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@ 36話

ー/ー





 夏の快晴が汗となって体を伝う。疾走するクアトロが風を起こし、汗を攫ってくれる。馬場の砂とその奥に見える芝生との境目が、そのスピードでぼやけていく。


 コース取りで大きく回っても、クアトロの肢はしっかり馬場をグリップして、舞羽に安心感を与えてくれる。


 


 


「クアトロ、ありがとう」


 馬の耳と耳の間の少し先に置いた目線の端に、ピンッと外側に向けて立てたクアトロの両耳が映り込んでいる。耳を見てクアトロが集中しているのが良く分かる。


 


(フィニッシュまで後3つ!)


 次の障害はコンビネーション障害。ラストは垂直障害。コンビネーション・ダブルの障害の飛越をスムーズに抜けたなら、単純な垂直障害はスピード勝負だ。


 遊馬は5歩で入ると言っていた……舞羽はそんなことが頭をかすめた。


 


 


 遊馬の馬の誘導(コントロール)では5歩で踏み切れる、しかし舞羽の誘導では5歩だと厳しい。


 障害馬術では狭いコースを右旋回、左旋回しながら順番通りの障害を越えなければならない。大きく回ればタイムがロスする。それを巧みに馬の手前(* 馬は速度によって肢の運びが違い、左右の肢が非対称に動くため、左右の着地を変えることでコーナーの曲がるグリップ・スピードが変わる)を変えて馬の肢捌きをコントロールする。


 これをどんな馬でもストレスを与えず(●●●●●●●●)できるのが遊馬の馬の誘導(コントロール)の神業である。


 


 


 そのとき、鈍い音と共にクアトロの肢が引っかかる……。


 


 


 6歩しっかり待てたが、舞羽の気持ちが先走ってしまったのだろう。バランスがわずかに崩れて、クアトロの肢がバーに当たった。


 


 


 ラッキーとしか言いようがなかった。バーは辛うじて落下を免れ、減点はない。そして、そのままフィニッシュ。


 タイムは58.06。




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 夏の快晴が汗となって体を伝う。疾走するクアトロが風を起こし、汗を攫ってくれる。馬場の砂とその奥に見える芝生との境目が、そのスピードでぼやけていく。
 コース取りで大きく回っても、クアトロの肢はしっかり馬場をグリップして、舞羽に安心感を与えてくれる。
「クアトロ、ありがとう」
 馬の耳と耳の間の少し先に置いた目線の端に、ピンッと外側に向けて立てたクアトロの両耳が映り込んでいる。耳を見てクアトロが集中しているのが良く分かる。
(フィニッシュまで後3つ!)
 次の障害はコンビネーション障害。ラストは垂直障害。コンビネーション・ダブルの障害の飛越をスムーズに抜けたなら、単純な垂直障害はスピード勝負だ。
 遊馬は5歩で入ると言っていた……舞羽はそんなことが頭をかすめた。
 遊馬の馬の|誘導《コントロール》では5歩で踏み切れる、しかし舞羽の誘導では5歩だと厳しい。
 障害馬術では狭いコースを右旋回、左旋回しながら順番通りの障害を越えなければならない。大きく回ればタイムがロスする。それを巧みに馬の手前(* 馬は速度によって肢の運びが違い、左右の肢が非対称に動くため、左右の着地を変えることでコーナーの曲がるグリップ・スピードが変わる)を変えて馬の肢捌きをコントロールする。
 これをどんな馬でも|ストレスを与えず《●●●●●●●●》できるのが遊馬の馬の|誘導《コントロール》の神業である。
 そのとき、鈍い音と共にクアトロの肢が引っかかる……。
 6歩しっかり待てたが、舞羽の気持ちが先走ってしまったのだろう。バランスがわずかに崩れて、クアトロの肢がバーに当たった。
 ラッキーとしか言いようがなかった。バーは辛うじて落下を免れ、減点はない。そして、そのままフィニッシュ。
 タイムは58.06。