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第19話 決勝戦 - 後編

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 がら空きになった、僕たちのコアへと向かう敵のアタッカー。
 その光景を、僕は、壊された砦の陰から、ただ見ていることしかできなかった。

 この時ほど、ユイとの高速連携を封じられたことに、苛立ちを感じたことはなかった。
 リョウガ先輩のリスポーンまで、約9秒。敵のアタッカーが、コアのある場所に辿り着くまで、恐らく12〜13秒。その差、わずか数秒。
 そして、僕たちの周囲には、まだ敵のアタッカーが二人もいる。僕たちは、装備の性能差もあって、一対一の戦闘では勝ち目が薄い。それを補ってきたのが、僕とユイの連携による、常識外れの超高速ビルドだった。
 ユイがいれば、どんなピンチからだって、きっと形勢逆転ができた。でも今、それは出来ない——。

 ——でも、本当にそれでいいのか?

 クエンティンと交わした、未来を変えるという約束。
 ユイが、これからも安心して暮らせる、僕たちの居場所。
 決勝戦の前にぶつけられた、「チート野郎」という不当な汚名。
 今、ここで、負けるわけにはいかない——!

 覚悟を決めた、その瞬間だった。
 僕の世界から、音が消えた。
 あれほど激しかった心臓の鼓動が嘘のように鎮まり、時間の流れが緩やかに引き伸ばされる。まるでサードパーソン・シューティングゲームのように、自分自身の姿と戦場全体を冷徹に俯瞰する、不思議な感覚に支配されていた。心なしか、時間の流れも、ゆっくりに感じられた。
 これが、いわゆる「ゾーンに入った」って感じなのかもしれない。

「みんな、30秒間だけ、耐えてほしい。その間に、逆転のための一手を作る」
 僕の声は、自分でも驚くほど、冷静だった。
『おう!』『了解!』『任せろ!』
 仲間たちの、信頼に満ちた声が、即座に返ってきた。

『リク選手、絶体絶命のこの状況で、一体何を作るというのでしょうか!』

「ユイ! 近くにある『ハンドル』と『推進ファン』を探して!」
『了解!』
 ユイが、僕の視界の中で、必要なパーツをハイライト表示してくれる。良かった! すぐ近くにあった!

 後は、スキルで手繰り寄せて、接着するだけだ。
 僕は、かつてないほどの速度で、キーボードとジョイスティックを操作していく。僕の頭脳と、ユイのサポート、そして僕自身の指が、完璧にシンクロしていく。
 ちょうど30秒後——。何とかビルドはできた。だけど、正常に動いてくれるかは、未知数だ。
 でも、もう迷っている時間は無い。

『で、できた! 僅かな時間で作り上げたぞ! し、しかし、これは一体……大砲にハンドルと推進ファン!? エアバイク……なのか!?』

 僕がビルドしたのは、——立て籠もっていた拠点の『大砲』に、『ハンドル』と三つの『推進ファン』を、無骨に接着しただけの——大砲付きのエアバイクだった。
 僕は、そのハンドルを掴み、ゆっくりと、祈るように、スロットルを引いた——飛んでくれ!
『推進ファン』が、唸りを上げる。エアバイクは、勢い良く前進した。が、どうもバランスが悪かったらしい。少し左に傾くし、先端に取り付けた大砲の重みに引っ張られて、前のめりになりやすい。でも、この程度なら、何とか飛べる!

「みんな! これから敵のコアを叩きに行きます! 出来れば援護を頼みます!」

『飛んだ! 飛んでいます! ジャンク・キャッスル、最後の希望を乗せて、敵のコアへと向かうー!』

 僕の駆る、いびつなエアバイクが、敵陣へと突っ込んでいく。
 敵のアタッカーの一人が、僕に向けて矢を放ってくる。だが、エアバイクが真っ直ぐ飛べないことが、逆に相手の狙いを定めづらくさせているらしかった。矢は、僕のすぐ横を通り過ぎていく。
『アンタの相手は俺だろ!』
 その隙を、クエンティンが見逃さなかった。彼の一撃が、敵のアタッカーにとどめを刺したようだった。

 そして、敵のコア付近までたどり着くと、僕は『大砲』をぶっ放した。
 凄まじい反動で、ただでさえ不安定なエアバイクが、大きく揺れる。
 放たれた砲弾は、コアを覆うブロックを吹き飛ばしたが、コアそのものを破壊するには至らなかった。

『リク! 敵が来る!』
 ユイが警告を放つのと、鋭い痛みが僕の体を貫くのは、ほぼ同時だった。弓矢が、当たったのだ。
 僕のヒットポイントはまだ残っていたが、体勢を崩したエアバイクから、僕は無残に振り落とされてしまった。

『ああっと! リク選手、ここで撃ち落とされたー! これで万事休すか!?』

 地面に叩きつけられ、なすすべなく空を見上げる。
『すまん、みんな!』
 僕の謝罪と、リョウガ先輩の咆哮が、ヘッドセットの中で重なった。

『まだだ!まだあきらめるな! コッチは俺が食い止める!』
 リスポーンしたリョウガ先輩が、敵のアタッカーを食い止めてくれている。
 そして——。
『任せて! これでトドメ!』
 僕を射った敵を、ずっと追ってきていたのだろう。ミミ先輩が、最後の武器である爆弾を手に、がら空きになった敵のコアへと、身を躍らせていた。
 彼女の手から放たれた爆弾が、美しい放物線を描き、コアの中心に吸い込まれていく——!


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 がら空きになった、僕たちのコアへと向かう敵のアタッカー。
 その光景を、僕は、壊された砦の陰から、ただ見ていることしかできなかった。
 この時ほど、ユイとの高速連携を封じられたことに、苛立ちを感じたことはなかった。
 リョウガ先輩のリスポーンまで、約9秒。敵のアタッカーが、コアのある場所に辿り着くまで、恐らく12〜13秒。その差、わずか数秒。
 そして、僕たちの周囲には、まだ敵のアタッカーが二人もいる。僕たちは、装備の性能差もあって、一対一の戦闘では勝ち目が薄い。それを補ってきたのが、僕とユイの連携による、常識外れの超高速ビルドだった。
 ユイがいれば、どんなピンチからだって、きっと形勢逆転ができた。でも今、それは出来ない——。
 ——でも、本当にそれでいいのか?
 クエンティンと交わした、未来を変えるという約束。
 ユイが、これからも安心して暮らせる、僕たちの居場所。
 決勝戦の前にぶつけられた、「チート野郎」という不当な汚名。
 今、ここで、負けるわけにはいかない——!
 覚悟を決めた、その瞬間だった。
 僕の世界から、音が消えた。
 あれほど激しかった心臓の鼓動が嘘のように鎮まり、時間の流れが緩やかに引き伸ばされる。まるでサードパーソン・シューティングゲームのように、自分自身の姿と戦場全体を冷徹に俯瞰する、不思議な感覚に支配されていた。心なしか、時間の流れも、ゆっくりに感じられた。
 これが、いわゆる「ゾーンに入った」って感じなのかもしれない。
「みんな、30秒間だけ、耐えてほしい。その間に、逆転のための一手を作る」
 僕の声は、自分でも驚くほど、冷静だった。
『おう!』『了解!』『任せろ!』
 仲間たちの、信頼に満ちた声が、即座に返ってきた。
『リク選手、絶体絶命のこの状況で、一体何を作るというのでしょうか!』
「ユイ! 近くにある『ハンドル』と『推進ファン』を探して!」
『了解!』
 ユイが、僕の視界の中で、必要なパーツをハイライト表示してくれる。良かった! すぐ近くにあった!
 後は、スキルで手繰り寄せて、接着するだけだ。
 僕は、かつてないほどの速度で、キーボードとジョイスティックを操作していく。僕の頭脳と、ユイのサポート、そして僕自身の指が、完璧にシンクロしていく。
 ちょうど30秒後——。何とかビルドはできた。だけど、正常に動いてくれるかは、未知数だ。
 でも、もう迷っている時間は無い。
『で、できた! 僅かな時間で作り上げたぞ! し、しかし、これは一体……大砲にハンドルと推進ファン!? エアバイク……なのか!?』
 僕がビルドしたのは、——立て籠もっていた拠点の『大砲』に、『ハンドル』と三つの『推進ファン』を、無骨に接着しただけの——大砲付きのエアバイクだった。
 僕は、そのハンドルを掴み、ゆっくりと、祈るように、スロットルを引いた——飛んでくれ!
『推進ファン』が、唸りを上げる。エアバイクは、勢い良く前進した。が、どうもバランスが悪かったらしい。少し左に傾くし、先端に取り付けた大砲の重みに引っ張られて、前のめりになりやすい。でも、この程度なら、何とか飛べる!
「みんな! これから敵のコアを叩きに行きます! 出来れば援護を頼みます!」
『飛んだ! 飛んでいます! ジャンク・キャッスル、最後の希望を乗せて、敵のコアへと向かうー!』
 僕の駆る、いびつなエアバイクが、敵陣へと突っ込んでいく。
 敵のアタッカーの一人が、僕に向けて矢を放ってくる。だが、エアバイクが真っ直ぐ飛べないことが、逆に相手の狙いを定めづらくさせているらしかった。矢は、僕のすぐ横を通り過ぎていく。
『アンタの相手は俺だろ!』
 その隙を、クエンティンが見逃さなかった。彼の一撃が、敵のアタッカーにとどめを刺したようだった。
 そして、敵のコア付近までたどり着くと、僕は『大砲』をぶっ放した。
 凄まじい反動で、ただでさえ不安定なエアバイクが、大きく揺れる。
 放たれた砲弾は、コアを覆うブロックを吹き飛ばしたが、コアそのものを破壊するには至らなかった。
『リク! 敵が来る!』
 ユイが警告を放つのと、鋭い痛みが僕の体を貫くのは、ほぼ同時だった。弓矢が、当たったのだ。
 僕のヒットポイントはまだ残っていたが、体勢を崩したエアバイクから、僕は無残に振り落とされてしまった。
『ああっと! リク選手、ここで撃ち落とされたー! これで万事休すか!?』
 地面に叩きつけられ、なすすべなく空を見上げる。
『すまん、みんな!』
 僕の謝罪と、リョウガ先輩の咆哮が、ヘッドセットの中で重なった。
『まだだ!まだあきらめるな! コッチは俺が食い止める!』
 リスポーンしたリョウガ先輩が、敵のアタッカーを食い止めてくれている。
 そして——。
『任せて! これでトドメ!』
 僕を射った敵を、ずっと追ってきていたのだろう。ミミ先輩が、最後の武器である爆弾を手に、がら空きになった敵のコアへと、身を躍らせていた。
 彼女の手から放たれた爆弾が、美しい放物線を描き、コアの中心に吸い込まれていく——!