「フォークダンスのリストでも優香ちゃんと手を繋げていないわ……ひょっとして……」
これはかなりの進展を見た気がした、確かな手応えであった。
「しかし金曜日はB組の体育の授業はない……月・水なんだよB組の体育は」
「そんな……それならいつ風を呼んだって言うの?」
「…………」
さすがの恭吾も黙り込む。生徒会室の掛け時計も連続秒針の静穏タイプで、秒を刻む音すらしない。
「そうか! 部活だ! ソフトボール部は体育館の更衣室で着替える」
「でも部活の時は昇降口から靴を履いて体育館に向かうから美術室前は通らないでしょ?」
「何?! では一体……きっといるはずなんだ、同一犯であるのなら、あのフォーダンスのリストの中に必ず……」
再び生徒会室に静寂が覆う。冬の冷たさに静けさが足されていく。音のない世界の冷たさを思い知る。
(助けなきゃ)
恋実は衝動的に感じた。冷たさは縮こまらせる、身体も心も思考さえも……アイスブレイクする『言葉』が必要だ。
恋実は巡らす……犯人を探し出す思考は生まれなくとも、誰かを想う、守るための思索は掘り起こせる。
「今井君……ねぇ今井君が金曜日の放課後、体育館の方に向かうのを私、見たわ」
「合唱部の……今井が……?」
恭吾の目には、その先を見据える希望が宿り出していた。