表示設定
表示設定
目次 目次




クロネコとコウヘイ04

ー/ー



△▲△▲
 コウヘイとアキは町内にある神社にやってきた。

 太陽は徐々に西に沈み始め、空を赤く染め上げていく。日没までもう少し。コウヘイとアキは、急ぎ足で長い石の階段を登って行くと、2人の目の前に巨大な朱い門が姿を現した。

 コウヘイが3人いても届かないほど太く、見上げると空に手が届きそうなほど高い。

 もともとの朱色が、今は夕日の力を借りて、一層赤く染まっていた。


「朱い門だ」 


 2人は門の前で息を飲む。そして2人でゆっくりと朱の鳥居をくぐる 
 くぐった先で2人を迎えたのは、左右に分かれた狛犬の像。


「門を守るもの……狛犬か」


 境内に入ると、そこには厄除け、おはらいの看板があった。

 目的地は絶対にここだ。と、すでに2人の中では推測から確信へと変わっていた。


「ここが目的地のはずだけど、ここにまたヒントがあるのかな?それとも、またクロネコがいるのかな?」

「どうだろうなー」


 辺りが薄暗くなってきた。ひんやりとした風が2人を撫でる。コウヘイはブルッと身震いをした。


「少し肌寒くなってきたね。アキは大丈夫?」


「平気。しかし、暗くなってきたな。これじゃ次の暗号を探すのも厳しいな。どうする?明日また出直そうか」


 1日駆け回った上に、長時間頭も使ったためコウヘイもアキも疲労の色が濃い。
 ここまで探したが、手がかりが見つからないため、仕方なく今日は解散することにした。


「あー、もうちょっとだったのになぁ。でも今日は1日すごく楽しかった!なんか久しぶりに腹を抱えて笑ったし」

 
 頭の上で腕を組み、石段を下りながらアキがつぶやく。日が落ちて暗くなった石段を街灯の光が優しく照らす。


「俺も楽しかったよ。最初はいろいろあったけど、ペアがアキと一緒で良かったかも」


 疲労からか照れくさい言葉がスルッと口からもれる。言ってから、コウヘイは、あ、今の言い方キモいか。と思い、やってしまったかと、後悔しながら、恐る恐るアキを見る。


──パン!!

 コウヘイの背中に鋭い痛みが走る。アキに背中を叩かれたようだ。


「なーに言ってんだ!最初に言っただろ?『私が引っ張ってやる』って。まだ謎解きは終わってないんだ。明日もがんばんぞ!」

 
 アキは少しうつむきながら早口で応えた。そして、せーの!と、最後の1段を一気に飛び降りた。

 ふわっと柔らかな風が隣を抜ける。スタッと軽やかに着地したアキの背中を、コウヘイは目で追う。
 そして、アキに倣うようにコウヘイも一気に飛び下りた。


「おー、ナイスジャンプ!」


 アキが茶化してくる。コウヘイは、はにかみながら無言で拳を前に上げた。それを見たアキは口角を上げて拳を合わせる。





「コウヘイ、また明日な。9時に神社で!」


「分かった。帰り道に気をつけて!寝坊するなよ、アキ」


「ふ。誰が寝坊なんてするかよ。お前こそ気を付けろよ!」


 アキはそう言うと手を大きく振ってから、走り出した。コウヘイはその背中が見えなくなるまで見送る。完全に見えなくなると、コウヘイは踵を返して自身も帰路へと着いた。





△▲△▲
 カーテンの隙間から差し込む光は、コウヘイの顔を照らす。その明かりはコウヘイの意識を呼び起こすのには十分すぎた。

 んー。
 
 コウヘイは大きく伸びをする。よく寝たからか頭はスッキリとしていた。


「今日こそ、全部の謎を解いてやる」


 誰に聞かせるでもない。言うなれば自分自身への宣誓だった。

 コウヘイは手早く支度を済ませて、家を出た。まだまだ急ぐ時間ではない。むしろ早すぎるくらいだった。




(23、24、25、……26!)

 神社に向かう石段を数えながら、コウヘイは1番上まで登りきる。そこには昨日くぐった鳥居が変わらずにそびえ立っていた。

 コウヘイは近くにあった時計を見る。待ち合わせの時間まで、まだ30分以上あった。

(まだ早かったな)

 何気なく空を見上げると、そこには白い月があった。ボーッと月を眺めていると、コツン。コツン。と足音がした。

 近づいてくる足音に、コウヘイの心拍が上がる。足音の主は最後の段を上るとコウヘイに気付き、手を上げる。


「おはよう!コウヘイ、早いじゃん!まだ時間前だよな、何時からここにいるんだよ!」


「……30分前くらい?」


はー?早すぎだろー!
と、アキは返した後に、イタズラっぽい笑顔でコウヘイに尋ねてきた。


「そんなに私に会いたかったのか?」


 コウヘイの心臓が大きく動いた。


「……そう、かも。昨日、楽しかったから」


 アキの目が大きくなる。プイッと反対側を向き、


「そうかー、じゃあ仕方ないな!よし、早く謎解きをクリアしちまおうぜ!」


と、早口でしゃべって歩きだした。慌てて追いかけるコウヘイ。狛犬の間を通り、神社の境内に踏み込む。


「昨日は何も見つけられなかったけど、こうやって見ても何も変わったところはないな」


コウヘイは残念そうに話す。アキも、んー、何もないな。と返す。


「どうしようか。もう一度図書館でメモした暗号を見直してみる?」


 コウヘイの呼び掛けにアキが賛同する。コウヘイとアキは境内にあったベンチに腰掛けて、メモを広げる。
 2人は向かい合わせになりながら、メモを覗き込んだ。


「そう言えばさ、この1つ目の暗号の挟まっていたページって、今、思えば犬の写真が写っていたよね。あれもヒントだったのかも?」


 コウヘイが記憶を手繰り寄せながら、1冊目の本を思い出す。


「そうだっけ?もし、そうなら他の本も挟まっていたページにヒントがあったのかも。私、ちょっと覚えてないなー」
 

 アキは右手で頭を押さえながら、天を仰ぐ。


「4冊目のタイトルが『月の科学』だから、単純に考えれば……月、だったのかもしれないよね」


あー、確かにな。と、アキがうなづく。


「でも、それだと昨日の夜も月は出てたから、何か違うのかもしれない」


「じゃあ、図書館に戻ってみるか?もう一度、本を見てみれば解決するんじゃないか」


 回り道だけど、仕方ないね。と、コウヘイは立ち上がる。コウヘイとアキはもう一度、図書館に行ってみることにした。





 図書館に着くと、昨日と同じく誰もいない。シンとした静寂は、まるで時間が止まったようであった。

 コウヘイとアキは4冊目の本を探す。しかし、本は見つからなかった。


「おかしい。昨日確かにここに戻したのに!失くなってる!」


 アキが声を荒げた。大きな声が図書館の中で反響するが、しばらくすると元の静寂が帰ってくる。


「近くを探したけど、やっぱりないね。誰かが来て持っていった?」


 2冊目と3冊目は元の本棚に収まっていた。4冊目だけが見つからない。


「4冊目のヒントが重要だったのかも。誰かが、私たちがクリアするのを邪魔してるんだ!」


 アキは怒ったような表情を浮かべている。


「俺、心当たりがあるかも」


 コウヘイがポツリとつぶやいた。

 え、本当か?
と、アキがコウヘイの肩をつかんで尋ねる。


「ちょっと小学校に戻ってみてもいい?」

「小学校に?」


 アキはどうしてそこに?という表情を浮かべる。ダメ元で行ってみよう?とコウヘイが言うので、2人は小学校へと向かうことにした。



スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む クロネコとコウヘイ05


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



△▲△▲ コウヘイとアキは町内にある神社にやってきた。
 太陽は徐々に西に沈み始め、空を赤く染め上げていく。日没までもう少し。コウヘイとアキは、急ぎ足で長い石の階段を登って行くと、2人の目の前に巨大な朱い門が姿を現した。
 コウヘイが3人いても届かないほど太く、見上げると空に手が届きそうなほど高い。
 もともとの朱色が、今は夕日の力を借りて、一層赤く染まっていた。
「朱い門だ」 
 2人は門の前で息を飲む。そして2人でゆっくりと朱の鳥居をくぐる 
 くぐった先で2人を迎えたのは、左右に分かれた狛犬の像。
「門を守るもの……狛犬か」
 境内に入ると、そこには厄除け、おはらいの看板があった。
 目的地は絶対にここだ。と、すでに2人の中では推測から確信へと変わっていた。
「ここが目的地のはずだけど、ここにまたヒントがあるのかな?それとも、またクロネコがいるのかな?」
「どうだろうなー」
 辺りが薄暗くなってきた。ひんやりとした風が2人を撫でる。コウヘイはブルッと身震いをした。
「少し肌寒くなってきたね。アキは大丈夫?」
「平気。しかし、暗くなってきたな。これじゃ次の暗号を探すのも厳しいな。どうする?明日また出直そうか」
 1日駆け回った上に、長時間頭も使ったためコウヘイもアキも疲労の色が濃い。
 ここまで探したが、手がかりが見つからないため、仕方なく今日は解散することにした。
「あー、もうちょっとだったのになぁ。でも今日は1日すごく楽しかった!なんか久しぶりに腹を抱えて笑ったし」
 頭の上で腕を組み、石段を下りながらアキがつぶやく。日が落ちて暗くなった石段を街灯の光が優しく照らす。
「俺も楽しかったよ。最初はいろいろあったけど、ペアがアキと一緒で良かったかも」
 疲労からか照れくさい言葉がスルッと口からもれる。言ってから、コウヘイは、あ、今の言い方キモいか。と思い、やってしまったかと、後悔しながら、恐る恐るアキを見る。
──パン!!
 コウヘイの背中に鋭い痛みが走る。アキに背中を叩かれたようだ。
「なーに言ってんだ!最初に言っただろ?『私が引っ張ってやる』って。まだ謎解きは終わってないんだ。明日もがんばんぞ!」
 アキは少しうつむきながら早口で応えた。そして、せーの!と、最後の1段を一気に飛び降りた。
 ふわっと柔らかな風が隣を抜ける。スタッと軽やかに着地したアキの背中を、コウヘイは目で追う。
 そして、アキに倣うようにコウヘイも一気に飛び下りた。
「おー、ナイスジャンプ!」
 アキが茶化してくる。コウヘイは、はにかみながら無言で拳を前に上げた。それを見たアキは口角を上げて拳を合わせる。
「コウヘイ、また明日な。9時に神社で!」
「分かった。帰り道に気をつけて!寝坊するなよ、アキ」
「ふ。誰が寝坊なんてするかよ。お前こそ気を付けろよ!」
 アキはそう言うと手を大きく振ってから、走り出した。コウヘイはその背中が見えなくなるまで見送る。完全に見えなくなると、コウヘイは踵を返して自身も帰路へと着いた。
△▲△▲
 カーテンの隙間から差し込む光は、コウヘイの顔を照らす。その明かりはコウヘイの意識を呼び起こすのには十分すぎた。
 んー。
 コウヘイは大きく伸びをする。よく寝たからか頭はスッキリとしていた。
「今日こそ、全部の謎を解いてやる」
 誰に聞かせるでもない。言うなれば自分自身への宣誓だった。
 コウヘイは手早く支度を済ませて、家を出た。まだまだ急ぐ時間ではない。むしろ早すぎるくらいだった。
(23、24、25、……26!)
 神社に向かう石段を数えながら、コウヘイは1番上まで登りきる。そこには昨日くぐった鳥居が変わらずにそびえ立っていた。
 コウヘイは近くにあった時計を見る。待ち合わせの時間まで、まだ30分以上あった。
(まだ早かったな)
 何気なく空を見上げると、そこには白い月があった。ボーッと月を眺めていると、コツン。コツン。と足音がした。
 近づいてくる足音に、コウヘイの心拍が上がる。足音の主は最後の段を上るとコウヘイに気付き、手を上げる。
「おはよう!コウヘイ、早いじゃん!まだ時間前だよな、何時からここにいるんだよ!」
「……30分前くらい?」
はー?早すぎだろー!
と、アキは返した後に、イタズラっぽい笑顔でコウヘイに尋ねてきた。
「そんなに私に会いたかったのか?」
 コウヘイの心臓が大きく動いた。
「……そう、かも。昨日、楽しかったから」
 アキの目が大きくなる。プイッと反対側を向き、
「そうかー、じゃあ仕方ないな!よし、早く謎解きをクリアしちまおうぜ!」
と、早口でしゃべって歩きだした。慌てて追いかけるコウヘイ。狛犬の間を通り、神社の境内に踏み込む。
「昨日は何も見つけられなかったけど、こうやって見ても何も変わったところはないな」
コウヘイは残念そうに話す。アキも、んー、何もないな。と返す。
「どうしようか。もう一度図書館でメモした暗号を見直してみる?」
 コウヘイの呼び掛けにアキが賛同する。コウヘイとアキは境内にあったベンチに腰掛けて、メモを広げる。
 2人は向かい合わせになりながら、メモを覗き込んだ。
「そう言えばさ、この1つ目の暗号の挟まっていたページって、今、思えば犬の写真が写っていたよね。あれもヒントだったのかも?」
 コウヘイが記憶を手繰り寄せながら、1冊目の本を思い出す。
「そうだっけ?もし、そうなら他の本も挟まっていたページにヒントがあったのかも。私、ちょっと覚えてないなー」
 アキは右手で頭を押さえながら、天を仰ぐ。
「4冊目のタイトルが『月の科学』だから、単純に考えれば……月、だったのかもしれないよね」
あー、確かにな。と、アキがうなづく。
「でも、それだと昨日の夜も月は出てたから、何か違うのかもしれない」
「じゃあ、図書館に戻ってみるか?もう一度、本を見てみれば解決するんじゃないか」
 回り道だけど、仕方ないね。と、コウヘイは立ち上がる。コウヘイとアキはもう一度、図書館に行ってみることにした。
 図書館に着くと、昨日と同じく誰もいない。シンとした静寂は、まるで時間が止まったようであった。
 コウヘイとアキは4冊目の本を探す。しかし、本は見つからなかった。
「おかしい。昨日確かにここに戻したのに!失くなってる!」
 アキが声を荒げた。大きな声が図書館の中で反響するが、しばらくすると元の静寂が帰ってくる。
「近くを探したけど、やっぱりないね。誰かが来て持っていった?」
 2冊目と3冊目は元の本棚に収まっていた。4冊目だけが見つからない。
「4冊目のヒントが重要だったのかも。誰かが、私たちがクリアするのを邪魔してるんだ!」
 アキは怒ったような表情を浮かべている。
「俺、心当たりがあるかも」
 コウヘイがポツリとつぶやいた。
 え、本当か?
と、アキがコウヘイの肩をつかんで尋ねる。
「ちょっと小学校に戻ってみてもいい?」
「小学校に?」
 アキはどうしてそこに?という表情を浮かべる。ダメ元で行ってみよう?とコウヘイが言うので、2人は小学校へと向かうことにした。