今度は十分な準備のないままでの山登りだった。
前来た時の足跡は、もうすっかり雪の中に消えていた。
折れた枝や獣の足あとを追いかけるように、身の丈ほど積もった雪の中を歩いていく。
草は容赦なく、雪駄や服をひっかけた。
急に焼けつくような日差しがさしたかと思えば、10分の後にみぞれが降りだしたりもした。
じぃさまの死に姿を模した幻が道行く先に現れたり、ゴスたちの追いかける声の幻が2人を追ったりした。
ストゥルテはアルツが心配だった。
自分はある程度なら毛皮の服が守ってくれる。
しかしアルツは今、毛の薄いゴスに化けているからとても寒いかもしれない。
「アルツ、近くへ。寒いだろうから」
アルツは黙って、震える体をストゥルテに寄せた。
袖をつかんで、ひたすらに何かを祈念している。
ストゥルテは何も言わなかった。
ただ、こんなにも思われているのだから、どうか応えてやってほしいと思った。
道中、獣には合わなかった。
氷の壁は大きくう回した。
何度も日の場所と星の場所を見ながら歩いた。
やぶの深いところへ入らなければいけない瞬間もあったが、アルツの祈念が通じたのか、蛇は出なかったし、毒のある枝にも早くに気が付けた。
崖を登るのも、足場がしっかり固まっていたから、楽とは言わずとも無理ではなかった。