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@ 43話

ー/ー





 それでも遊馬なら……しかしこれは貸与戦、勝手知ったるパートナー(持ち馬)ではない。ミスは十二分にあり得るが期待が掛かる。


 そして遊馬は『馬術の天下の名人』と謳われた、天沢新吉郎の血を受け継ぐ者である。


 


 


 遊馬は入念に馬場を調べる。調べて走るイメージを繰り返して臨む。基本的に遊馬はシンプルに馬を走らせるが、『ここはこうするんだよ』『こうした方が無理なく跳べるよ』と馬に教えてあげているような接し方に思える。


 一方十葉の騎乗はとてもシンプルだ。『馬成り』とも言うべきであろうか? 悪く言えば大雑把。細かな要求はほとんどしないし、勘が良いのかその場の閃きのような感性で馬を操る。したがってこのような貸与馬戦では馬とのフィーリングが非常に重要となる。 


 


 


 人馬共にリラックスするようなドレッサージュの筋肉の解し方ではなく、張りと弾力を併せ持つように準備を整えた遊馬。


 緊張感が馬と騎手もろとも馬場を呑み込む。そんな中スタートを切ると遊馬の体捌きがそのまんま反映されたかのように走る馬。高校レベルを超えた走りだった。


「56.19!! 言葉もありません!! 最高のプレッシャーがかかる中、最高のパフォーマンスを見せた、天沢遊馬! これで勝負の行方は分からなくなりました!!」 


 


 これで最終走者、十葉が何かしらの減点、もしくは57.31以上のタイムを出した時点で江南の勝ちが決まる。


 57.31秒、これは舞羽とほぼ変わらないタイム……このラインを狙っていくことは容易なことではない。


 颯志もさすがに驚いていた。


「いやぁ~さすが怪物君……まさか俺の上いかれると思わなかったぁ」


 颯志は出走準備に入っている十葉とアイコンタクトを交わす。颯志は黙って頷く。十葉は緊張なんて無縁な様相……笑顔で小さく手を振る。


 そして運命のベルが鳴る。


 


 


 記録は56.11秒……。


「言ったろ……十葉がエースだって」


 


 


 江南、減点0、タイム171.88。藤稜、減点0、タイム170.68。江南大高等学校、準決勝敗退。


 決勝は藤稜高校対明星学園の顔合わせ、そのまま藤稜高校は優勝を飾った。


 


 


 そして全日本高等学校馬術競技大会は幕を閉じた。




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 それでも遊馬なら……しかしこれは貸与戦、勝手知ったる|パートナー《持ち馬》ではない。ミスは十二分にあり得るが期待が掛かる。
 そして遊馬は『馬術の天下の名人』と謳われた、天沢新吉郎の血を受け継ぐ者である。
 遊馬は入念に馬場を調べる。調べて走るイメージを繰り返して臨む。基本的に遊馬はシンプルに馬を走らせるが、『ここはこうするんだよ』『こうした方が無理なく跳べるよ』と馬に教えてあげているような接し方に思える。
 一方十葉の騎乗はとてもシンプルだ。『馬成り』とも言うべきであろうか? 悪く言えば大雑把。細かな要求はほとんどしないし、勘が良いのかその場の閃きのような感性で馬を操る。したがってこのような貸与馬戦では馬とのフィーリングが非常に重要となる。 
 人馬共にリラックスするようなドレッサージュの筋肉の解し方ではなく、張りと弾力を併せ持つように準備を整えた遊馬。
 緊張感が馬と騎手もろとも馬場を呑み込む。そんな中スタートを切ると遊馬の体捌きがそのまんま反映されたかのように走る馬。高校レベルを超えた走りだった。
「56.19!! 言葉もありません!! 最高のプレッシャーがかかる中、最高のパフォーマンスを見せた、天沢遊馬! これで勝負の行方は分からなくなりました!!」 
 これで最終走者、十葉が何かしらの減点、もしくは57.31以上のタイムを出した時点で江南の勝ちが決まる。
 57.31秒、これは舞羽とほぼ変わらないタイム……このラインを狙っていくことは容易なことではない。
 颯志もさすがに驚いていた。
「いやぁ~さすが怪物君……まさか俺の上いかれると思わなかったぁ」
 颯志は出走準備に入っている十葉とアイコンタクトを交わす。颯志は黙って頷く。十葉は緊張なんて無縁な様相……笑顔で小さく手を振る。
 そして運命のベルが鳴る。
 記録は56.11秒……。
「言ったろ……十葉がエースだって」
 江南、減点0、タイム171.88。藤稜、減点0、タイム170.68。江南大高等学校、準決勝敗退。
 決勝は藤稜高校対明星学園の顔合わせ、そのまま藤稜高校は優勝を飾った。
 そして全日本高等学校馬術競技大会は幕を閉じた。