@ 20話
ー/ー
15歳、春。高等部に入学した。美都は自分が篠崎を連れて来たせいで、舞羽が大ケガを負ったと、しばらくの間自分を責めた。
「美都が悪い事なんて一つもない。あたしが目を離したからいけなかったの」
「でも……」
「美都とはもう、この話しませんよ~。これ以上そんな辛気臭い顔したら絶交だからね」
舞羽は気丈に振舞った。舞羽の頭に大きな傷跡が残されていることは、舞香を含む少数の人間しか知らせていない。ウィッグをつけて分かられないようにしている。
舞羽の心にも傷が残されているであろうことは、誰もが察しているが、その大きさは本人以外知ることはできない……。
江南馬術部の高等部には新しい仲間が加わっていた。高校から江南に入学した男、天沢遊馬その人である。
かつて皇居敷地内にあった『インペリアル乗馬倶楽部』。皇太子らも参加するほどの権威を持ち、日米の交歓を目的とした馬術大会が開催され、そのトロフィーのプレゼンターが当時の日本統治元帥婦人が務めるなど、その存在価値を天下に示した、かつての名門倶楽部である。
その『インペリアル乗馬倶楽部』において、名声を二分した乗馬の名家が月皇家、天沢家である。
当時、二つの家の仲は良好であった。互いをライバルと認め合い、共に心身を磨き合う存在であった。しかし時が経ち、馬が生活から離れるにつれて、馬術は人々の関心も技術も担い手も、そして両家の関係も廃れていったのであった。
「月皇舞羽さん? ですよね」
不意に遊馬から声を掛けられた舞羽は、驚いて警戒を隠せない。柔らかく静かな物言いにも拘わらず、舞羽は以前より臆病になっていた。口元に手をやったまま、しばらく声も出せないでいる。
「……」
「あ、ゴメン。驚かせちゃったかな?! そんなにびっくりするとは思わなくって……。僕は天沢遊馬、よろしく」
「あ、ごめんなさい……月皇、舞羽です」
「良かった。そうだと思ったんだけど……僕のこと知らないかな?」
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15歳、春。高等部に入学した。美都は自分が篠崎を連れて来たせいで、舞羽が大ケガを負ったと、しばらくの間自分を責めた。
「美都が悪い事なんて一つもない。あたしが目を離したからいけなかったの」
「でも……」
「美都とはもう、この話しませんよ~。これ以上そんな辛気臭い顔したら絶交だからね」
舞羽は気丈に振舞った。舞羽の頭に大きな傷跡が残されていることは、舞香を含む少数の人間しか知らせていない。ウィッグをつけて分かられないようにしている。
舞羽の心にも傷が残されているであろうことは、誰もが察しているが、その大きさは本人以外知ることはできない……。
江南馬術部の高等部には新しい仲間が加わっていた。高校から江南に入学した男、天沢遊馬その人である。
かつて皇居敷地内にあった『インペリアル乗馬倶楽部』。皇太子らも参加するほどの権威を持ち、日米の交歓を目的とした馬術大会が開催され、そのトロフィーのプレゼンターが当時の日本統治元帥婦人が務めるなど、その存在価値を天下に示した、かつての名門倶楽部である。
その『インペリアル乗馬倶楽部』において、名声を二分した乗馬の名家が月皇家、天沢家である。
当時、二つの家の仲は良好であった。互いをライバルと認め合い、共に心身を磨き合う存在であった。しかし時が経ち、馬が生活から離れるにつれて、馬術は人々の関心も技術も担い手も、そして両家の関係も廃れていったのであった。
「月皇舞羽さん? ですよね」
不意に遊馬から声を掛けられた舞羽は、驚いて警戒を隠せない。柔らかく静かな物言いにも拘わらず、舞羽は以前より臆病になっていた。口元に手をやったまま、しばらく声も出せないでいる。
「……」
「あ、ゴメン。驚かせちゃったかな?! そんなにびっくりするとは思わなくって……。|僕《●》は天沢遊馬、よろしく」
「あ、ごめんなさい……月皇、舞羽です」
「良かった。そうだと思ったんだけど……僕のこと知らないかな?」