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「おい、狩野タケル」

放課後にいろいろメモをしてた俺の前に、どかっと女子が座ってきた。しかし態度でけえなコイツ。

確か「蟹坂……だっけ?」。
どこの学校でもある話だとは思うけど、よほどのイベントとかでも無い限り男子と女子との接点なんて存在しない。そう、この小学校でもそれは変わらず。
だからすっげドキッとした。この蟹坂ナオはクラスの女子でも結構暗いタイプだし、友達は……まあそれほど多くないかなと思った。もちろん俺もこの女とは今に至るまで会話すらしたことがない。

そんな彼女が、いったいなんで?
「なんか用?」とはいえ共通の話題も何もないからそっけなく返す。
つーかいきなり敬称略のフルネーム呼びっていうのもすっげカチンと来るよな。
「別に」アイツもそっけない返しだった。でも……
じーっと俺のこと見てるんだ。椅子の背もたれに手とあご乗っけて、ちょっと厚めのレンズなメガネで、俺の顔を。
「じゃあなんでジロジロ見てんだ?宿題なら出したし今日は掃除当番じゃねーし」
「最近よく、保健室の新しい先生と話してるけどさ」
ギクっとした。リプリス先生のことだ。
確かにこいつの言うとおりだ。あの先生とは……うん、例のパンダの件についてとかでいろいろ話してる。もっともなぜ先生がワーパンダという存在を追っているのかはまだ話してはくれないけどね。
「生活のことについてだよ。1人の時が多いから心配して相談に乗ってくれてるんだ」
一瞬「あ、そっか」って感じのちょっとかわいそうなものでも見る目で俺を見た。
同情されるのは嫌いだ。こっちはこっちでそれなりに楽しく生活してるんだし。
あと……俺の記憶も曖昧だしね。両親を亡くした事故の時以来、みんなそのことを聞いたり、触れたりしないようにって担任の先生が説明してくれたんだ。だからとても助かってる。

さて、と。今日の夕食のメモ書きをポケットに入れて、帰ろうとした時だった。
蟹坂が「ちょっとだけ聞きたいんだが」って。
ウザく思いながらももう一回座って聞くことにした。
「狩野タケルは、野生動物好きなのか?」
「な、なんでまたそんなことを?」唐突な質問すぎて俺の頭も混乱した。いやまあ、ワーウルフになって以来いろんな動物のバケモンと対峙したから、図書室で動物図鑑とか読んで調べたりするのが増えてきちゃったんだよね。
「やっぱりそうか」ってまた俺のことをジロジロ。
そーいやこいつ図書委員だったか。そこから履歴読み取ったかな。
「動物の中ではなにが好き?」あああもうますます訳わからねー! けどアレだけは好きだ。

「んっと……俺的にはオオカミかな」
そう話した時だった。なんか仏頂面気味な蟹坂の目が、顔が喜びにぱあっと輝き出したんだ!

「え、とわっ、だ、え……すす好きにゃのオオカミュ!?」なんかすげえ取り乱して噛みまくりだし!
「かかかっ、カッコいいよね、もう普通のそこら辺のハスキーとかシェパードよりシュッとしてスラっとしてけどおっきくてしっぽモフモフしてそうで!」
なんだよこいつ!! 変なスイッチ入ったみたいに熱弁してきやがるし!

「わわわ悪ぃ! 俺夕飯の支度しなきゃいけねーから!」ってことで急いでこのやべえ女の話は打ち切って、半ば逃げるかのように帰った。もう心臓ドキドキだ、俺の方が。

⭐︎⭐︎⭐︎

……けど、それで済むだろうなって思ってたのが大間違いだった。

「か、狩野タケル……ちょっといいか?」
翌日のこと、またその日の夕飯の献立をメモってた俺の前に、蟹坂ナオがどかーんと座ってきた。

「ふひっ……これ、私が作ったミニアルバムだ、あげる!」
唐突に俺にずいっと突きつけて来たそれ。学校のタブレットと同じくらいな大きさの、オオカミのフレークシールがこれでもかと表紙に貼られた厚紙の束。
チラリとめくると……うわすげえ、大小様々な大きさのオオカミの写真がいっぱい!
「え、あ……りがとう」
これしか言えなかった、なんか気味悪さも感じたしちょっと引いちゃったけど。

「いや本当はこっそり靴箱の中にでも入れとこうかなとしたんだけどね、狩野タケルの靴箱がすっごく臭かったんで臭いが移るかもしれないし、やめといた」

オイひとこと余計だ。

「あんなに臭い靴じゃ、流石のオオカミだって死ぬぞ」

つーかやめろオイ。すでに犠牲者出しちゃってるんだから。


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「おい、狩野タケル」
放課後にいろいろメモをしてた俺の前に、どかっと女子が座ってきた。しかし態度でけえなコイツ。
確か「蟹坂……だっけ?」。
どこの学校でもある話だとは思うけど、よほどのイベントとかでも無い限り男子と女子との接点なんて存在しない。そう、この小学校でもそれは変わらず。
だからすっげドキッとした。この蟹坂ナオはクラスの女子でも結構暗いタイプだし、友達は……まあそれほど多くないかなと思った。もちろん俺もこの女とは今に至るまで会話すらしたことがない。
そんな彼女が、いったいなんで?
「なんか用?」とはいえ共通の話題も何もないからそっけなく返す。
つーかいきなり敬称略のフルネーム呼びっていうのもすっげカチンと来るよな。
「別に」アイツもそっけない返しだった。でも……
じーっと俺のこと見てるんだ。椅子の背もたれに手とあご乗っけて、ちょっと厚めのレンズなメガネで、俺の顔を。
「じゃあなんでジロジロ見てんだ?宿題なら出したし今日は掃除当番じゃねーし」
「最近よく、保健室の新しい先生と話してるけどさ」
ギクっとした。リプリス先生のことだ。
確かにこいつの言うとおりだ。あの先生とは……うん、例のパンダの件についてとかでいろいろ話してる。もっともなぜ先生がワーパンダという存在を追っているのかはまだ話してはくれないけどね。
「生活のことについてだよ。1人の時が多いから心配して相談に乗ってくれてるんだ」
一瞬「あ、そっか」って感じのちょっとかわいそうなものでも見る目で俺を見た。
同情されるのは嫌いだ。こっちはこっちでそれなりに楽しく生活してるんだし。
あと……俺の記憶も曖昧だしね。両親を亡くした事故の時以来、みんなそのことを聞いたり、触れたりしないようにって担任の先生が説明してくれたんだ。だからとても助かってる。
さて、と。今日の夕食のメモ書きをポケットに入れて、帰ろうとした時だった。
蟹坂が「ちょっとだけ聞きたいんだが」って。
ウザく思いながらももう一回座って聞くことにした。
「狩野タケルは、野生動物好きなのか?」
「な、なんでまたそんなことを?」唐突な質問すぎて俺の頭も混乱した。いやまあ、ワーウルフになって以来いろんな動物のバケモンと対峙したから、図書室で動物図鑑とか読んで調べたりするのが増えてきちゃったんだよね。
「やっぱりそうか」ってまた俺のことをジロジロ。
そーいやこいつ図書委員だったか。そこから履歴読み取ったかな。
「動物の中ではなにが好き?」あああもうますます訳わからねー! けどアレだけは好きだ。
「んっと……俺的にはオオカミかな」
そう話した時だった。なんか仏頂面気味な蟹坂の目が、顔が喜びにぱあっと輝き出したんだ!
「え、とわっ、だ、え……すす好きにゃのオオカミュ!?」なんかすげえ取り乱して噛みまくりだし!
「かかかっ、カッコいいよね、もう普通のそこら辺のハスキーとかシェパードよりシュッとしてスラっとしてけどおっきくてしっぽモフモフしてそうで!」
なんだよこいつ!! 変なスイッチ入ったみたいに熱弁してきやがるし!
「わわわ悪ぃ! 俺夕飯の支度しなきゃいけねーから!」ってことで急いでこのやべえ女の話は打ち切って、半ば逃げるかのように帰った。もう心臓ドキドキだ、俺の方が。
⭐︎⭐︎⭐︎
……けど、それで済むだろうなって思ってたのが大間違いだった。
「か、狩野タケル……ちょっといいか?」
翌日のこと、またその日の夕飯の献立をメモってた俺の前に、蟹坂ナオがどかーんと座ってきた。
「ふひっ……これ、私が作ったミニアルバムだ、あげる!」
唐突に俺にずいっと突きつけて来たそれ。学校のタブレットと同じくらいな大きさの、オオカミのフレークシールがこれでもかと表紙に貼られた厚紙の束。
チラリとめくると……うわすげえ、大小様々な大きさのオオカミの写真がいっぱい!
「え、あ……りがとう」
これしか言えなかった、なんか気味悪さも感じたしちょっと引いちゃったけど。
「いや本当はこっそり靴箱の中にでも入れとこうかなとしたんだけどね、狩野タケルの靴箱がすっごく臭かったんで臭いが移るかもしれないし、やめといた」
オイひとこと余計だ。
「あんなに臭い靴じゃ、流石のオオカミだって死ぬぞ」
つーかやめろオイ。すでに犠牲者出しちゃってるんだから。