そこには、すでに見知らぬ黒い影があった。
その黒い影が持っていた銀のナイフが明かりに反射して、冷たくギラリと光った。それに気づいたアーサーは威嚇するように叫んだ。
「お前、何者だ!!」
その声で、ジョージの心臓が跳ね上がった。黒い影も一瞬ビクリと震えたのが分かった。
アーサーは杖を構えながら、じりじりと距離を詰めていく。
相手はしばらく身構えていた。ジョージは黒いその影にじっと見られているような気がした。
しばらく臨戦態勢が続いたが、その黒い影は突然、くるりと踵を返して逃げ出した。
「どこに行く気だ、待ちやがれ!」
アーサーは持っていた杖を放り投げて、明かりを持ち直すと、部屋を飛び出した。ジョージも後に続いた。
廊下に出ると、端に寄せてあった小机の上に花瓶が置かれていた。アーサーはその花瓶を引っ掴んで、そのまま黒い影に向かってぶん投げた。
その影はぐらりとよろめく。
「やった! 当たったぞ!!」
ジョージは歓喜の声をあげた。
○●〇
この屋敷はそれほど広くないので、二人はそのあとすぐに黒い影を壁まで追い詰めることができた。
黒い影は観念したのか、銀色のナイフを地面に置いて遠くに蹴飛ばし、かぶっていた帽子を脱いだ。
そして、両手を高く上げて言った。
「ひぃっ、命だけはご勘弁を、黒髪の旦那。それからお付きの人も、それで刺すのはやめてくだせぇ……」
そう言いながら、ジョージが持っていた火かき棒を指さした。
その人物はジョージとそんなに年が離れていないように見えた。茶髪の巻き毛が汗に濡れてべったりと額に張り付いている。よくみると、そばかすだらけの顔をしていた。背はジョージと同じくらいだが、ガリガリに痩せている。
「お前、何しにここに来た?」
アーサーは今にもとびかかりそうな勢いだ。
「俺はあれを……」
そばかすの彼は口ごもったあと、意を決したような表情で言った。
「旦那たちもあの絵画の在処を探しに来たんでしょう?」
「さぁ、どうだろうな」
アーサーがしらばっくれた一方で、彼は続けた。
「俺は、あの絵画の探し場所が書かれた案内状を探していたんだ」
彼の声は恐怖で震えていた。
「案内状だと?」
何言ってんだコイツ、とアーサーは肩眉を吊り上げた。
「旦那たちがどこまで噂を知っているのかは俺には分からないが……ゲホゲホッ」
彼は息を整えながら言った。
「ただ一つ言えることは、ここに噂の絵画は無い、ということだ」
ジョージはもう我慢できなくなり、無理やり会話に入り込む。
「それは、いったいどういうことなんだ?」
「簡単な話さ。この家には、あの絵画の隠し場所が書かれた案内状があるんだ。その隠し場所で盗賊たちは姿を消すんだ……。旦那たちもその噂を聞いて、ここまで来たんでしょう?」
(案内状……?)
ジョージは顎に右手をあてた。