こうしてジョージとアーサーは、噂の絵画を探すことになった。
まずは聞き込みから始めようということになり、その日は解散して、翌日以降に各々調査を開始した。
ジョージは数少ない友人や、知り合いの画家に話を聞いて回った。
友人からはこれといった情報は得られず、むしろ、大学を中退しているのにそんなことをして何になるんだ、と非難されてしまった。
知り合いの画家も、そんな噂話を気にしている暇があったら、一枚でも多くのスケッチを描いた方が君のためになる、とアドバイスされてしまった。
(……これは、初手から詰んだな)
ジョージは一人うなだれた。
〇●〇
それから数日後、ジョージとアーサーは行きつけのパブで状況報告した。
アーサーを先頭に扉を開けると、ぼんやりとした明かりが店内を照らしていた。日がもう落ちていたため、店内は混み始めている。
エールの強い香りがアーサーの鼻腔をくすぐった。
ギシギシとなる床を踏みつけながら、ジョージはパブの建てつけの悪さに内心ヒヤヒヤしていた。
アーサーはカウンターに行き、オレンジジュースとエールをそれぞれ注文した。その後ろでジョージは財布を取り出した。
二人は会計を済ませると、空いている席を見つけて腰を掛けた。
ジョージはコップに口をつけ、咳払いをしたあとこう言った。
「アーサー、何か収穫はあったかい?」
「まぁな、そっちはどうだ?」
アーサーの返事を聞いて、ジョージは緑色の目をキラキラと輝かせた。
「なんだって!? 俺の収穫はゼロだっていうのに……」
「そんな気はしたぜ」
「……俺ってそんなに情報集め下手かな?」
アーサーはエールを一口含むとこう言った。
「まぁ、上手ではないんじゃないか」
それを聞いたジョージは、がっくりと肩を落とした。
「気にすんな、ジョージ。お前には絵の才能があるだろう?」
「……ありがとう、アーサー」
アーサーは、自身の収穫について話し始めた。
それは、彼の仕事仲間から酒の席で聞いた話だった。
高級住宅地にある廃墟で盗賊が何人も失踪している、という噂が貧民街で広がっているんだそうだ。
絵画の噂とどこか似ているな、と考えたアーサーはその仕事仲間からその廃墟の場所を教えてもらったのだそうだ。その際にひと悶着あったらしいが、それはまた別の話。
「もしかして」
ジョージは何か確信を得たような目で、アーサーの青色の瞳を見つめた。
「あぁ、おそらくそこに噂の絵画があるんじゃないかと思う」
そういうと、アーサーはエールを飲み干し、ジョッキをドンッとテーブルに置いた。
「ジョージ」
「何だい?」
「もしその廃墟に忍び込むんだとしたら、かなり危険が伴うぞ」
それでもやるのか? というように、アーサーはジョージを見た。
「何かあったら、アーサーが何とかしてくれるんだろう?」
ジョージはフフッと息を漏らした。
「……とんでもない奴を主人にしちゃったらしいな、俺は」
アーサーはエールを追加で頼もうとした。
ジョージはそれを制止すると、飲みかけのオレンジジュースを勢いよく飲み干した。しかし勢い余って口の端から少しこぼれてしまった。ジョージは右手でそれを拭った。
「俺もエール一つ頼む」
「お前……飲めるのか?」
アーサーは眉をひそめてそう言った。
「大丈夫さ」
「ならいいんだが」
「さぁ、忍び込む日取りを決めよう」
ジョージは椅子に座りなおすと、アーサーの方を向き直った。