横領した金額を返済すれば刑事告訴はしない、という会社の恩赦を得て、音色は会社を解雇された。
音色は亡くなった両親から相続した家も差し押さえられ、貯金は全て返済に取られ、ほぼ無一文状態で放り出されたわけだった。
音色には兄妹もなく、頼れる親戚などいない。
おじさんは黙って聞いてくれた。話しだすと言葉も気持ちも酒も止まらなくなった。グラスを空けてはおじさんが注ぎ、空けては注いでくれるのでひたすら飲んだ。ときに声を大きくし、ときに嗚咽しながら……その度に電灯は淋しく揺れていた。一升瓶は残り1/4ほどになっていた。
「それは辛い目にあったね……音色ちゃん……」
そう言って小春は肩を抱いた。音色はおじさんにもたれるように身体を傾けた。
「おーい、春さん、入るよー」
突然ハウスのビニールが擦れる音と共に人が入ってくる。音色は慌てておじさんから身体を離した。
「おー源ちゃんかい、どうした?」
「何か春ちゃんとこが賑やかだから、楽しいことでもしてんのかって……おろ?」
音色に気付いて源ちゃんと呼ばれた男は固まった。