5

ー/ー



「むふふっ、噂で聞いたんだ、近所にサムライの男の子がいるってね」
嫌な思いが僕の頭の中をよぎる。

どう見ても背格好からして僕やタケルと同じくらい。それがうわさを聞き付けたっていったい!?

「そうだとしたら、いったい?」
「すごいよね、その着てる服のボロボロ具合。キミもかなーりやってそう」
「その……コタローと呼んでもらって結構です」

彼女の口が「うん、わかった」って紡ぎ終えぬうちに……
小さな身体が地面を蹴り、跳んだ。
その手には木刀がいつの間にか握られてる。つまりは……
僕と同じ流派!?
「私と戦ってもらえるかな?」
姿勢を低く保った彼女は、僕の胸元でにやり、と気味の悪い笑みを浮かべてたんだ。分厚いレンズのメガネが、月明かりにちょっと反射してて。
「せ、せめて始めるときは一声かけてもらえれば……」
「エエー、実戦の世界じゃそんなことしてたらすぐ死んじゃうっしょ? つまり私の勝ち!」
「僕は認めません!」
つい語気を荒げてしまった。唐突に襲われてそれはないだろうって。
それに第一に……彼女は何者で、似たような神速歩法を誰から習ったんだろう? まずそこからだ。

「まずお名前から...…でも」
「えっそれってもしかして告白とか」
「ちがいます!」ああなんなんだもう!
とりあえず普通の女の子じゃないってことは確かだ。それにこの奇妙な笑い声、だんだんイラッとしてくるし。落ち着け自分。

「えっと、私の名前は蟹坂ナオ。特別にあなたはナオって呼ぶことを許可する」
「えっと、じゃあ……ナオさん」
「あ、呼び捨てで平気だよ」
「ナオ……あなたはどこで僕と同じ神速歩法を学んだのですか?」
「え、これ神速歩法っていうんだ、初めて知った」

「でしたら、勝てば教えてくれますか?」
「そーだね、けど勝てるかな?」
思わず歯噛みした。一番それが聞きたかったのに。
でも師であるお爺さんが話してたっけ。明日香流は唯一無二の高速歩法だって。他の流派はすでに存在していないとも。
つまり、戦いを通して彼女に聞くしか方法はないってことか。いや、聞けなくともわずかな足さばきの違いから見出すことはできるはずだ。
僕は……それを知りたい!

「ナオ。改めて僕と勝負願いたいのですが」
ぶん、と木刀を大きく振り下ろしながら、ナオは話してくれた。
「私の方もまだまだだから。コタローの動き見て習いたいんだよねー」
なるほどね。

「ならば、お手合わせ願いましょうか」
「いいよ、けどケガしても責任は自分持ちね」
鵼斬りを鞘のまま手にかけ、僕は考えた。いくら自分持ちとはいえ相手は女性だ。絶対にケガをさせてはならない……って。
「お手並み拝見!」

腰を落とした瞬間、僕の右頬に鋭い痛みが走った。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 6


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



「むふふっ、噂で聞いたんだ、近所にサムライの男の子がいるってね」
嫌な思いが僕の頭の中をよぎる。
どう見ても背格好からして僕やタケルと同じくらい。それがうわさを聞き付けたっていったい!?
「そうだとしたら、いったい?」
「すごいよね、その着てる服のボロボロ具合。キミもかなーりやってそう」
「その……コタローと呼んでもらって結構です」
彼女の口が「うん、わかった」って紡ぎ終えぬうちに……
小さな身体が地面を蹴り、跳んだ。
その手には木刀がいつの間にか握られてる。つまりは……
僕と同じ流派!?
「私と戦ってもらえるかな?」
姿勢を低く保った彼女は、僕の胸元でにやり、と気味の悪い笑みを浮かべてたんだ。分厚いレンズのメガネが、月明かりにちょっと反射してて。
「せ、せめて始めるときは一声かけてもらえれば……」
「エエー、実戦の世界じゃそんなことしてたらすぐ死んじゃうっしょ? つまり私の勝ち!」
「僕は認めません!」
つい語気を荒げてしまった。唐突に襲われてそれはないだろうって。
それに第一に……彼女は何者で、似たような神速歩法を誰から習ったんだろう? まずそこからだ。
「まずお名前から...…でも」
「えっそれってもしかして告白とか」
「ちがいます!」ああなんなんだもう!
とりあえず普通の女の子じゃないってことは確かだ。それにこの奇妙な笑い声、だんだんイラッとしてくるし。落ち着け自分。
「えっと、私の名前は蟹坂ナオ。特別にあなたはナオって呼ぶことを許可する」
「えっと、じゃあ……ナオさん」
「あ、呼び捨てで平気だよ」
「ナオ……あなたはどこで僕と同じ神速歩法を学んだのですか?」
「え、これ神速歩法っていうんだ、初めて知った」
「でしたら、勝てば教えてくれますか?」
「そーだね、けど勝てるかな?」
思わず歯噛みした。一番それが聞きたかったのに。
でも師であるお爺さんが話してたっけ。明日香流は唯一無二の高速歩法だって。他の流派はすでに存在していないとも。
つまり、戦いを通して彼女に聞くしか方法はないってことか。いや、聞けなくともわずかな足さばきの違いから見出すことはできるはずだ。
僕は……それを知りたい!
「ナオ。改めて僕と勝負願いたいのですが」
ぶん、と木刀を大きく振り下ろしながら、ナオは話してくれた。
「私の方もまだまだだから。コタローの動き見て習いたいんだよねー」
なるほどね。
「ならば、お手合わせ願いましょうか」
「いいよ、けどケガしても責任は自分持ちね」
鵼斬りを鞘のまま手にかけ、僕は考えた。いくら自分持ちとはいえ相手は女性だ。絶対にケガをさせてはならない……って。
「お手並み拝見!」
腰を落とした瞬間、僕の右頬に鋭い痛みが走った。