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3-2

ー/ー



 世捨て人の大半は、夢捨て人である。失った夢を取り戻し方をアロナは知るはずもない。まだ若すぎるからだ。
「アロナさんに夢ってあるんですか」
 問われて、アロナは模索(もさく)した。子供の頃は何を考えていたか、今となっては遠い思い出のように思える。時代が戦争に移り変わってからというもの、世界が一変したかのように人生の歯車が乱れ始めたのだ。
「強いて言うなら」
 飾り気のない言葉だけ先に置いておき、更にアロナは自身の人生を深堀りする。夢らしき夢はどこにあるというのか。
 周囲の音すら聞こえなくなった途端、ふと十二歳の記憶が頭の中に入り込んできた。戦前、幼少期の頃。親友とお泊り会をして、忘れかけていた原初の(ちか)いを思い出したのだ。
「誰かの夢を叶えたい、それが私の夢です」
 ほんのり、一瞬だけ。アーリスは残念そうな顔をした。
 素晴らしい夢だとアロナは自負していた。他者の夢を全力で応援するなんて尊い。口には出せないが、アロナはどこかで自分を誇らしいと感じた。
「そうですか」
 淡泊(たんぱく)な返事と、小さなため息。アロナは自分が何を間違えたのか考えたが、思考の一歩進んだだけで袋小路(ふくろこうじ)に当たるのだった。
「ご、ごめんなさい。つまらない夢ですよね」
「違うんです」
 返事の間隔(かんかく)が間延びしてしまうアロナに対して、アーリスは鋭く短かった。
「良い夢を持った人ほど、優しい人ほど壊れてしまうのを私は知ってるんです」
 病院内が少しだけ慌ただしい様相を見せている。患者達が走っている音が聞こえるが、暴動が起きたわけではなさそうだった。何事かと確認しようとした矢先、アーリスはスマートフォンをサイドデスクから手に取った。
 網膜認証でセキュリティを解除して短く操作する。すると出てきたのは嘆息(たんそく)だ。アーリスは何も言わず、スマートフォンをアロナに傾けた。
 ウォール社という、スナルデンで大きな影響力を持つ情報誌が出した記事が書かれている。いわばネットニュースであるが、見出しにはこう記述があった。
――穏健派議長ラッジ氏暗殺
 フェイクニュースとの区別のため、ウォール社は国の審査を厳しく受けている。スナルデン国内で最も信用性の高い会社だ。更にこの記事は、ミラージ側に見られないように通信制限がかかっている。スナルデン国民だけが見られる記事となっていた。
「アロナさんは、ナーク地区を知っていますか」
 自らの無知を恥じながら、アロナは首を横に振った。
「別名、見捨てられた町です」
 ナーク地区と聞いたら分からない。しかし、見捨てられた町には聞き覚えがあった。
 スナルデンに甚大(じんだい)な被害をもたらした上に、敗戦の決定打になった非人道的な一手だ。
「ラッジさんは、ナーク地区の再建に精力的だったんです」
 見捨てられた町。ミラージにはもう一つの名称があった。それも「ゾンビ街」
 ナーク地区はスナルデン最高の貿易都市の一部であった。海に面しており、航路も安定している。戦時中はそこで他国から支援を受けていたのだが、当初こそ薄かった他国からの支援が手厚くなり無視できなくなってきたのだ。
 人類が手を出してはいけない、不可侵だったはずの領域。生物兵器。アロナはどういったウィルスが使われたのかは不明だが、一週間で町は再起不能の状態に(おちい)ったのは耳に入っていた。
 映像がないのは町は完全に閉鎖(へいさ)されており、市民の救助すら不可能な状態だからである。
「どうやって再建しようとしていたんです」
 簡単な疑問に、アーリスはこう答えた。
「それは分かりません。ただ……私は、この人を尊敬していました」
 彼女に言わせれば、ラッジは頭が良く道徳的であり、市民の声に忠実に答えていたという。
 ミラージからの刺客か、国内の反抗勢力によるものか、犯人はまだ不明のまま。自家用ジェット機の中で死亡が確認されていたから、犯人特定までは時間がかからないだろう。
 人のために尽くしてきた人間が、人によって殺害された。
 もはや、この世に正義や優しさは求められていないのだろうか。
「あの、アーリスさん」
 浮かない顔をする彼女の手を優しく包みながらアロナはこう言った。
「よかったら、今日はお夕食一緒に食べませんか」
 小振りでありながらも、温かさを感じる。アーリスは(ほころ)びを頬に作りながら言った。
「いいですよ。でも、あと五日は外出は禁止されているので食堂で良いですか」
「うん、大丈夫だよ」
 あっ、とアロナは慌てて口を押えた。なぜかは自分でも分からないが、敬語ではなく私語が出てきてしまったのだ。顔の温度が上がっていくのを確かに感じながら、アロナは矢継ぎ早に言い訳をした。
 言い訳を言う時だけはスラスラと口が回るものだ。
 さっきまでの微笑とは違う、生気の宿った笑みを見せたアーリスは片手でアロナの頭を撫でてみせた。
「大丈夫ですよ、アロナさん。私の方が年下ですし」
「それは、それは確かに」
 ほんの些細な失敗だったが、アロナとアーリスの距離を縮める結果になった。
「それじゃあ、このまま友達っぽく話してもいい……?」
 おそるおそる訊ねる。思えばアロナは、ずっと年上とばかり接してきた。敬語が身体の中に染み込んでいるから、突然それを無くすのは補助輪を取るような感覚で不安定なのだ。
「いいよ。アロナ先生」
 不意打ちだ。アーリスのブレない視線と、その口調。心拍数が上がっていくのを感じる。手が汗ばんできたからアーリスを包んでいた両手は解いたが、何とも言えない緊張感が心を掴んでいるようだった。アロナは事務所に忘れ物をしたと言い訳して、ベッドを立った。
 夕食までは三時間もある。それまでに帰ってくればいいだろう。落ち着かない心持ちのまま病室を出て、外に出ることにした。
 敬語を使っていたから忘れていた。彼女は同世代と年下限定の人見知りだったのである。

 病院内を探検するのは今日が初めてだった。まだ訪れて三日目で、別に知る必要はなかったが手持無沙汰(てもちぶさた)がアロナの背中を後押しする。
 一階は大きく精神、心療内科となっていて二階から四階までは共用病室。臨時で建てられた病院に病人の区別ができるほどの余裕はなかったらしく、病室に入っている患者はあべこべだった。精神科の患者もいれば内科、外科が混在している。
 四階は手術室も兼用されており、五階が院長室と内科外科の診察室となっていた。六階以降は工事中であり、そこから内科と外科が専用の階層を得られるという。
 あらかた探検は終わり病院敷地内の庭に出ると、その病院を上目で見つめている女性がいた。彼女は年上のような見た目をしていて、患者ではない一般の来院者のように見えるが、手首に来院者用の飾りつけがないからまだ受付は済んでいないのだろう。
「どうかしましたか」
 入ろうか入るまいか二の足を踏んでいる。アロナは気になって彼女に声をかけた。
 綺麗なバイオレットの髪と、冷静で大人びた凛々しい表情。腰に手を当てて、視線をアロナの方へ移した。
「いや、すまない。なんでもないんだ」
「そうは見えませんでした」
 出まかせの、その場凌ぎのデタラメでないとアロナは確信して言う。彼女は散歩をしてたまたま迷い込んできたわけではない、何らかの目的があって訪れたのだと。
「なら、またここに来る。そうしたら君が迎えてくれないか」
 去り際、彼女は軽い笑みを頬に作っていた。強くもないが、弱くもない。彼女が何者なのか、アロナは興味が湧き始めるのだった。

 アロナの様子を事務所から見ていたジェイクは、沈鬱な面持ちでこう言った。
「彼女を来週、追い出すのは難しいかと思います」
 十六時を回って診察を終了したジェイクは、仕事のまとめに取り掛かっていた。アロナが毎晩つけている日記を書くのと同じように、勤務の所感をデジタル画面に打っていた時だった。ガナルが現れ、アロナは一週間後別の町に追い出すように言ってきたのだ。
「突然、なぜその話が出てきたんです」
「上からの決定事項よ。逆らったら私の首が飛ぶからあんたに拒否権はない」
 彼女の決断に、ジェイクは一種の疑念のようなものを持っていた。
 上からの決定事項というのはガナルの定型文のようなものだが、拒否権がないとまで強く言うのは初めてだった。更に、ガナルの言葉には具体性が欠けている。いつもなら全てを指定してくるはずだ。
「あんなに良い軍医、初めて出会いましたよ。僕は」
 疑念を持ったところで、逆らう術はない。ガナルの決定は病院の決定。彼女の命令をきかないとはすなわち、この業界にしばらく居場所がなくなるのと同義だ。
 だからジェイクは言葉を続けるだけだった。
「素直で、綺麗な魂を放ってる。穢(けが)れを感じさせず、瑞々(みずみず)しい。あの子が国王だったら、絶対に戦争は起きなかったでしょうね」
「そうね。けどすぐに、その国は滅ぼされるでしょうけど」
 ガナルもしばらく、庭を散策しているアロナを見た後に我に返って「頼んだわよ」とだけ口にすると診察室を出て行くのだった。
 パソコンの電源を切り、ジェイクもまた診察室を出て行こうとする。だが、やはり疑念が頭から離れずにいた。
 診察室に残ったジェイクは監視カメラの電源を切り、棚に閉まってあったノートパソコンを取り出す。私用のものだ。九桁の暗証番号を入力すると、病院ではなく自身が開発した無線に接続した。


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 世捨て人の大半は、夢捨て人である。失った夢を取り戻し方をアロナは知るはずもない。まだ若すぎるからだ。
「アロナさんに夢ってあるんですか」
 問われて、アロナは模索《もさく》した。子供の頃は何を考えていたか、今となっては遠い思い出のように思える。時代が戦争に移り変わってからというもの、世界が一変したかのように人生の歯車が乱れ始めたのだ。
「強いて言うなら」
 飾り気のない言葉だけ先に置いておき、更にアロナは自身の人生を深堀りする。夢らしき夢はどこにあるというのか。
 周囲の音すら聞こえなくなった途端、ふと十二歳の記憶が頭の中に入り込んできた。戦前、幼少期の頃。親友とお泊り会をして、忘れかけていた原初の誓《ちか》いを思い出したのだ。
「誰かの夢を叶えたい、それが私の夢です」
 ほんのり、一瞬だけ。アーリスは残念そうな顔をした。
 素晴らしい夢だとアロナは自負していた。他者の夢を全力で応援するなんて尊い。口には出せないが、アロナはどこかで自分を誇らしいと感じた。
「そうですか」
 淡泊《たんぱく》な返事と、小さなため息。アロナは自分が何を間違えたのか考えたが、思考の一歩進んだだけで袋小路《ふくろこうじ》に当たるのだった。
「ご、ごめんなさい。つまらない夢ですよね」
「違うんです」
 返事の間隔《かんかく》が間延びしてしまうアロナに対して、アーリスは鋭く短かった。
「良い夢を持った人ほど、優しい人ほど壊れてしまうのを私は知ってるんです」
 病院内が少しだけ慌ただしい様相を見せている。患者達が走っている音が聞こえるが、暴動が起きたわけではなさそうだった。何事かと確認しようとした矢先、アーリスはスマートフォンをサイドデスクから手に取った。
 網膜認証でセキュリティを解除して短く操作する。すると出てきたのは嘆息《たんそく》だ。アーリスは何も言わず、スマートフォンをアロナに傾けた。
 ウォール社という、スナルデンで大きな影響力を持つ情報誌が出した記事が書かれている。いわばネットニュースであるが、見出しにはこう記述があった。
――穏健派議長ラッジ氏暗殺
 フェイクニュースとの区別のため、ウォール社は国の審査を厳しく受けている。スナルデン国内で最も信用性の高い会社だ。更にこの記事は、ミラージ側に見られないように通信制限がかかっている。スナルデン国民だけが見られる記事となっていた。
「アロナさんは、ナーク地区を知っていますか」
 自らの無知を恥じながら、アロナは首を横に振った。
「別名、見捨てられた町です」
 ナーク地区と聞いたら分からない。しかし、見捨てられた町には聞き覚えがあった。
 スナルデンに甚大《じんだい》な被害をもたらした上に、敗戦の決定打になった非人道的な一手だ。
「ラッジさんは、ナーク地区の再建に精力的だったんです」
 見捨てられた町。ミラージにはもう一つの名称があった。それも「ゾンビ街」
 ナーク地区はスナルデン最高の貿易都市の一部であった。海に面しており、航路も安定している。戦時中はそこで他国から支援を受けていたのだが、当初こそ薄かった他国からの支援が手厚くなり無視できなくなってきたのだ。
 人類が手を出してはいけない、不可侵だったはずの領域。生物兵器。アロナはどういったウィルスが使われたのかは不明だが、一週間で町は再起不能の状態に陥《おちい》ったのは耳に入っていた。
 映像がないのは町は完全に閉鎖《へいさ》されており、市民の救助すら不可能な状態だからである。
「どうやって再建しようとしていたんです」
 簡単な疑問に、アーリスはこう答えた。
「それは分かりません。ただ……私は、この人を尊敬していました」
 彼女に言わせれば、ラッジは頭が良く道徳的であり、市民の声に忠実に答えていたという。
 ミラージからの刺客か、国内の反抗勢力によるものか、犯人はまだ不明のまま。自家用ジェット機の中で死亡が確認されていたから、犯人特定までは時間がかからないだろう。
 人のために尽くしてきた人間が、人によって殺害された。
 もはや、この世に正義や優しさは求められていないのだろうか。
「あの、アーリスさん」
 浮かない顔をする彼女の手を優しく包みながらアロナはこう言った。
「よかったら、今日はお夕食一緒に食べませんか」
 小振りでありながらも、温かさを感じる。アーリスは綻《ほころ》びを頬に作りながら言った。
「いいですよ。でも、あと五日は外出は禁止されているので食堂で良いですか」
「うん、大丈夫だよ」
 あっ、とアロナは慌てて口を押えた。なぜかは自分でも分からないが、敬語ではなく私語が出てきてしまったのだ。顔の温度が上がっていくのを確かに感じながら、アロナは矢継ぎ早に言い訳をした。
 言い訳を言う時だけはスラスラと口が回るものだ。
 さっきまでの微笑とは違う、生気の宿った笑みを見せたアーリスは片手でアロナの頭を撫でてみせた。
「大丈夫ですよ、アロナさん。私の方が年下ですし」
「それは、それは確かに」
 ほんの些細な失敗だったが、アロナとアーリスの距離を縮める結果になった。
「それじゃあ、このまま友達っぽく話してもいい……?」
 おそるおそる訊ねる。思えばアロナは、ずっと年上とばかり接してきた。敬語が身体の中に染み込んでいるから、突然それを無くすのは補助輪を取るような感覚で不安定なのだ。
「いいよ。アロナ先生」
 不意打ちだ。アーリスのブレない視線と、その口調。心拍数が上がっていくのを感じる。手が汗ばんできたからアーリスを包んでいた両手は解いたが、何とも言えない緊張感が心を掴んでいるようだった。アロナは事務所に忘れ物をしたと言い訳して、ベッドを立った。
 夕食までは三時間もある。それまでに帰ってくればいいだろう。落ち着かない心持ちのまま病室を出て、外に出ることにした。
 敬語を使っていたから忘れていた。彼女は同世代と年下限定の人見知りだったのである。
 病院内を探検するのは今日が初めてだった。まだ訪れて三日目で、別に知る必要はなかったが手持無沙汰《てもちぶさた》がアロナの背中を後押しする。
 一階は大きく精神、心療内科となっていて二階から四階までは共用病室。臨時で建てられた病院に病人の区別ができるほどの余裕はなかったらしく、病室に入っている患者はあべこべだった。精神科の患者もいれば内科、外科が混在している。
 四階は手術室も兼用されており、五階が院長室と内科外科の診察室となっていた。六階以降は工事中であり、そこから内科と外科が専用の階層を得られるという。
 あらかた探検は終わり病院敷地内の庭に出ると、その病院を上目で見つめている女性がいた。彼女は年上のような見た目をしていて、患者ではない一般の来院者のように見えるが、手首に来院者用の飾りつけがないからまだ受付は済んでいないのだろう。
「どうかしましたか」
 入ろうか入るまいか二の足を踏んでいる。アロナは気になって彼女に声をかけた。
 綺麗なバイオレットの髪と、冷静で大人びた凛々しい表情。腰に手を当てて、視線をアロナの方へ移した。
「いや、すまない。なんでもないんだ」
「そうは見えませんでした」
 出まかせの、その場凌ぎのデタラメでないとアロナは確信して言う。彼女は散歩をしてたまたま迷い込んできたわけではない、何らかの目的があって訪れたのだと。
「なら、またここに来る。そうしたら君が迎えてくれないか」
 去り際、彼女は軽い笑みを頬に作っていた。強くもないが、弱くもない。彼女が何者なのか、アロナは興味が湧き始めるのだった。
 アロナの様子を事務所から見ていたジェイクは、沈鬱な面持ちでこう言った。
「彼女を来週、追い出すのは難しいかと思います」
 十六時を回って診察を終了したジェイクは、仕事のまとめに取り掛かっていた。アロナが毎晩つけている日記を書くのと同じように、勤務の所感をデジタル画面に打っていた時だった。ガナルが現れ、アロナは一週間後別の町に追い出すように言ってきたのだ。
「突然、なぜその話が出てきたんです」
「上からの決定事項よ。逆らったら私の首が飛ぶからあんたに拒否権はない」
 彼女の決断に、ジェイクは一種の疑念のようなものを持っていた。
 上からの決定事項というのはガナルの定型文のようなものだが、拒否権がないとまで強く言うのは初めてだった。更に、ガナルの言葉には具体性が欠けている。いつもなら全てを指定してくるはずだ。
「あんなに良い軍医、初めて出会いましたよ。僕は」
 疑念を持ったところで、逆らう術はない。ガナルの決定は病院の決定。彼女の命令をきかないとはすなわち、この業界にしばらく居場所がなくなるのと同義だ。
 だからジェイクは言葉を続けるだけだった。
「素直で、綺麗な魂を放ってる。穢《けが》れを感じさせず、瑞々《みずみず》しい。あの子が国王だったら、絶対に戦争は起きなかったでしょうね」
「そうね。けどすぐに、その国は滅ぼされるでしょうけど」
 ガナルもしばらく、庭を散策しているアロナを見た後に我に返って「頼んだわよ」とだけ口にすると診察室を出て行くのだった。
 パソコンの電源を切り、ジェイクもまた診察室を出て行こうとする。だが、やはり疑念が頭から離れずにいた。
 診察室に残ったジェイクは監視カメラの電源を切り、棚に閉まってあったノートパソコンを取り出す。私用のものだ。九桁の暗証番号を入力すると、病院ではなく自身が開発した無線に接続した。