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第152話 仲間の想い 友の一言

ー/ー



 パン!

 教室中に響き渡ったのは、渇いた音だった。
 俺を含めみんなが椎名の行動に驚いた。
 突然山路の前に立ってビンタをしたのだった。

「まだ……まだ終わってないわ」

「椎名……」

「山路。あなたの本当の気持ち、ようやく分かったわ。それに…………悔しいけど、それを言えなかった気持ちも分からなくはないわ」

 困惑と驚きが入り混じる空気の中で、彼女は話し出す。
 山路を睨み、声を荒げる。

「でも! ふざけないで! 何が不純な動機よ! 何が仲間として去りたかったよ! 何がみんなと肩を並べられないよ! そんなの! ただあなたが胸を張れてないだけじゃない! そんな気持ちは誰だって持っているものよ! それでも! それでもここに居るじゃない! 一緒に部活してるじゃない!」

 高ぶる感情そのまま叫ぶ。

「あなたは私に立派な志があるって言ってたけどそんなの勝手だわ! 自分勝手に他人を判断してる! 何が立派よ! 私は私のしたいことがあるだけよ! それが不純かどうかってどうやって決めるの!? 誰が決めたの!? 誰に言われたの!?」

 思いの丈を目一杯に吠える。

「仲間として去りたかった!? 冗談じゃない! それぐらいで仲間じゃなくなるわけないでしょ! 一年も一緒にいて、そんなことも分からないわけ!? 舐め腐るのもいい加減にしなさい!」

 抱いた心情を言葉に乗せて放つ。

「みんなと肩を並べられない!? 気取ってんじゃないわよ! 私たちは始めからばらばらじゃない! みんな違ったこと考えて! それでも一緒に劇をするだけでしょ! ばらばらだけど同じ学年で! 同じ場所にいるじゃない!」

 止まらずに(たけ)り立つ。

「山路! あなたの青春が轟先輩への恋心っていうなら! このまま終わるっていうなら私はあなたが辞めることを止めないわ!」

 ありったけの想いを飛ばす。

「でも! でももし本当にしたいことの一つでもあるなら言ってみなさい! 自分の願いを! 渇望を! どうしたいのか言ってみなさい!」

 全てを吐き出すと、椎名は肩で呼吸しながら山路を見ていた。
 俺は、俺たちは山路の言葉を待った。
 ほんの少しの沈黙。けど永遠に感じるほどの時間。
 たぶん、次の一言で全てが決まるだろう。
 そんな予感を抱きながら、俺は拳を握る。
 そして。

「……僕は……僕だって本当は轟先輩に告白したかった! みんなと一緒に居たかったさ!」

 山路が言ったのは、誤魔化して、蓋をして、閉じ込めたはずの想いだった。
 開けてみればそれはとてもシンプルなことで、辿り着きさえすればあっけないことなのかもしれない。
 それでも、山路は山路なりに悩んで、苦しんで、傷ついた。
 シンプルだからって、軽いわけでも(やさ)しいわけでもない。
 重くて(かた)いそれがずっと心の奥にあったんだ。その吐露は言葉以上の想いがある。
 気づくと、椎名が俺の方に視線を送っていた。
 後は任せるわ。そう言われた気がした。
 なら俺は友として、山路の想いに答えよう。

「山路」

 名前を呼ぶ。目が合うと山路の瞳の奥には不安が宿っていた。
 俺も不安で一杯だ。
 ここまでの道程が正しかったのか分からない。
 どこまでも遠回りをしていたのかもしれない。
 そこまでの想いには合ってないかもしれない。
 でも俺は言う。
 これからも一緒にいたいから。同じ劇をしたいから。

「叶えようぜ、その願い」

 山路は静かに涙した。
 きっと俺の思った通りに伝わったのだろう。
 そう解釈する。だって人は本音を言えない生き物だから。
 思えば、山路と心を理解し合うのはこれが初めてなのかもしれない。
 一年一緒にいて、初めてのこと。
 それはきっとこれからも増えていくだろう。
 俺はそう信じている。

「ありがとう……」

 呟く山路の声はかすれていた。ただその想いは鮮明に俺の胸に届いた。
 そして視界の端ではみんながそれぞれ喜ぶ。




 ――こうして、話し合いは幕を閉じた。



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 パン!
 教室中に響き渡ったのは、渇いた音だった。
 俺を含めみんなが椎名の行動に驚いた。
 突然山路の前に立ってビンタをしたのだった。
「まだ……まだ終わってないわ」
「椎名……」
「山路。あなたの本当の気持ち、ようやく分かったわ。それに…………悔しいけど、それを言えなかった気持ちも分からなくはないわ」
 困惑と驚きが入り混じる空気の中で、彼女は話し出す。
 山路を睨み、声を荒げる。
「でも! ふざけないで! 何が不純な動機よ! 何が仲間として去りたかったよ! 何がみんなと肩を並べられないよ! そんなの! ただあなたが胸を張れてないだけじゃない! そんな気持ちは誰だって持っているものよ! それでも! それでもここに居るじゃない! 一緒に部活してるじゃない!」
 高ぶる感情そのまま叫ぶ。
「あなたは私に立派な志があるって言ってたけどそんなの勝手だわ! 自分勝手に他人を判断してる! 何が立派よ! 私は私のしたいことがあるだけよ! それが不純かどうかってどうやって決めるの!? 誰が決めたの!? 誰に言われたの!?」
 思いの丈を目一杯に吠える。
「仲間として去りたかった!? 冗談じゃない! それぐらいで仲間じゃなくなるわけないでしょ! 一年も一緒にいて、そんなことも分からないわけ!? 舐め腐るのもいい加減にしなさい!」
 抱いた心情を言葉に乗せて放つ。
「みんなと肩を並べられない!? 気取ってんじゃないわよ! 私たちは始めからばらばらじゃない! みんな違ったこと考えて! それでも一緒に劇をするだけでしょ! ばらばらだけど同じ学年で! 同じ場所にいるじゃない!」
 止まらずに哮《たけ》り立つ。
「山路! あなたの青春が轟先輩への恋心っていうなら! このまま終わるっていうなら私はあなたが辞めることを止めないわ!」
 ありったけの想いを飛ばす。
「でも! でももし本当にしたいことの一つでもあるなら言ってみなさい! 自分の願いを! 渇望を! どうしたいのか言ってみなさい!」
 全てを吐き出すと、椎名は肩で呼吸しながら山路を見ていた。
 俺は、俺たちは山路の言葉を待った。
 ほんの少しの沈黙。けど永遠に感じるほどの時間。
 たぶん、次の一言で全てが決まるだろう。
 そんな予感を抱きながら、俺は拳を握る。
 そして。
「……僕は……僕だって本当は轟先輩に告白したかった! みんなと一緒に居たかったさ!」
 山路が言ったのは、誤魔化して、蓋をして、閉じ込めたはずの想いだった。
 開けてみればそれはとてもシンプルなことで、辿り着きさえすればあっけないことなのかもしれない。
 それでも、山路は山路なりに悩んで、苦しんで、傷ついた。
 シンプルだからって、軽いわけでも易《やさ》しいわけでもない。
 重くて難《かた》いそれがずっと心の奥にあったんだ。その吐露は言葉以上の想いがある。
 気づくと、椎名が俺の方に視線を送っていた。
 後は任せるわ。そう言われた気がした。
 なら俺は友として、山路の想いに答えよう。
「山路」
 名前を呼ぶ。目が合うと山路の瞳の奥には不安が宿っていた。
 俺も不安で一杯だ。
 ここまでの道程が正しかったのか分からない。
 どこまでも遠回りをしていたのかもしれない。
 そこまでの想いには合ってないかもしれない。
 でも俺は言う。
 これからも一緒にいたいから。同じ劇をしたいから。
「叶えようぜ、その願い」
 山路は静かに涙した。
 きっと俺の思った通りに伝わったのだろう。
 そう解釈する。だって人は本音を言えない生き物だから。
 思えば、山路と心を理解し合うのはこれが初めてなのかもしれない。
 一年一緒にいて、初めてのこと。
 それはきっとこれからも増えていくだろう。
 俺はそう信じている。
「ありがとう……」
 呟く山路の声はかすれていた。ただその想いは鮮明に俺の胸に届いた。
 そして視界の端ではみんながそれぞれ喜ぶ。
 ――こうして、話し合いは幕を閉じた。