@28話 噂
ー/ー
1月17日木曜日。
火曜日の名推理を披露して、恭吾の機嫌は今日の天気のように晴れやかだ。
先週金曜日から風が強まり今週は雨が降ったりもして、天気が定まらない日が続いていた。気温が低ければ雪になったかも知れなかったが、幸い雪にはならなかった。
所々水たまりもあるが、それをスイスイ避けながら恭吾と自転車は快調に飛ばしていく。
今日もいい日になりそうだ。
恭吾にだって親友と呼べる人間はいる。名を時巻という。
バドミントン部の部長で的山高校きってのスポーツマンだ。
細マッチョ型の色黒高身長のしょうゆ顔。運動音痴の恭吾と成績は中の下ほどの時巻が親友というのも不思議である。
小学校からの付き合いで、徐々に理屈っぽくなってきた恭吾と今でも仲良くいられるのは時巻のあっけらかんとした性格によるものが大きい。
そんな時巻は女子から人気はあるが、恭吾の情報力をもってしても彼女どころか、浮ついた噂も耳にしない。
しかし一緒に居ると当然比較対象となる事もあって、恭吾は避けないけれども近寄りもしない。
朝一番でその時巻が話しかけてくる。
「恭吾たち二人は付き合ってるの?」
「二人? 俺? と誰が?」
「華咲恋実さん」
その名前に、机に置こうとした自身の鞄をコントのようにひっくり返し、中身を散らかす。
恭吾は激しく驚いていた。そして周囲を警戒しながら小声で時巻へと言葉を返す。
「来栖優香ちゃんではなく?」
「むしろ自信をもってそれを口にできる恭吾がすごいと思うよ」
時巻は人懐っこい笑顔を向けてくる。
思わず恭吾は後退りしながら、時巻の笑顔に照らされないよう、両の腕で顔を隠す。
恐らくそれを浴びると、たちまち溶けてしまうはずだ。恭吾はそんな女たちを何人も見てきた。
恭吾は『優香ちゃんのことを好き』というのを、他の人間に知られたくないらしい。優香ちゃんが恭吾のことを好き、もしくは両想いなら公言も大歓迎、そのスタンスである。
時巻からすれば、わざわざ小声で話す必要もないと思う。
なぜなら優香は的山高校のマドンナ的存在で、恐らく男子で好きではない人間はいないはずだというのが一つ、そして恭吾が優香を好きなのは誰の目から見てもバレバレであって、もはや知らない人はいないと思われるからだ。
「で? どうなの? 噂になってるけど?」
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所々水たまりもあるが、それをスイスイ避けながら恭吾と自転車は快調に飛ばしていく。
今日もいい日になりそうだ。
恭吾にだって親友と呼べる人間はいる。名を|時巻《ときまき》という。
バドミントン部の部長で的山高校きってのスポーツマンだ。
細マッチョ型の色黒高身長のしょうゆ顔。運動音痴の恭吾と成績は中の下ほどの時巻が親友というのも不思議である。
小学校からの付き合いで、徐々に理屈っぽくなってきた恭吾と今でも仲良くいられるのは時巻のあっけらかんとした性格によるものが大きい。
そんな時巻は女子から人気はあるが、恭吾の情報力をもってしても彼女どころか、浮ついた噂も耳にしない。
しかし一緒に居ると当然比較対象となる事もあって、恭吾は避けないけれども近寄りもしない。
朝一番でその時巻が話しかけてくる。
「恭吾たち二人は付き合ってるの?」
「二人? 俺? と誰が?」
「華咲恋実さん」
その名前に、机に置こうとした自身の鞄をコントのようにひっくり返し、中身を散らかす。
恭吾は激しく驚いていた。そして周囲を警戒しながら小声で時巻へと言葉を返す。
「来栖優香ちゃんではなく?」
「むしろ自信をもってそれを口にできる恭吾がすごいと思うよ」
時巻は人懐っこい笑顔を向けてくる。
思わず恭吾は後退りしながら、時巻の笑顔に照らされないよう、両の腕で顔を隠す。
恐らくそれを浴びると、たちまち溶けてしまうはずだ。恭吾はそんな女たちを何人も見てきた。
恭吾は『優香ちゃんのことを好き』というのを、他の人間に知られたくないらしい。優香ちゃんが恭吾のことを好き、もしくは両想いなら公言も大歓迎、そのスタンスである。
時巻からすれば、わざわざ小声で話す必要もないと思う。
なぜなら優香は的山高校のマドンナ的存在で、恐らく男子で好きではない人間はいないはずだというのが一つ、そして恭吾が優香を好きなのは誰の目から見てもバレバレであって、もはや知らない人はいないと思われるからだ。
「で? どうなの? 噂になってるけど?」