表示設定
表示設定
目次 目次




第2節 邂逅/ §2

ー/ー



   ―セクション2―

 アイビー救出の一報を入れてから、再度屋上へ向かうため、エレベーターホールへ向かった大杜は、

『室長!』

 突然インカムのイヤホンからの大音量に、うっと呻いた。

「副室長、音量! 鼓膜破れそう!」

 大杜が文句を言うと、

『すみません! それより、オリジナル――秦星矢と名乗ってるそうですが、その星矢が、出入り口に向かっているそうです。遭遇しても捕まえないで下さい‼︎』

「は……秦⁉︎ 結婚……え、いやまさか。え、捕まえない⁉︎」

 伝えられた情報が多過ぎて、理解が追いつかない。

「捕まえなきゃいけないんじゃ……」

『彼が持ってる武器は危険です! 弓佳さんを保護したパトカーが秦日彩に襲われました。金属も簡単に切り裂くような特殊な武器が使用されたようで、それを今は彼が持っているそうです!』

「ええ⁉︎ 特殊な武器⁉︎」

 大杜は立ち止まった。

 未成年であるため、特務員と言う肩書きはあっても、拳銃などの武器は扱えない。大杜の持っている武器は警棒だけだ。

『弓佳さんの頭部もその武器で切断され、持ち去られています。――とにかく、本部から応援が向かっていますから、あなたはどこかで身を隠して待機して下さい』

「身を隠す……」

 情けないなと思うが、実際自分にできることなどないだろう。

「わかりました」

 大杜が答えて前を向く――と、正面のエレベーターが開いた。

「あ……」

 大杜は呟いた。

「遭遇……しました……」

『大杜、逃げるんだ‼︎』

 再び大きな音量が響き、大杜は強制的に電源をオフにした。

(どのみち、遅い……)

 こうなったら、応援が来るまで、この場に繋ぎ止めるしかない。

「佐々城君?」

 エレベーターからは日彩も降りてきて、大杜の出立ちを見て驚いている。屋上でも会ったのだが、一瞬すれ違った程度なので、気付いていなかったようだ。

「ふぅん。戻ってきたのか。――ちょうどいい」

 星矢は意地悪そうな笑みを浮かべた。しかしそれは悪人というより、悪ふざけが過ぎる子供のような笑みだ。

「さっきは日彩待ちで、お前らに付き合ってやってたが、もう遠慮は必要ないな」

 星矢は、ボストンバッグを掲げてみせる。

 赤い液体が滲み出ているが、分析したときにわかった彼女の生身の割合を思えば、それは疑似血液だろう。

 とは言っても、バッグから赤い液体が流れているのは良い気がしない。

「……弓佳さんを返してもらう」

「お前らが持っていても、こいつの価値は活かせない。俺達の側にいてこそだぜ?」

「持つ? 彼女は道具じゃない」

「いいや、道具さ。意思なんてほとんどないんだからな」

「……違う」

 病室に迎えに行った時、彼女は絵を描いていた。どこで見たのかわからないが、有名な景色だった。彼女はあの風景を美しいと感じ感動したから描いたのだろうし、頭を撫でられた時は嬉しそうだった。

「人工的に作られた部分が多いとしても、彼女はちゃんと意思を持ってる」

「それはお前の希望でしかない」

 星矢は嘲笑った。

「あの女――母親という肩書きのあいつも馬鹿だ。こんなただの脳みそに、娘だなんだと愛情を傾けて、金も社会的地位も失ってな」

「彼女のしたことは褒められないけど、でも、娘を助けたかった気持ちを愚弄することは許さないよ」

「止めるか?」

「捕まえるよ」

「ふぅん」

 星矢は口元を釣り上げると、日彩にボストンバッグを渡した。

「奴と先に行っとけ」

 そう伝えて、ビルの裏口を指差す。

 日彩は無言で頷くと、裏口に駆け出した。

 星矢は竹刀袋を開け、中身を取り出して構え、日彩を追えないように威嚇する。

 大杜も警棒を取り出すと、インカムをオンにした。

「秦さんが裏口から逃げた。彼女を保護して。彼は俺を仕留める気みたいだから――応戦する」

 大杜は囁くように連絡を入れると、またすぐに通信を切って、インカム本体とマイクイヤホンを投げ捨てた。

「応戦? お前が? 一方的にやられるだけだろ。――日彩を保護? あれはもう犯罪者だ。確保の間違いだな」

「善良な人間をたぶらかしたことも許さないよ。彼女も道具にはさせない」

「たぶらかしてはないなぁ。日彩には素質があったんだ。あと俺はあいつを道具にはしていない。人生を元に歩むパートナーとして、仲間に迎えたんだ。相思相愛だぞ。羨ましいか?」

 星矢がくくっと笑う。

「……やっぱり君は研矢とは別物だ」

「?」

「研矢は、気の強い女の子がタイプだ。好みが全然違う。――君たちは、オリジナルとクローンじゃない。まったく別の存在だ」

「ちょっとイラッとしたな」

 星矢は言葉ほどにイラッとしてなさそうに、笑う。

「こんな場だが一応言っとこうか」

「何を?」

「合格おめでとう」

「……っ」
 大杜は動揺した。

 門前で怖気付く自分を勇気付けてくれたのは彼のほうだ。

「合格したら名乗るんだったな? ――友達になるんじゃなかったか?」

「そうだよ。なりたかった。君には感謝してる。君とも、友達になりたかった。――お節介なところは、そっくりだ」

「そうか」

「でももう名乗ることはしない。友達にはなれないみたいだから。まぁ、もう俺のこと知ってるだろうし」

「ああ。あのときの頼りない奴が、まさか高犯対のトップだなんてな。面白いもんだ。――止めてみろよ、俺を」

「言われなくても」

 大杜は警棒を中段に構えた。

 剣道の全国覇者に敵うわけがない。しかし、動揺は見せられない。せめて冷静なふりをしなければ。

「まぁでも、悪いが真剣勝負はできない。優位にいかせてもらう」

 星矢は竹刀を構えてから、軽く振り、壁を擦った。

 激しいスパーク音がして、周辺が焦げた。

 大杜は息を呑んだ。紀伊国から聞いた特殊な武器というわけだ。

「普通の竹刀じゃない。俺のお手製だ。かすっても致命傷。あと最強レベルのスタンガンと同じぐらいの威力もある」

 竹刀としての攻撃に、電気ショック。

 ただの竹刀であっても勝てないだろうが、それが殺傷能力のある凶器であるなら、警棒ごときで太刀打ちできない。

「なるべく殺さないようにとは思うが、この武器じゃ難しいな。死にたくなければ、ちゃんと逃げろよ?」

 星矢が笑いながら言い、間合いを詰めた。

(踏み込みが早すぎる!)

 俊敏性には自信がある。だが距離を取るのが精一杯で、何一つ反撃出来そうにない。

 かつかつを逃げ惑う。

 逃げ場を無くした大杜は、咄嗟に壁を走るように星矢の突きをかわし、反対側へ回った。

「すごいな。猿かよ」

「猿で結構だよ」

 自分が体格に恵まれてないことはわかっている。だから力で相手を制圧することは他の者に任せ、自身は俊敏性を高めて、機動力向上に努めてきた。

 研矢に、家と最寄駅の間は走っていると言ったが、それも実はただ走っているわけではく、パルクールのような動きで走っていた。少しでも身のこなしを高めるために。
 
 とはいえ、そういった動きができるのは体調が万全の時だ。こんな満身創痍で、何度もできる技術ではなかった。

(とにかく、応援……応援が来るまで……生き延びろ。時間を稼げ。あと武器を離させないと……)

 大杜は、再度警棒を構える。

「無謀だな。どう考えても勝てないだろ」

 星矢は呆れる。

「殺さなくてもいいかと思ったが、中途半端な強さはタチが悪い。――これ以上時間をかけられないんでな」

 星矢は目を細め、大杜の胴体を見定めて竹刀を振り被った。

 激しいスパーク音と空中放電が走った。

「……せっかく新しいボディになったばかりなのに……また身体が半分近く無くなっちゃった」

「白兵戦は無理でしょう。冗談はよして下さいよ、ボス」

 竹刀を受けて身体半分を失ったカスミと、大杜を守るように抱き抱えたブルースターが口々に言う。

「カスミ、ブルースター! ――カスミ、大丈夫⁉︎ 無茶しないでよ!」

「無茶はあなたでしょ。こんなの撤退案件だよ」

 カスミは大杜を抱えているブルースターの前に立った。

「凶悪な人相の研矢君だ。研矢君とおんなじ顔だなんてなんか、イラッとするよね」

「ああ? カンに触るロボットだな。奴が俺に似てんだよ」

「カスミ、挑発するな! お前はそれ以上は無理だ。お前こそ撤退するんだ!」

「まぁそうだよね。撤退するね、あなたと。ブルースター、後を頼むよ」

「人数が増えても大したことなさそうなメンツだな」

 オリジナルが鼻で笑う。

「なら私が相手だ」

 入り口から、大杜の部下のひとりが姿を現した。

「アキレア!」

 大杜が名前を呼ぶ。

 アキレアは少し表情を緩めて大杜を見やった。

「アキレア、気をつけて。奴の武器は竹刀じゃない」

「上層部より、特異手刀(スペシャルナイフ)の使用が許可されました」

 大杜が頷く。

(これで互角だ)

 アキレアは、両手を刀のように使うことができる。その切れ味は、トラックを一刀両断出来るほどだ。ボディは皆と同じものだが、高速の動きで熱や振動などを起こす。白兵戦でアイビーと双璧をなすメンバーだった。

 ただ危険な能力なので、普段は使えない。使うには、大杜の言葉が必要だった。

「アキレア、『アンロック』。彼を殺さずに、捕らえるんだ」

「ラジャ」



スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 第2節 邂逅/ §3


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



   ―セクション2―
 アイビー救出の一報を入れてから、再度屋上へ向かうため、エレベーターホールへ向かった大杜は、
『室長!』
 突然インカムのイヤホンからの大音量に、うっと呻いた。
「副室長、音量! 鼓膜破れそう!」
 大杜が文句を言うと、
『すみません! それより、オリジナル――秦星矢と名乗ってるそうですが、その星矢が、出入り口に向かっているそうです。遭遇しても捕まえないで下さい‼︎』
「は……秦⁉︎ 結婚……え、いやまさか。え、捕まえない⁉︎」
 伝えられた情報が多過ぎて、理解が追いつかない。
「捕まえなきゃいけないんじゃ……」
『彼が持ってる武器は危険です! 弓佳さんを保護したパトカーが秦日彩に襲われました。金属も簡単に切り裂くような特殊な武器が使用されたようで、それを今は彼が持っているそうです!』
「ええ⁉︎ 特殊な武器⁉︎」
 大杜は立ち止まった。
 未成年であるため、特務員と言う肩書きはあっても、拳銃などの武器は扱えない。大杜の持っている武器は警棒だけだ。
『弓佳さんの頭部もその武器で切断され、持ち去られています。――とにかく、本部から応援が向かっていますから、あなたはどこかで身を隠して待機して下さい』
「身を隠す……」
 情けないなと思うが、実際自分にできることなどないだろう。
「わかりました」
 大杜が答えて前を向く――と、正面のエレベーターが開いた。
「あ……」
 大杜は呟いた。
「遭遇……しました……」
『大杜、逃げるんだ‼︎』
 再び大きな音量が響き、大杜は強制的に電源をオフにした。
(どのみち、遅い……)
 こうなったら、応援が来るまで、この場に繋ぎ止めるしかない。
「佐々城君?」
 エレベーターからは日彩も降りてきて、大杜の出立ちを見て驚いている。屋上でも会ったのだが、一瞬すれ違った程度なので、気付いていなかったようだ。
「ふぅん。戻ってきたのか。――ちょうどいい」
 星矢は意地悪そうな笑みを浮かべた。しかしそれは悪人というより、悪ふざけが過ぎる子供のような笑みだ。
「さっきは日彩待ちで、お前らに付き合ってやってたが、もう遠慮は必要ないな」
 星矢は、ボストンバッグを掲げてみせる。
 赤い液体が滲み出ているが、分析したときにわかった彼女の生身の割合を思えば、それは疑似血液だろう。
 とは言っても、バッグから赤い液体が流れているのは良い気がしない。
「……弓佳さんを返してもらう」
「お前らが持っていても、こいつの価値は活かせない。俺達の側にいてこそだぜ?」
「持つ? 彼女は道具じゃない」
「いいや、道具さ。意思なんてほとんどないんだからな」
「……違う」
 病室に迎えに行った時、彼女は絵を描いていた。どこで見たのかわからないが、有名な景色だった。彼女はあの風景を美しいと感じ感動したから描いたのだろうし、頭を撫でられた時は嬉しそうだった。
「人工的に作られた部分が多いとしても、彼女はちゃんと意思を持ってる」
「それはお前の希望でしかない」
 星矢は嘲笑った。
「あの女――母親という肩書きのあいつも馬鹿だ。こんなただの脳みそに、娘だなんだと愛情を傾けて、金も社会的地位も失ってな」
「彼女のしたことは褒められないけど、でも、娘を助けたかった気持ちを愚弄することは許さないよ」
「止めるか?」
「捕まえるよ」
「ふぅん」
 星矢は口元を釣り上げると、日彩にボストンバッグを渡した。
「奴と先に行っとけ」
 そう伝えて、ビルの裏口を指差す。
 日彩は無言で頷くと、裏口に駆け出した。
 星矢は竹刀袋を開け、中身を取り出して構え、日彩を追えないように威嚇する。
 大杜も警棒を取り出すと、インカムをオンにした。
「秦さんが裏口から逃げた。彼女を保護して。彼は俺を仕留める気みたいだから――応戦する」
 大杜は囁くように連絡を入れると、またすぐに通信を切って、インカム本体とマイクイヤホンを投げ捨てた。
「応戦? お前が? 一方的にやられるだけだろ。――日彩を保護? あれはもう犯罪者だ。確保の間違いだな」
「善良な人間をたぶらかしたことも許さないよ。彼女も道具にはさせない」
「たぶらかしてはないなぁ。日彩には素質があったんだ。あと俺はあいつを道具にはしていない。人生を元に歩むパートナーとして、仲間に迎えたんだ。相思相愛だぞ。羨ましいか?」
 星矢がくくっと笑う。
「……やっぱり君は研矢とは別物だ」
「?」
「研矢は、気の強い女の子がタイプだ。好みが全然違う。――君たちは、オリジナルとクローンじゃない。まったく別の存在だ」
「ちょっとイラッとしたな」
 星矢は言葉ほどにイラッとしてなさそうに、笑う。
「こんな場だが一応言っとこうか」
「何を?」
「合格おめでとう」
「……っ」
 大杜は動揺した。
 門前で怖気付く自分を勇気付けてくれたのは彼のほうだ。
「合格したら名乗るんだったな? ――友達になるんじゃなかったか?」
「そうだよ。なりたかった。君には感謝してる。君とも、友達になりたかった。――お節介なところは、そっくりだ」
「そうか」
「でももう名乗ることはしない。友達にはなれないみたいだから。まぁ、もう俺のこと知ってるだろうし」
「ああ。あのときの頼りない奴が、まさか高犯対のトップだなんてな。面白いもんだ。――止めてみろよ、俺を」
「言われなくても」
 大杜は警棒を中段に構えた。
 剣道の全国覇者に敵うわけがない。しかし、動揺は見せられない。せめて冷静なふりをしなければ。
「まぁでも、悪いが真剣勝負はできない。優位にいかせてもらう」
 星矢は竹刀を構えてから、軽く振り、壁を擦った。
 激しいスパーク音がして、周辺が焦げた。
 大杜は息を呑んだ。紀伊国から聞いた特殊な武器というわけだ。
「普通の竹刀じゃない。俺のお手製だ。かすっても致命傷。あと最強レベルのスタンガンと同じぐらいの威力もある」
 竹刀としての攻撃に、電気ショック。
 ただの竹刀であっても勝てないだろうが、それが殺傷能力のある凶器であるなら、警棒ごときで太刀打ちできない。
「なるべく殺さないようにとは思うが、この武器じゃ難しいな。死にたくなければ、ちゃんと逃げろよ?」
 星矢が笑いながら言い、間合いを詰めた。
(踏み込みが早すぎる!)
 俊敏性には自信がある。だが距離を取るのが精一杯で、何一つ反撃出来そうにない。
 かつかつを逃げ惑う。
 逃げ場を無くした大杜は、咄嗟に壁を走るように星矢の突きをかわし、反対側へ回った。
「すごいな。猿かよ」
「猿で結構だよ」
 自分が体格に恵まれてないことはわかっている。だから力で相手を制圧することは他の者に任せ、自身は俊敏性を高めて、機動力向上に努めてきた。
 研矢に、家と最寄駅の間は走っていると言ったが、それも実はただ走っているわけではく、パルクールのような動きで走っていた。少しでも身のこなしを高めるために。 
 とはいえ、そういった動きができるのは体調が万全の時だ。こんな満身創痍で、何度もできる技術ではなかった。
(とにかく、応援……応援が来るまで……生き延びろ。時間を稼げ。あと武器を離させないと……)
 大杜は、再度警棒を構える。
「無謀だな。どう考えても勝てないだろ」
 星矢は呆れる。
「殺さなくてもいいかと思ったが、中途半端な強さはタチが悪い。――これ以上時間をかけられないんでな」
 星矢は目を細め、大杜の胴体を見定めて竹刀を振り被った。
 激しいスパーク音と空中放電が走った。
「……せっかく新しいボディになったばかりなのに……また身体が半分近く無くなっちゃった」
「白兵戦は無理でしょう。冗談はよして下さいよ、ボス」
 竹刀を受けて身体半分を失ったカスミと、大杜を守るように抱き抱えたブルースターが口々に言う。
「カスミ、ブルースター! ――カスミ、大丈夫⁉︎ 無茶しないでよ!」
「無茶はあなたでしょ。こんなの撤退案件だよ」
 カスミは大杜を抱えているブルースターの前に立った。
「凶悪な人相の研矢君だ。研矢君とおんなじ顔だなんてなんか、イラッとするよね」
「ああ? カンに触るロボットだな。奴が俺に似てんだよ」
「カスミ、挑発するな! お前はそれ以上は無理だ。お前こそ撤退するんだ!」
「まぁそうだよね。撤退するね、あなたと。ブルースター、後を頼むよ」
「人数が増えても大したことなさそうなメンツだな」
 オリジナルが鼻で笑う。
「なら私が相手だ」
 入り口から、大杜の部下のひとりが姿を現した。
「アキレア!」
 大杜が名前を呼ぶ。
 アキレアは少し表情を緩めて大杜を見やった。
「アキレア、気をつけて。奴の武器は竹刀じゃない」
「上層部より、|特異手刀《スペシャルナイフ》の使用が許可されました」
 大杜が頷く。
(これで互角だ)
 アキレアは、両手を刀のように使うことができる。その切れ味は、トラックを一刀両断出来るほどだ。ボディは皆と同じものだが、高速の動きで熱や振動などを起こす。白兵戦でアイビーと双璧をなすメンバーだった。
 ただ危険な能力なので、普段は使えない。使うには、大杜の言葉が必要だった。
「アキレア、『アンロック』。彼を殺さずに、捕らえるんだ」
「ラジャ」