)
 アーサーは最初の疑問に立ち返った。
 どうやってあの別荘からこの街に来たのか、記憶が全くなかった。
(ジョージは自分の屋敷に戻ったのか???)
 ぐるりと大通りを見渡すと、軒を連ねる店のほとんどが閉まっていた。一番手前にある店の中をガラス窓から覗いてみると、掃除や手入れがされていないのが一目瞭然だった。
(こんなに人がいる昼間なのに、ほとんどの店が営業していないなんて……。ここは一体どこなんだ)
 すると突然、アーサーの右肩がヒリヒリと痛みだした。驚いて袖をまくり、痛む個所を見る。そこには手形がついていた。何者かにかなり強い力で押さえつけられたような跡で、真っ赤に腫れ上がっている。
(そ、そうだ。《《あの女》》……)
 そこでようやくアーサーは思い出した。
 自分が絵の中に入り込んでしまったという事実を。ここは現実の世界でなく、絵の中なのだ。
 もう一度周りをぐるりと見渡すと、さっきは気づかなかったことが段々と明らかになってきた。
 まず、大通りを歩く通行人に、顔が描かれている人物とそうではない人物がいる。のっぺらぼうの者は、顔の陰影はあるものの、目や口がない。
 大通りに面する大半の店は、閉店しているのではなく、店内を細かく描かれていない、ということなのだろう。
(さっきのジジィが何も言わず去ったのは、本物の人間じゃないからだ)
 アーサーは徐々に頭の中にかかっていたモヤが晴れてくるのを感じた。
(さっきまで気にしていなかったが、この空気、かなり絵具臭いぞ)
 アーサーは試しに道に咲いていた小さな花を触ってみたが、その花びらは固まった絵の具のようにポロポロと崩れ落ちてしまった。