表示設定
表示設定
目次 目次




山登り

ー/ー



 ストゥルテが歩く御山は険しかった。
 まず、雪が人の丈ほどに積もっているために、一歩歩くごとに足が雪にずぶずぶ沈んだ。
 わかんじきをこしらえて来てもそんな有様だった。

 雪の中には笹やススキが生い茂っていて、何度もストゥルテの靴やわかんじきをむしりとろうとした。

 けれど賢いストゥルテがじいさまの言葉通り、わかんじきも靴もしっかり藁縄で固定したうえに雪避けをつけていたから、草たちはストゥルテの足をくすぐるしかできなかった。

 あるときは大雨が降った。
 大きな木もなくなって、ヤブばかりが広がる場所で雨に打たれても、ストゥルテは雪避けと水除の帽子のおかげでなんともなかった。

 ストゥルテは凍り付いた崖も登った。
 かぎづめのような道具と、ツメのついた靴を使って、急ぎすぎないように、体力が尽きないように、とても用心して登っていった。
 そうこうするうちに、ストゥルテは洞窟の前に来た。

 洞窟は、入口にかがり火がたかれていた。
 色々な絵が穴を囲むように並んでいた。この絵たちは御山の歴史や命の巡りを伝えているものだとストゥルテには分かった。

 たくさんのネズミやウサギが不安そうに嘆いて、ちょろちょろと動き回っている。

 朱に塗られた門扉を見上げ、ストゥルテは鈴か何かがないかを探した。
 黒に近い灰色の地面をよく見ると、門の前にそこだけすり減って窪んでいる地面が見つかった。

 ストゥルテは恐れおののきながらも前へ進み、そこの地面に座って深く深く額づいた。

「かけまくもかしこき御山の女主よ。わたくしはストゥルテと申します。貴方様の巫女からの試練を潜り抜けてここまで来ました。貴方様からの試練を授かりたく存じます」

 ストゥルテの明朗な声は洞窟にわんわんと反響して広がった。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 山の女


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 ストゥルテが歩く御山は険しかった。
 まず、雪が人の丈ほどに積もっているために、一歩歩くごとに足が雪にずぶずぶ沈んだ。
 わかんじきをこしらえて来てもそんな有様だった。
 雪の中には笹やススキが生い茂っていて、何度もストゥルテの靴やわかんじきをむしりとろうとした。
 けれど賢いストゥルテがじいさまの言葉通り、わかんじきも靴もしっかり藁縄で固定したうえに雪避けをつけていたから、草たちはストゥルテの足をくすぐるしかできなかった。
 あるときは大雨が降った。
 大きな木もなくなって、ヤブばかりが広がる場所で雨に打たれても、ストゥルテは雪避けと水除の帽子のおかげでなんともなかった。
 ストゥルテは凍り付いた崖も登った。
 かぎづめのような道具と、ツメのついた靴を使って、急ぎすぎないように、体力が尽きないように、とても用心して登っていった。
 そうこうするうちに、ストゥルテは洞窟の前に来た。
 洞窟は、入口にかがり火がたかれていた。
 色々な絵が穴を囲むように並んでいた。この絵たちは御山の歴史や命の巡りを伝えているものだとストゥルテには分かった。
 たくさんのネズミやウサギが不安そうに嘆いて、ちょろちょろと動き回っている。
 朱に塗られた門扉を見上げ、ストゥルテは鈴か何かがないかを探した。
 黒に近い灰色の地面をよく見ると、門の前にそこだけすり減って窪んでいる地面が見つかった。
 ストゥルテは恐れおののきながらも前へ進み、そこの地面に座って深く深く額づいた。
「かけまくもかしこき御山の女主よ。わたくしはストゥルテと申します。貴方様の巫女からの試練を潜り抜けてここまで来ました。貴方様からの試練を授かりたく存じます」
 ストゥルテの明朗な声は洞窟にわんわんと反響して広がった。