「以前も誰かがいたような気がした……そう恋実は言ったよな」
「うん……何か怖いね……」
嫌な空気に包まれる校舎……すっかり遅くなってしまった。
夏と違って、うるさいほどの蝉や蛙の音が聞こえないだけで、こんなにも冬は春に備え、夜は朝に活力を生み出す、その大自然の輪廻を感じさせるものなのだろうか。
電気という自然の摂理を覆した昼間のような明かりの中で、日暮れより圧倒的に長く活動時間を伸ばしていた二人は、どうやら夢中になり過ぎていたようだ。
運動部の活動音もいつの間にやら無に帰していた。
明かりの領域から遠ざかり弱くなるにつれ、その不安を大きくする。
「何か嫌な予感がする……恋実、ここは早く出よう。この学校は巨大な密室なのだから……」
「ヤダ……変なこと言わないでよ」
山にそびえ立つ人工物である校舎を出ると、駐輪場の明かりは心許ない。辺りは闇が音を吞み込んでいるかのように、動かない。
帰り道の最初は長い下り坂の山だ。そして山を抜けても街灯の数は少ない。恋実の不安は積もって止まない。
「覗いていた人物の類は見当は付いている……恐らく……」
「恐らく?」
恋実の不安を察した恭吾が気休め程度に推理を明かす。やはり女性の不安な顔は男を『男たる者』に変える力がある。
「パパラッチだ」
「パパラッチ?」
「前回、恋実が『誰かいる』と感じた翌々日には時巻が『二人は付き合っているの?』と聞いてきた。恐らく誰かが噂をバラ撒いている」
「え?」
恋実には寝耳に水だ。