「これでもし私が隼人先輩を狙うとなると……」
美都は肩に掛かった髪を払うと、宙に描かれた頭の中の図を見つめる。
「私と楓乃先輩が隼人先輩を狙ってて、隼人先輩が舞羽……舞羽の独り勝ちか……」
「別にあたしは……」
「そうそう、舞羽。あなたは『あたしより馬術の下手な人とはお付き合いなんて御免だわ』とか言ってくれればいいの。あはは」
「もう、そんな事ばっかり言ってないで、美都はもっと腕を磨きなさい!」
「はいはい、舞羽は真面目過ぎっ!」
「でも……今年は一年生が入って来なかったから、来年は入ってきて欲しいな」
「そうだねぇ……カッコいい歳下も悪くないわね」
「また美都はそっちにいくぅ~」
舞香が呟くと、すかさず美都が花を咲かせる。その都度、舞羽は呆れて見せるが、思わず許してしまう美都の愛嬌に二人は骨抜きにされていた。
美都は二人の真ん中に居た。
***
そんな美都が、一人の人間を馬術部に連れてきた。三年生に進級して間もない頃だ。少しばかり強引に勧誘してきたらしい。
何故ならこの年は一年生が一人しか入部しなかったからだ。
馬術部はその特性から、大学の馬術部が存在する限り廃部にはならない。逆を言えば、厩舎の管理ができなくなった時点で廃部があり得る。
つまりは差し当たって、中等部の一年生が入部しない程度で、即座に廃部の危機が迫ってくるわけではない。
しかし、その代が大学に上がった時点での一人当たりの仕事量、負担が大きなものになってくる。
美都は少しばかり将来を案じただけのはずであった。