「一番、江南大付属高等学校、馬渕。馬はラテアートです」
アナウンスが入り、スタートOKのベルが鳴る。快晴の空の下、砂を蹴ってラテアートが隼人を乗せて走る。
祈るようにその姿を見つめる楓乃。普段より高い位置で結ばれたポニーテールが揺れている。
ラテアートの尻尾も高く振られていて、高揚していることが見て取れる。馬だって嬉しいときは尾を高くする。
隼人は減点4、オクサー障害(* 奥行きのある障害)でバーを落とし、59.87でフィニッシュした。
三校、三つ巴戦の中に強豪、岩沢農業もいる。これ以上の減点は避けたい。
「4番、江南大付属高等学校、月皇。クアトロ号です」
馬のバランスは人が調整する必要がある。馬は後脚でパワーを生み出しているので、重心を後ろに乗せて、力をためてあげないときれいに飛べない。
特に重要なのが『バランス』。
馬は速く走ろうとすると、バランスがどんどん前に傾いてしまう生き物。その状態では、高く飛ぶことはできない。
(落ち着くんだ……焦るな、逸るな……)
遊馬が舞羽の乗馬を見つめる。
3番手で走った岩沢農業の第1走者も、減点4だ。
舞羽は遊馬が『落ち着け』と言っている心の叫びが届いている。それでも1秒でも早くフィニッシュすることが、この後の走者へのプレッシャーとなる、第3走者である遊馬へのゆとりを生む。その想いが舞羽へと覆いかぶさってくる。