あるあるぁるぁる~(テーレーレーレー)
ー/ー 時は1985年。とある田舎町。
藻音はロックを聴き始めたばかりの中2の女の子。お小遣いでレコードを買うのはなかなかなので、友達のレコードやCDを借り、カセットテープにダビングし、音楽ライフを楽しんでいる。
時にはカセットからカセットにダビングし、その音はとても良いものではなく、くぐもったボヤっとした音になる。それでも、大好きなPUNKやロックが聴けることが嬉しくてしょうがない藻音。
この『カセットテープ』とは厄介な代物でもあり、『のびる』。そう、ラーメンのように。ラーメンが伸びたってガマンすれば食べられるが、カセットが傷んだ・のびた場合、ボーカルの声は低~くなり、演奏は遅ぉーくなる。『のびる』のは大変困る。
藻音はCDやレコードからだけじゃなく、ラジオ放送もよく録る。DJが曲紹介をする時から、ラジカセの赤い丸のついた『録音ボタン』と『再生ボタン』それぞれをいつでも押せるよう左右の人差し指をスタンバっておく。イントロが始まり好きそうな感じの曲だと、両人差し指でボタンを押し込む。ガチャ! と音がし録音が始まる。藻音はそのガチャッ! が好き。
カセットテープが回り始める。
また、1980年代には、『カセットテープのアルバム』も存在する。そう、アナログ盤・CD、のように。
聴けば聴くほどカセットテープはへたってゆく。しまいには下の穴から、ダラ~ンと中のフィルム状のテープが飛び出してしまうことや、キュルチュルチュルルリラキュ~などと泣いて、ラジカセの中でぐちゃぐちゃになることもある。
そんな時はこっちが泣きたいよ。
ダラ~ンとなっただけの時は、カセットテープの穴の部分にボールペンを入れ手動で巻き、元に戻してやる。
お勉強よりもそんな音楽ライフを毎日楽しむ藻音。
今日は友達から借りた『着火ーズ』のレコードからカセットに録った楽曲をノリノリで楽しんでいた。
あれ? なんか、音が変。
『カセットテープを舐めんなよ』というタイトル名のアルバム。好きすぎて何回も聴いてるもんなー。
ラジカセから藻音が取り出しテープを眺めていたその時だ!
ひっ!
半透明のちっこいお爺さんが、一生懸命テープを中から杖で引っ張り出しているではないか! お爺さんの体は切った爪ぐらいの大きさだ。
最初はこのミステリーに怯えたものの、大大どゎいスキな着火ーズを壊されてなるものかと、あったまにきた藻音は叫んだ。
「おい!爺さんっ!」
「ヒッ」
お爺さんはギクッとした表情をしている。玉虫色に揺らめく半透明だ。
「あたしの着火ーズになにをする!」
ティッシュを取り出す藻音。
不思議なミニミニ爺さんを触るのは恐ろしいので、包んでやっつけてやろうとしたのだ。
「待って!」
爺さんが叫ぶ。
「何を待つんだっ、人の物を壊しておいて! 引っ張り出しておいて!」プンスカ✰
「これは、わしの道楽なんじゃ」
「うぬぬぬぬぬ!」
藻音は怒り震える。
人の大切なものをデストロイするのが道楽? 許さん!
「おい、じじいっ! デストロイが『道楽』ぅ? どの口が言う!」
わらわらわらわら……。すると「殿!」とカセットテープを早送りした時みたいなたっかい声の兵隊たちがゾロゾロテープの奥から出てきた。そうだ藻音の着火ーズの中からだ。
藻音は「ふんっ!」と殺虫剤を即座にかまえた。
「あわわわゎゎ……」
彼らはうろたえている。これが怖いものだと知っているらしい。
「あんた達なんなのよ!? いったい。おもしろがって、人のお気に入りをぶっ壊すなんて悪趣味よ!」
「……」
「なんとか言いなさいよ! なによ、妖精? 虫? あんたら何者か言いなさい」
「ぼ、僕たちは……」
兵隊のリーダーらしきがしゃしゃり出た。
「僕たちは『 No more 巻き巻き隊 』です!」
名前で余計に激怒する藻音。
「ぬゎっにが『ノー・モア』よ! 巻き巻きして当たり前じゃん! のびたテープは。邪魔する気?」
「はい、殿は磁気テープにしがみ付きぶら下がって戯れるのがお好きなのです」
「(ワナワナワナワナ)許さないからね! そんな悪戯どもは成敗してくれるわい!」
藻音のハードコアな部分丸出しだ。デス声にきこえなくもない。
プシュ――――――――ッ!
ついに、ついに殺虫剤を彼らに浴びせた藻音。1人……3人……10人みなパタッと倒れ、残像となり最後消えて行った。爺さんも力尽き消えた。
が、着火ーズのカセットが!
「うわぁあああん!」
巻き巻きしたけど音が出ない。殺虫剤でおかしなことになったのだ。
翌日、ママからお小遣いの前借りをし、藻音はアルバム『カセットテープを舐めんなよ』をレコード屋さんに買いに行った。
店員のお兄さんとは仲良しなので、きのうのことを話す藻音。
「あぁ~っ、藻音ちゃんのとこにも出たの! あひゃひゃひゃひゃ、あるよね~! あひゃひゃひゃひゃ!」
(ナイナイ)
もういい、と藻音は思った。
――――そうして40年経った現在。
藻音は数100本のカセットテープを今でも大事に持っていて、たまに聴く。
CD・MD・カセットテープが聴けるコンポで聴くのだ。
絶滅危惧種だったのか、もう半透明の小さなデストロイヤーたちに出くわすことはない。
時々あの時の攻防を懐かしむ藻音である。
藻音は今、カセットテープで『折角のビス取るズ』を聴いている。
藻音はロックを聴き始めたばかりの中2の女の子。お小遣いでレコードを買うのはなかなかなので、友達のレコードやCDを借り、カセットテープにダビングし、音楽ライフを楽しんでいる。
時にはカセットからカセットにダビングし、その音はとても良いものではなく、くぐもったボヤっとした音になる。それでも、大好きなPUNKやロックが聴けることが嬉しくてしょうがない藻音。
この『カセットテープ』とは厄介な代物でもあり、『のびる』。そう、ラーメンのように。ラーメンが伸びたってガマンすれば食べられるが、カセットが傷んだ・のびた場合、ボーカルの声は低~くなり、演奏は遅ぉーくなる。『のびる』のは大変困る。
藻音はCDやレコードからだけじゃなく、ラジオ放送もよく録る。DJが曲紹介をする時から、ラジカセの赤い丸のついた『録音ボタン』と『再生ボタン』それぞれをいつでも押せるよう左右の人差し指をスタンバっておく。イントロが始まり好きそうな感じの曲だと、両人差し指でボタンを押し込む。ガチャ! と音がし録音が始まる。藻音はそのガチャッ! が好き。
カセットテープが回り始める。
また、1980年代には、『カセットテープのアルバム』も存在する。そう、アナログ盤・CD、のように。
聴けば聴くほどカセットテープはへたってゆく。しまいには下の穴から、ダラ~ンと中のフィルム状のテープが飛び出してしまうことや、キュルチュルチュルルリラキュ~などと泣いて、ラジカセの中でぐちゃぐちゃになることもある。
そんな時はこっちが泣きたいよ。
ダラ~ンとなっただけの時は、カセットテープの穴の部分にボールペンを入れ手動で巻き、元に戻してやる。
お勉強よりもそんな音楽ライフを毎日楽しむ藻音。
今日は友達から借りた『着火ーズ』のレコードからカセットに録った楽曲をノリノリで楽しんでいた。
あれ? なんか、音が変。
『カセットテープを舐めんなよ』というタイトル名のアルバム。好きすぎて何回も聴いてるもんなー。
ラジカセから藻音が取り出しテープを眺めていたその時だ!
ひっ!
半透明のちっこいお爺さんが、一生懸命テープを中から杖で引っ張り出しているではないか! お爺さんの体は切った爪ぐらいの大きさだ。
最初はこのミステリーに怯えたものの、大大どゎいスキな着火ーズを壊されてなるものかと、あったまにきた藻音は叫んだ。
「おい!爺さんっ!」
「ヒッ」
お爺さんはギクッとした表情をしている。玉虫色に揺らめく半透明だ。
「あたしの着火ーズになにをする!」
ティッシュを取り出す藻音。
不思議なミニミニ爺さんを触るのは恐ろしいので、包んでやっつけてやろうとしたのだ。
「待って!」
爺さんが叫ぶ。
「何を待つんだっ、人の物を壊しておいて! 引っ張り出しておいて!」プンスカ✰
「これは、わしの道楽なんじゃ」
「うぬぬぬぬぬ!」
藻音は怒り震える。
人の大切なものをデストロイするのが道楽? 許さん!
「おい、じじいっ! デストロイが『道楽』ぅ? どの口が言う!」
わらわらわらわら……。すると「殿!」とカセットテープを早送りした時みたいなたっかい声の兵隊たちがゾロゾロテープの奥から出てきた。そうだ藻音の着火ーズの中からだ。
藻音は「ふんっ!」と殺虫剤を即座にかまえた。
「あわわわゎゎ……」
彼らはうろたえている。これが怖いものだと知っているらしい。
「あんた達なんなのよ!? いったい。おもしろがって、人のお気に入りをぶっ壊すなんて悪趣味よ!」
「……」
「なんとか言いなさいよ! なによ、妖精? 虫? あんたら何者か言いなさい」
「ぼ、僕たちは……」
兵隊のリーダーらしきがしゃしゃり出た。
「僕たちは『 No more 巻き巻き隊 』です!」
名前で余計に激怒する藻音。
「ぬゎっにが『ノー・モア』よ! 巻き巻きして当たり前じゃん! のびたテープは。邪魔する気?」
「はい、殿は磁気テープにしがみ付きぶら下がって戯れるのがお好きなのです」
「(ワナワナワナワナ)許さないからね! そんな悪戯どもは成敗してくれるわい!」
藻音のハードコアな部分丸出しだ。デス声にきこえなくもない。
プシュ――――――――ッ!
ついに、ついに殺虫剤を彼らに浴びせた藻音。1人……3人……10人みなパタッと倒れ、残像となり最後消えて行った。爺さんも力尽き消えた。
が、着火ーズのカセットが!
「うわぁあああん!」
巻き巻きしたけど音が出ない。殺虫剤でおかしなことになったのだ。
翌日、ママからお小遣いの前借りをし、藻音はアルバム『カセットテープを舐めんなよ』をレコード屋さんに買いに行った。
店員のお兄さんとは仲良しなので、きのうのことを話す藻音。
「あぁ~っ、藻音ちゃんのとこにも出たの! あひゃひゃひゃひゃ、あるよね~! あひゃひゃひゃひゃ!」
(ナイナイ)
もういい、と藻音は思った。
――――そうして40年経った現在。
藻音は数100本のカセットテープを今でも大事に持っていて、たまに聴く。
CD・MD・カセットテープが聴けるコンポで聴くのだ。
絶滅危惧種だったのか、もう半透明の小さなデストロイヤーたちに出くわすことはない。
時々あの時の攻防を懐かしむ藻音である。
藻音は今、カセットテープで『折角のビス取るズ』を聴いている。
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