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エピローグ フォルの想い

ー/ー




 ギュリエンの最後。あの日、普段はできていた魔力制御が突然できなくなった。気づけば全てが枯れ、エレとゼロが僕を心配して泣いていた。

 あの日からずっとみんなを探しているのに、見つかる事はなかった。

 ギュリエンの事はオルにぃ様が長い間隠していてくれたおかげで僕はその間外へ出れていた。

 でも、ずっと隠し切る事はできず、それがバレて僕は神獣が所有する施設に監禁された。

 その間、何度もあの日の事を思い出しては後悔していた。目を閉じると、楽しかった日々が鮮明に浮かび上がる。その度にもう戻れないのだと泣き続けた。

 エレとゼロが心配だからとロジェに頼んで面倒を見てもらっていた。その間は魔力を通して二人の様子を見ていた。

 エレとゼロは僕がいなくてもロジェを頼りながら暮らしている。これなら、僕はいなくても良いだろう。

 そう思いながら過ごしていた。でも、前々回の事。

『フォルを探すの! 』

 エレがそう言って僕を必死に探してくれた。見つかるはずなんてないのに。その行動が嬉しかったんだ。

 でも、エレの単独行動。それはエレを狙う連中にとっては絶好のチャンスとなってしまっていた。その連中の罠に嵌ったエレが精神破壊魔法と洗脳魔法をかけられた。

 エレは呪いに関してはある一つを除いて効かない体質だけど精神系統の魔法の耐性は赤子と変わらない。

 エレはそのせいで世界を崩壊させかけた。それを止めたのがゼロだった。

 エレの魔法を解く事はゼロにはできない。でも、ゼロは力尽くでエレを止めて見せた。相打ちという形で。

 これが、歪められた御巫の運命。

 僕はあの子らを呼んだ。魔力達に頼んで少しの間だけだけど、二人に会う事ができた。

 もう助からない状態の二人にせめて痛みだけでもなくすようにと魔法をかけた。

 もし、ここでなければ僕は二人を助けられていただろう。痛覚麻痺以外の魔法をかけてやれただろう。

「……ふぉ、る? やっと、みつけ、た……もう、どっかいか、ないで」

 ゼロは最後の最後にエレを元に戻せたんだ。エレは、僕を見て笑ってくれた。

 でも、僕は笑顔を返す事はできず、何度もごめんと謝っていた。泣いて、謝る事しかできなかった。

「ずっと、一緒にいて」

 エレはその言葉を最後に目を閉じた。

 その後、ゼロが薄らと目を開けて、力ない手で僕の手を握った。

「ずっと、一緒、にいる」

 ゼロはそれだけを言い残して目を閉じた。

 僕はその時、エレとゼロを御巫の運命から解放する事を決めた。

 そのために、絶対に失敗しないように計画を練った。

 これが成功すればみんなとは会えない。せめてもの償いとして、大切な人の悲しい結末を見たくないというささやかな願いを込めて、エルグにぃ様やルーが自分の御巫候補と一緒にいられるようにとかも考えながら。

 でも、それは単なる言い訳だったんだろう。数える事もいやになるほど長い間みんなを探し続けて疲れていたんだ。もう、諦めない事に疲れてたんだ。

 そこに御巫の運命という体の良い言い訳を見つけて、エレとゼロのためと言っていただけだったんだろう。

 僕はただ、あの日に囚われていただけなんだ。

      **********

 前回、ある仕事を引き受ける代わりに僕は外へ出る事ができた。

 色々と想定外な事はあったけど、一番はあの子の言葉と強い意志。だと思っていた。

「逃げないで」

 あの子は、強い意志で記憶を取り戻して僕にそう言った。僕にギュリエンを……双子宮を見せたんだと思っていた。

 でも、わずかながらにエレを守る加護を視る事ができたんだ。それですぐに気づいたよ。あの子を十六年間守って導いてくれていた相手が誰なのかって。

 それにさえ気づかなければあの子の言葉に絆される事もなかったのに。

 結果的にエレが僕を救ったとみんな思っているんだろう。それに気づくきっかけをくれたのはエレだったから違いないんだけど。

 僕が何年もの間二人を救う事だけを考えていたのとおんなじでその相手も何年もの間僕を救う事だけを考えていたんだろう。

 何年も会っていないのに、一番僕を想ってくれている。僕の大切な双子の兄。

 僕はエレとゼロとおんなじでフィルと共有が使える。あの子が僕の質問に答えた時、共有で想いが伝わった。

 ――フォル、ごめん。おれが守ってやれれば良かった。今度は守るから、一緒にいて。

 たったこれだけ。でも、それだけで良かったんだ。一緒にいたい。僕の片割れと離れたくなんてない。

 それは計画を諦めるのに十分すぎる理由だ。

 ついでに、忘れていたものを思い出したよ。きっと僕を怒ってくれて心配してくれる人達の存在を。その人達と二度と会えなくなるのはいやだったな。僕の家族同然の人達だから。

 だから今は、計画が失敗に終わって良かったって思ってる。

      **********

 エレはぐっすり眠っている。寝てる時は起きている時とは違うかわいさがある。

「けーきしゃん……一万ホール」

 思わず笑いそうになった。というかこれって全部エレの好きなフルーツタルトだよね。ゼロは絶対飽きるだろとか突っ込んでそう。

「……」

 そう言えば睡眠学習ってあるよね。前にエレに散々可愛いって言い続けたら洗脳できたためしがあるんだよ。

「エレ、エレは僕のだから僕以外の言う事は聞いちゃだめだよ」

 だから少し長いけどこれも毎晩続ければせんの……教育できるかな。

「エレのけーきしゃんは? 」

 悲報! エレ、夢の中でケーキに逃げられる。なんて考えているとほんとに笑いそうになる。

 あっ、メッセージだ。

『ゼロが泣いてる』

『どうにかしろ』

 なぜか二人で分けて送ってきてる。エルグにぃ様とルーが。

『約束守るから。ごめん、あんな最後を見せて。一緒にいてくれてありがとな。これからは既成事実作るとか色々して逃げ場無くして……今から考えただけで楽しみだ。あと助けてください。お願いします。虫いっぱいむり。助けてください』

 ゼロからもきていた。礼を言うのは僕の方なのに。思い出してくれてありがと。側にいるって言ってくれてありがと。

 フィルから連絡だ。

『良かった。きっとみんなも心配してる』

「……うん」

『沢山、怒られるだろうから、おれも一緒に謝ってあげる。心配かけてごめんって』

「……うん」

 フィルの声を聞いたら涙が止まらなくなる。もうこうして話せないと思っていたからなのかな。

『ありがと、帰ってきてくれて。おれの大事なフォル』

「……うん」

『前にアディとイヴィには会ったけど、なんで気づいてやれなかったんだって言ってた。もっと早くに気づければ、一番辛い時に側にいてやれれば、自分達が守ってやっていれば……沢山、後悔していた』

「……ごめん」

 後悔しているのは、僕だけじゃないんだ。みんな一緒なんだ。

「……ねぇ、僕、ギュゼルのみんなに会いたいんだ。探すの手伝ってくれる? ……みんな、僕を許してくれるかな……一緒にいて良いって言ってくれるかな……」

『おれも少しだけ会った事あるけど、フォルを責める人達ではないと思う。きっと一緒にいられる。おれも……おれ達も協力するから、一緒に探そう』

 フィルがいつも以上に優しい。もっと声を聞いていたいと思ったらまた連絡きた。グループ機能使うか。

『フォル、俺様に黙っていなくなろうとすんなよ! どこにいたって見つけて連れ戻してやるからな! 』

『申し訳ありません。アディも心配しているんです。いつも我々が大変な時に誰よりも力になってくれていたあなたがこんなにも悩んでいた事に気づかず申し訳ありません』

「……ううん。僕の方こそごめん。ずっと連絡も取らず、心配ばかりかけて」

 二人は終焉の王と呼ばれる仲間。アディとイヴィ。二人とも心配で連絡をくれたんだろう。

『心配は当然だろ。俺様が……みんながフォルを守りたいって思ってんだからな』

『そうですね。ゼロが希望を見せる光であるのなら、フォルは守るべき存在でしょう。愛姫様は別枠として』

『おれは兄なんだか、関係なく弟を守るけど』

「うん。ありがと……今度こそ必ず、みんなが一緒にいられる世界にするためにも、もう逃げないよ。ギュゼルの事もみんなの事も諦めない。だから……一緒にいて。ギュリエンを元に戻すために力を貸して」

 当たり前だ。みんなそう言ってくれた。

 本来、僕らは外部の大切な人なんて作ってはいけないのに。ギュリエンという居場所に縋ってはならないのに。

 ねぇ、もし許されるのなら、あの頃以上を求めても良いのかな。ギュリエンで神獣達と暮らしながらみんなで世界に加護を与えて平和を作り、そこで笑っている未来を求めて良いのかな。

 その答えはもう出ているんだろう。

 仕事とか役目とか関係ない。僕の願い。今までずっと見ないようにしてきたんだから、今回はそれと向き合って良いよね。

 向き合うにはまだ時間が必要だけど。




みんなのリアクション


 ギュリエンの最後。あの日、普段はできていた魔力制御が突然できなくなった。気づけば全てが枯れ、エレとゼロが僕を心配して泣いていた。
 あの日からずっとみんなを探しているのに、見つかる事はなかった。
 ギュリエンの事はオルにぃ様が長い間隠していてくれたおかげで僕はその間外へ出れていた。
 でも、ずっと隠し切る事はできず、それがバレて僕は神獣が所有する施設に監禁された。
 その間、何度もあの日の事を思い出しては後悔していた。目を閉じると、楽しかった日々が鮮明に浮かび上がる。その度にもう戻れないのだと泣き続けた。
 エレとゼロが心配だからとロジェに頼んで面倒を見てもらっていた。その間は魔力を通して二人の様子を見ていた。
 エレとゼロは僕がいなくてもロジェを頼りながら暮らしている。これなら、僕はいなくても良いだろう。
 そう思いながら過ごしていた。でも、前々回の事。
『フォルを探すの! 』
 エレがそう言って僕を必死に探してくれた。見つかるはずなんてないのに。その行動が嬉しかったんだ。
 でも、エレの単独行動。それはエレを狙う連中にとっては絶好のチャンスとなってしまっていた。その連中の罠に嵌ったエレが精神破壊魔法と洗脳魔法をかけられた。
 エレは呪いに関してはある一つを除いて効かない体質だけど精神系統の魔法の耐性は赤子と変わらない。
 エレはそのせいで世界を崩壊させかけた。それを止めたのがゼロだった。
 エレの魔法を解く事はゼロにはできない。でも、ゼロは力尽くでエレを止めて見せた。相打ちという形で。
 これが、歪められた御巫の運命。
 僕はあの子らを呼んだ。魔力達に頼んで少しの間だけだけど、二人に会う事ができた。
 もう助からない状態の二人にせめて痛みだけでもなくすようにと魔法をかけた。
 もし、ここでなければ僕は二人を助けられていただろう。痛覚麻痺以外の魔法をかけてやれただろう。
「……ふぉ、る? やっと、みつけ、た……もう、どっかいか、ないで」
 ゼロは最後の最後にエレを元に戻せたんだ。エレは、僕を見て笑ってくれた。
 でも、僕は笑顔を返す事はできず、何度もごめんと謝っていた。泣いて、謝る事しかできなかった。
「ずっと、一緒にいて」
 エレはその言葉を最後に目を閉じた。
 その後、ゼロが薄らと目を開けて、力ない手で僕の手を握った。
「ずっと、一緒、にいる」
 ゼロはそれだけを言い残して目を閉じた。
 僕はその時、エレとゼロを御巫の運命から解放する事を決めた。
 そのために、絶対に失敗しないように計画を練った。
 これが成功すればみんなとは会えない。せめてもの償いとして、大切な人の悲しい結末を見たくないというささやかな願いを込めて、エルグにぃ様やルーが自分の御巫候補と一緒にいられるようにとかも考えながら。
 でも、それは単なる言い訳だったんだろう。数える事もいやになるほど長い間みんなを探し続けて疲れていたんだ。もう、諦めない事に疲れてたんだ。
 そこに御巫の運命という体の良い言い訳を見つけて、エレとゼロのためと言っていただけだったんだろう。
 僕はただ、あの日に囚われていただけなんだ。
      **********
 前回、ある仕事を引き受ける代わりに僕は外へ出る事ができた。
 色々と想定外な事はあったけど、一番はあの子の言葉と強い意志。だと思っていた。
「逃げないで」
 あの子は、強い意志で記憶を取り戻して僕にそう言った。僕にギュリエンを……双子宮を見せたんだと思っていた。
 でも、わずかながらにエレを守る加護を視る事ができたんだ。それですぐに気づいたよ。あの子を十六年間守って導いてくれていた相手が誰なのかって。
 それにさえ気づかなければあの子の言葉に絆される事もなかったのに。
 結果的にエレが僕を救ったとみんな思っているんだろう。それに気づくきっかけをくれたのはエレだったから違いないんだけど。
 僕が何年もの間二人を救う事だけを考えていたのとおんなじでその相手も何年もの間僕を救う事だけを考えていたんだろう。
 何年も会っていないのに、一番僕を想ってくれている。僕の大切な双子の兄。
 僕はエレとゼロとおんなじでフィルと共有が使える。あの子が僕の質問に答えた時、共有で想いが伝わった。
 ――フォル、ごめん。おれが守ってやれれば良かった。今度は守るから、一緒にいて。
 たったこれだけ。でも、それだけで良かったんだ。一緒にいたい。僕の片割れと離れたくなんてない。
 それは計画を諦めるのに十分すぎる理由だ。
 ついでに、忘れていたものを思い出したよ。きっと僕を怒ってくれて心配してくれる人達の存在を。その人達と二度と会えなくなるのはいやだったな。僕の家族同然の人達だから。
 だから今は、計画が失敗に終わって良かったって思ってる。
      **********
 エレはぐっすり眠っている。寝てる時は起きている時とは違うかわいさがある。
「けーきしゃん……一万ホール」
 思わず笑いそうになった。というかこれって全部エレの好きなフルーツタルトだよね。ゼロは絶対飽きるだろとか突っ込んでそう。
「……」
 そう言えば睡眠学習ってあるよね。前にエレに散々可愛いって言い続けたら洗脳できたためしがあるんだよ。
「エレ、エレは僕のだから僕以外の言う事は聞いちゃだめだよ」
 だから少し長いけどこれも毎晩続ければせんの……教育できるかな。
「エレのけーきしゃんは? 」
 悲報! エレ、夢の中でケーキに逃げられる。なんて考えているとほんとに笑いそうになる。
 あっ、メッセージだ。
『ゼロが泣いてる』
『どうにかしろ』
 なぜか二人で分けて送ってきてる。エルグにぃ様とルーが。
『約束守るから。ごめん、あんな最後を見せて。一緒にいてくれてありがとな。これからは既成事実作るとか色々して逃げ場無くして……今から考えただけで楽しみだ。あと助けてください。お願いします。虫いっぱいむり。助けてください』
 ゼロからもきていた。礼を言うのは僕の方なのに。思い出してくれてありがと。側にいるって言ってくれてありがと。
 フィルから連絡だ。
『良かった。きっとみんなも心配してる』
「……うん」
『沢山、怒られるだろうから、おれも一緒に謝ってあげる。心配かけてごめんって』
「……うん」
 フィルの声を聞いたら涙が止まらなくなる。もうこうして話せないと思っていたからなのかな。
『ありがと、帰ってきてくれて。おれの大事なフォル』
「……うん」
『前にアディとイヴィには会ったけど、なんで気づいてやれなかったんだって言ってた。もっと早くに気づければ、一番辛い時に側にいてやれれば、自分達が守ってやっていれば……沢山、後悔していた』
「……ごめん」
 後悔しているのは、僕だけじゃないんだ。みんな一緒なんだ。
「……ねぇ、僕、ギュゼルのみんなに会いたいんだ。探すの手伝ってくれる? ……みんな、僕を許してくれるかな……一緒にいて良いって言ってくれるかな……」
『おれも少しだけ会った事あるけど、フォルを責める人達ではないと思う。きっと一緒にいられる。おれも……おれ達も協力するから、一緒に探そう』
 フィルがいつも以上に優しい。もっと声を聞いていたいと思ったらまた連絡きた。グループ機能使うか。
『フォル、俺様に黙っていなくなろうとすんなよ! どこにいたって見つけて連れ戻してやるからな! 』
『申し訳ありません。アディも心配しているんです。いつも我々が大変な時に誰よりも力になってくれていたあなたがこんなにも悩んでいた事に気づかず申し訳ありません』
「……ううん。僕の方こそごめん。ずっと連絡も取らず、心配ばかりかけて」
 二人は終焉の王と呼ばれる仲間。アディとイヴィ。二人とも心配で連絡をくれたんだろう。
『心配は当然だろ。俺様が……みんながフォルを守りたいって思ってんだからな』
『そうですね。ゼロが希望を見せる光であるのなら、フォルは守るべき存在でしょう。愛姫様は別枠として』
『おれは兄なんだか、関係なく弟を守るけど』
「うん。ありがと……今度こそ必ず、みんなが一緒にいられる世界にするためにも、もう逃げないよ。ギュゼルの事もみんなの事も諦めない。だから……一緒にいて。ギュリエンを元に戻すために力を貸して」
 当たり前だ。みんなそう言ってくれた。
 本来、僕らは外部の大切な人なんて作ってはいけないのに。ギュリエンという居場所に縋ってはならないのに。
 ねぇ、もし許されるのなら、あの頃以上を求めても良いのかな。ギュリエンで神獣達と暮らしながらみんなで世界に加護を与えて平和を作り、そこで笑っている未来を求めて良いのかな。
 その答えはもう出ているんだろう。
 仕事とか役目とか関係ない。僕の願い。今までずっと見ないようにしてきたんだから、今回はそれと向き合って良いよね。
 向き合うにはまだ時間が必要だけど。


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