「ありがとう、アーサー」
ジョージは震える声でそう伝えた。
「……ジョージ、俺と会うときは、ロンドンの西側って決めたのを忘れたのか?」
アーサーはすごい剣幕でジョージを責めた。次のターゲットはお前だ、と言わんばかりの迫力だった。
ジョージは肩をすくめた。
「ごめんごめん、どうしても直ぐに会いたかったんだ」
アーサーは仕留めたゴロツキを道の端に寄せた。相当慣れた手つきで、彼にとっては日常茶飯事だと言うようだった。
「……警察を、呼ぼうか?」
ジョージは悲惨な光景をあまり見ないようにしながらそう伝えた。
アーサーは警察と聞くと、眉をひそめた。
「いや、放っておけ。警察なんてあてにならねえよ」
アーサーは冷たい声でそう言うと、こう続けた。
「ところでジョージ、お前、何しにここに来た?」
「……約束の絵を届けに……」
ジョージは言いにくそうにそう言った。というのも、実はそれはかなりの建前なのだった。
「おぉ、そのためにか……悪かったな」
アーサーはジョージの手荷物を見てその建前を信じたのか、申し訳なさそうにそう言った。
「アーサー、約束していた絵だよ、上手く商売に使ってくれ」
「……ぁあ、ありがとうよ」
どう反応したらよいか分からなくなったアーサーは、ジョージが手渡した絵を受け取ると、艶やかな前髪を右手でかき分けた。
「あと……」
「あと?」
アーサーは青色の瞳をスッと細めた。
「……アーサー、こんな噂を知っているか?」
ジョージはそのアーサーの目をじっと見つめた。
ジョージはアーサーに、最近話題になっている例の噂話について話した。
「その噂の絵画についてなんだけど」
「断る」
アーサーは間髪入れずにそう言った。
「って、早くない!? 俺、まだ何も言ってないんだけれど!!」
アーサーは深いため息をついた。
「ジョージ、俺はお前の動機や行動パターンは痛いほどよく知っているんだ。どうせその噂の絵画が気になって夜も眠れないから、一緒に探してほしい。 その絵画を手に入れるために、協力をしてほしいって話だろう?」
アーサーがスラスラと暗唱するように言う一方で、ジョージはうなだれた。
それを横目で見つつ、アーサーは続けた。
「俺は仕事が忙しい。お前も知っているだろうが、弟の病院代を稼がなきゃいけねぇ。そういうことに付き合っている暇はねぇんだ」
他を当たるんだな、とアーサーはそっぽを向いた。
(やっぱり)
ジョージは嫌な予感が的中した。アーサーには病気の弟がいる。それを理由に断られると、絶対に思っていたのだった。
(ならば……)
ジョージはアーサーをキッとにらむと、こう言った。
「じゃあアーサー、契約しよう。一週間でこれくらいの額はどうだろう?」
ジョージは懐から財布を取り出し、そう告げた。
アーサーはそれを見ると、目の色を変えてこう言った。
「……お供いたしましょう、ご主人さま!!」