第18話 決勝戦 - 中編
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リョウガ先輩の雄叫びと共に、陸上戦艦『ヤマト』と名付けられた僕たちの城は、その巨体に見合う咆哮を上げて、敵陣へと進撃を開始した。
三門の『大砲』が一斉に火を噴くたび、『アヴァロン・ガーディアンズ』が築いた前線拠点が、いとも簡単に粉砕されていく。
「やった! いいぞ、リョウガ先輩!」
「このまま押し切れ!」
クエンティンとミミ先輩の、興奮した声がヘッドセットから響く。
『チーム「ジャンク・キャッスル」の陸上戦艦ヤマト、止まりません! アヴァロン・ガーディアンズの拠点を次々と粉砕していく!』
しかし、これだけの巨体と武装だ。重量ゆえに進む速度は、どうしても遅くなる。僕はその時間を無駄にはしなかった。『ヤマト』が敵の拠点を破壊するたび、僕はその後方に残り、まだ使えるパーツを回収していく。
『見てください! ジャンク・キャッスルのクラフター、リク選手! 破壊した敵の拠点からパーツを奪い、その場に砲台を設置し直しています! これは……進軍した道がそのまま自軍の支配領域となる、恐るべき戦術だ!』
勝利は、盤石かと思われた。
だけど、僕の心の中の、あの言いようのない不安は、まだ消えてはいなかった。最強の王者である彼らが、このまま無抵抗に、意気消沈するとは到底思えなかった。
敵のプレイヤーたちは、とっくにリスポーンしていた。だが、下手に出てきても各個撃破されるだけだと判断したのだろう。彼らは、フィールドの中央、自陣のコアを守る最後の境界線となっている拠点に立てこもり、僕たちが来るのを待ち構えているようだった。
そして、ついに『ヤマト』が、その最後の拠点への射程距離に近づいた頃。
王者の、本当の反撃が始まった。
『リク、高速接近物体を複数確認!』
ユイの警告と同時に、敵の拠点から、5、6機の小さな影が、一斉にこちらへ向かって飛び出してきた。
『ここでアヴァロン・ガーディアンズ、動いた! 自爆ドローンだ! 数は6機か!? 残っていた爆弾ダルを全て投入したか!? 圧倒的な攻撃力を誇るヤマトを止めるには、これしかないと判断したか! チャンピオン、ここで全てを賭けた総攻撃です!』
それは、自爆ドローンだった。『爆弾ダル』と『推進ファン』、『自動照準装置』で比較的簡単に作れる兵器。だが、その中核である『爆弾ダル』は数に限りがある貴重なパーツだ。それを、このタイミングで一気に投入してきたのだ。そして『爆弾ダル』の爆風は、ヤマトのような巨大で動きの遅い相手には、うってつけだった。
「ドローンの群れだ! 全員、迎撃して!」
僕の指示に、仲間たちが即座に反応する。
ヤマトに搭載されたクロスボウが自動で火を噴き、クエンティンとミミ先輩も、それぞれが弓を構え、蜂のように殺到してくる自爆ドローンを、次々と正確に撃ち落としていった。
だが、それは、敵の巧妙な目眩ましに過ぎなかった。
『……違う。リク、これは罠!』
ユイの、氷のように冷たい声が、僕の脳に直接響いた。
『上!』
『ジャンク・キャッスル、見事な連携で自爆ドローンを迎撃していく! これで凌いだか……いや、違う! 上だ! いつの間に!?』
ハッとして、僕がアバターの視点を上空へと向けた、その瞬間。
僕たちの頭上に、三つの影が、音もなく舞い降りてきていた。ランスロット、モードレッド、そして、もう一人のアタッカー。
彼らは、僕たちが自爆ドローンに足を止め、空への警戒が疎かになった、まさにその一瞬を、完璧なタイミングで突いてきたのだ。
そして、三つの爆弾が、寸分の狂いもなく、同時に、僕たちの『ヤマト』の頭上へと、投下された。
世界が、真っ白な光に包まれた。
凄まじい轟音と衝撃波。僕は、『ヤマト』のすぐそばにいたが、幸いギリギリで爆風の直撃は免れた。
もうもうと立ち上る黒煙が晴れた時、そこに、僕たちの誇る陸上戦艦の姿はなかった。あるのは、無残に散らばった、鉄の残骸だけだった。
よかった……。僕は、心の底から安堵していた。いつものようにコアを乗せていたら、あれで終わりだった。僕の胸騒ぎが、僕たちを救ってくれたんだ。
まだだ、諦めてたまるものか——。
あたりを見回すと、ミミ先輩、クエンティンも、少し離れた場所で、無事のようだった。
僕は、最も近くにある、先ほど自分が設置した元拠点——『大砲』と『バッテリー』を組み合わせた自動砲台——まで、アバターを全力で走らせた。そして、スキルで『板』を数枚貼り付け、そこを、敵の矢から身を守るための、即席の砦とした。
「クエンティン、ミミ先輩! 体制を立て直します! リョウガ先輩!リスポーンしたら、コアを守ってください!」
僕の言葉を聞いていたわけではないだろうが、その時、僕の視界の端で、敵のアタッカーの一人が、ウィングスーツで大きく滑空していくのが見えた。
その向かう先は——僕たちのスタート地点。
がら空きになっているはずの、僕たちのコアがある場所だった。
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三門の『大砲』が一斉に火を噴くたび、『アヴァロン・ガーディアンズ』が築いた前線拠点が、いとも簡単に粉砕されていく。
「やった! いいぞ、リョウガ先輩!」
「このまま押し切れ!」
クエンティンとミミ先輩の、興奮した声がヘッドセットから響く。
『チーム「ジャンク・キャッスル」の陸上戦艦ヤマト、止まりません! アヴァロン・ガーディアンズの拠点を次々と粉砕していく!』
しかし、これだけの巨体と武装だ。重量ゆえに進む速度は、どうしても遅くなる。僕はその時間を無駄にはしなかった。『ヤマト』が敵の拠点を破壊するたび、僕はその後方に残り、まだ使えるパーツを回収していく。
『見てください! ジャンク・キャッスルのクラフター、リク選手! 破壊した敵の拠点からパーツを奪い、その場に砲台を設置し直しています! これは……進軍した道がそのまま自軍の支配領域となる、恐るべき戦術だ!』
勝利は、盤石かと思われた。
だけど、僕の心の中の、あの言いようのない不安は、まだ消えてはいなかった。最強の王者である彼らが、このまま無抵抗に、意気消沈するとは到底思えなかった。
敵のプレイヤーたちは、とっくにリスポーンしていた。だが、下手に出てきても各個撃破されるだけだと判断したのだろう。彼らは、フィールドの中央、自陣のコアを守る最後の境界線となっている拠点に立てこもり、僕たちが来るのを待ち構えているようだった。
そして、ついに『ヤマト』が、その最後の拠点への射程距離に近づいた頃。
王者の、本当の反撃が始まった。
『リク、高速接近物体を複数確認!』
ユイの警告と同時に、敵の拠点から、5、6機の小さな影が、一斉にこちらへ向かって飛び出してきた。
『ここでアヴァロン・ガーディアンズ、動いた! 自爆ドローンだ! 数は6機か!? 残っていた爆弾ダルを全て投入したか!? 圧倒的な攻撃力を誇るヤマトを止めるには、これしかないと判断したか! チャンピオン、ここで全てを賭けた総攻撃です!』
それは、自爆ドローンだった。『爆弾ダル』と『推進ファン』、『自動照準装置』で比較的簡単に作れる兵器。だが、その中核である『爆弾ダル』は数に限りがある貴重なパーツだ。それを、このタイミングで一気に投入してきたのだ。そして『爆弾ダル』の爆風は、ヤマトのような巨大で動きの遅い相手には、うってつけだった。
「ドローンの群れだ! 全員、迎撃して!」
僕の指示に、仲間たちが即座に反応する。
ヤマトに搭載されたクロスボウが自動で火を噴き、クエンティンとミミ先輩も、それぞれが弓を構え、蜂のように殺到してくる自爆ドローンを、次々と正確に撃ち落としていった。
だが、それは、敵の巧妙な目眩ましに過ぎなかった。
『……違う。リク、これは罠!』
ユイの、氷のように冷たい声が、僕の脳に直接響いた。
『上!』
『ジャンク・キャッスル、見事な連携で自爆ドローンを迎撃していく! これで凌いだか……いや、違う! 上だ! いつの間に!?』
ハッとして、僕がアバターの視点を上空へと向けた、その瞬間。
僕たちの頭上に、三つの影が、音もなく舞い降りてきていた。ランスロット、モードレッド、そして、もう一人のアタッカー。
彼らは、僕たちが自爆ドローンに足を止め、空への警戒が疎かになった、まさにその一瞬を、完璧なタイミングで突いてきたのだ。
そして、三つの爆弾が、寸分の狂いもなく、同時に、僕たちの『ヤマト』の頭上へと、投下された。
世界が、真っ白な光に包まれた。
凄まじい轟音と衝撃波。僕は、『ヤマト』のすぐそばにいたが、幸いギリギリで爆風の直撃は免れた。
もうもうと立ち上る黒煙が晴れた時、そこに、僕たちの誇る陸上戦艦の姿はなかった。あるのは、無残に散らばった、鉄の残骸だけだった。
よかった……。僕は、心の底から安堵していた。いつものようにコアを乗せていたら、あれで終わりだった。僕の胸騒ぎが、僕たちを救ってくれたんだ。
まだだ、諦めてたまるものか——。
あたりを見回すと、ミミ先輩、クエンティンも、少し離れた場所で、無事のようだった。
僕は、最も近くにある、先ほど自分が設置した元拠点——『大砲』と『バッテリー』を組み合わせた自動砲台——まで、アバターを全力で走らせた。そして、スキルで『板』を数枚貼り付け、そこを、敵の矢から身を守るための、即席の砦とした。
「クエンティン、ミミ先輩! 体制を立て直します! リョウガ先輩!リスポーンしたら、コアを守ってください!」
僕の言葉を聞いていたわけではないだろうが、その時、僕の視界の端で、敵のアタッカーの一人が、ウィングスーツで大きく滑空していくのが見えた。
その向かう先は——僕たちのスタート地点。
がら空きになっているはずの、僕たちのコアがある場所だった。