「若いおなごが土左衛門なんておよしなさい」
音色の身体を引き留めた者がいる。遊歩道側に引っ張り出されて尻もちを着く音色。
「いった―い……」
左手で右の尻をさすりながら顔を上げると、そこにはさっきの汚いおじさんが音色を見下ろしていた。
「酷いよおじさん……死ぬほどお尻が痛かったじゃない」
「でも死んでない」
「……うん」
「死ぬのはもっと痛い」
「…………そうですね、きっと……ありがとうござます」
音色はそう言っておじさんに笑顔を向けた。おじさんは少し照れて顔を背けた。
「他生の縁だ、少しおじさんに付き合いなさい」
おじさんの手には一升瓶が握られていて、おじさんが顎で示した先には少しだけ立派なハウスがある。
それは音色が勝手に『お隣さん』になろうとしていたハウス……オオカミが『フウフウのフー』とやっても吹き飛ばされない程の作りと思われる。