『仁霊様がかなえてくれる夢! あなたが会いたい人はいませんか? 心から望んでいるものは何でしょうか? あなたがこの世に生まれてきた意味について、考えたことはありますか?』
うさんくさい内容だが、その文と可愛い天使のようなイラストを見ていると、俺の中にふつふつと生まれてくる願いがあった。
――おおきいじいちゃんに会いたい。
曽祖父はもうだいぶ前に亡くなっているので、もちろん会うことはできない。だが、ときどき思うのだ。もしも曽祖父が生きていたら、自分と同じ水切りが得意な曾孫を見て、喜んでくれたのではないかと。
反対に、祖父は本ばかり読んでいるインドアな青年で、曽祖父とはあまり仲がよくなかったらしい。
「親父には褒められたこともないし、いつも兄貴のことばかりだった」
と、祖父が父にぼやいているのを幼い頃見た記憶がある。大伯父はガタイのいい人で、柔道などをやっていた。田舎の長男だったこともあって、弟である祖父とは兄弟で差をつけられていたようだ。
「おおきいじいちゃんは、好き嫌いの激しい人でなぁ。気に入ったもんのことは、でかい声でよう褒めてくれるんよ」
と、父が言っていた。
俺のことは、どうだったのだろう。
曾孫の俺が生まれた頃にはもう高齢で、体調を崩していて、話した記憶もまったくないが。もしも俺が息子や孫だったら、曽祖父は大きな声で褒めてくれただろうか。
「比奈橋さん、どうされました? 仁霊様にお願いしたいことが、浮かんできましたか」
真戸部さんが俺の顔を覗き込んできた。視界が潤んできていたのに、気づかれてしまったかもしれない。
「あの、テスト的な感じで、頼んでみても、いいでしょうか」
俺はまだ半信半疑のまま、尋ねてみた。
「ダメですよ、テストなんかしちゃ。仁霊様に失礼です。お願いするなら、命をあずけるような真剣な気持ちじゃないと」
真戸部さんは、鞄からパワーストーンを繋いだブレスレットを出して、机の上に置いた。
「ちなみにお願いしたいのって、どんなことですか?」
この人は、まじめにこの黒魔術というのを行おうとしている。それはそうだろう。事業を立ち上げるとしたら、命を懸けるような覚悟と資金が必要なのだから。
俺は観念して、正直に伝えた。
「亡くなった曽祖父に会いたいんです。俺が幼い頃に死んだので、記憶はほとんどないのですが」
「なぜですか。どうしてひいおじいさんに会いたいのですか?」
首を傾ける真戸部さんの背後に、いつのまにかお姉さんが無言で立っていて、アロマキャンドルを灯していた。くつろぐ香りというより、ヨモギか何かを煮詰めているような、薬草に似た匂いがする。